『ガラスの仮面』しかり、『王家の紋章』しかり、数十年規模で長く続いている少女マンガは、熱心なファンがいる一方で、きっかけがないとなかなか入りづらいかもしれません。本作もそんな著名タイトルの一つですが、こちらは青年マンガをよく読む人や男性にも、ぜひ手に取ってみてほしい一作。物語のメイン要素は、東西冷戦を背景としたスパイアクション。主人公のひとりは硬派で堅物でワーカホリックなドイツの情報将校。彼の行動にもうひとりの主人公ーー美しいものを愛する大泥棒「エロイカ」が絡むことで、軽妙なコメディとしても成立しています。個性的なキャラクター、美麗で緻密な描き込み、細部まで計算されたストーリー、洒脱な台詞回し…それらが見事に釣り合った、非常に贅沢なマンガです。時代の変遷にしたがって作品の雰囲気も少しずつ変わっていくため、イントロダクション部分に面喰らう方もいるかもしれませんが(笑)、まずは4〜5巻(文庫版では3〜4巻)収録の「アラスカ最前線」編まで、一気に読むことをおすすめします!
空也上人がいた
「原作のある漫画」というのは、まず手に取りません。その原作を知っていてもいなくても「おもしろくない」ことが多かったから。この作品も同様にスルーしていたのですが、勧められて読んでみて、結果、私も誰かに勧めてみたくなりました。「おもしろい!」と声高に語るタイプの作品ではないけれど、読んでどう思ったか、話してみたい。主な登場人物は三人のみで、その交流の記録です。特別養護老人ホームを辞めた青年、ベテラン・ケアマネ―ジャーで独身の中年女性、介護を必要とする孤独な老人。「重そう、地味そう…」と思われた方、その予感は当たっているかも。でも読み終えて残るものは、きっと前向きな強さです。気になって原作小説も読んでみると、驚くほど忠実に丁寧に漫画化されていることに気付き、作者の新井英樹さんが原作にどれだけ思い入れがあり、誠意をもって取り組まれたかがわかります。大きく違うのはラストと劇団の設定くらいかな。うがった見方になるかもしれないけれど、この漫画のもうひとつの見どころは、まさにその「思い」。冒頭にイントロダクション、巻末には原作者・山田太一さんとの対談も収められていますが、この「思い」含めての作品であると断言したい。『ザ・ワールド・イズ・マイン』など過激で暴力的な作品を描くイメージの作者が、それを覆すように、前向きであること、人と向き合うこと…ひねくれ者にとっては真顔で言うのが恥ずかしいことに「でも」と挑む。変わろうとする。その姿勢からも、勝手に勇気をもらうのでありました。
町でうわさの天狗の子
もしこれがラノベだったら『女子高生は天狗の子』というタイトルになってたはず。舞台は現代の田舎町。天狗と人間のハーフだけど、「普通でありたい」女の子が主人公。学校一のイケメンが好きで、口うるさい天狗修行中の幼馴染がいて、癖っ毛がコンプレックスで、ちょっとだけ力持ちな女の子。だけどほんとうは天狗界のなかでも随一の潜在能力を持つとされる存在で……。こう書いてみても突拍子もない設定だが、読んでみるとなぜかホッとする。ゆるい絵柄や作風はもちろん、欲しくもない天狗の力に振り回されながらも、世界に馴染もうと奮闘する主人公の姿のおかげかもしれない。「普通」であることがどれだけ幸せなことか、全話を通じてとことん描いている作品。
バベルハイムの商人
人間に「制約を守って用いれば願いを叶える手助けになるもの」を売る悪魔・ユージンを狂言回しとした、『笑ゥせぇるすまん』(藤子不二雄A)などの系譜に連なるであろう「謎の商人」マンガ。日常の中に忍び込む不思議、人外キャラの造形や心理描写の強烈なビジュアル、ちょっとブラックな笑い…と個人的に好きな要素が満載だった本作は、先日発売された5巻をもって完結。もう少し読みたかった気持ちもありつつ、このあっさり具合が良いのかもしれないとも思います。ルールに翻弄されたり、時にはルールを上手く使いこなす人間たちのドラマの妙と、ゴシックでユーモラスでファンタジックな世界観を同時に味わえる作品。
漫画家ごはん日誌
漫画家のごはんというと、カップラーメンとか宅配ピザなんかを思い浮かべてしまうけれど、実際のところどうなの? という疑問に答えた作品。雑誌「FEEL YOUNG」上で、50人の漫画家が自らのごはん事情について語ったものがまとめられています。1ページという短い中にも、各作家の個性があふれ出ており大満足。コース料理(=連載作品)がうまい人のアラカルト(=単発作品)がまずいはずがありません。食材を写実的に描く人、粗いタッチでもおいしそうな料理が描ける人、ほろりとするエピソードを持ってくる人…などがいて様々な表現で読者を楽しませてくれます。巻末にはあの「テニスの王子様」の許斐剛インタビューが載っており、お好きな方はそちらも要チェック。
有害都市
6月に実写映画が公開される『予告犯』の原作者が、「表現の自由」にフィクションで挑んだ作品。この物語の舞台は、2020年のオリンピックを目前に控え、表現の自由が急激に規制されていく近未来の日本。その中で主人公である漫画家や編集者が表現規制に板挟みにあいながら抗うことで、表現の本質、規制の本質を読者に問う意欲作です。
ラーメン食いてぇ!
結構なラーメン好きの私が、表紙とタイトルだけで釣られて買ってしまった本作。孤独のグルメみたいなものを想像してたらなんとラーメンを取り巻く人間ドラマ。してやられた。上下巻なのでさくっと読めるところも魅力。それにしてもラーメン食べたい。
冷食捜査官
食料統制により、市場に流通するのは合成食品のみとなった未来。それでも危険を冒し、大金を払って、裏の世界で取り引きされる本物の肉や魚や野菜を使った「自然食品」ーー前時代から保存されてきた冷凍食品(冷食)を食べることに執着する人々と、彼らを取り締まる「冷食捜査官」を描いたハードボイルドSF…でありながら、脱力するようなギャグもさりげなく散りばめられていて、この独特な雰囲気はクセになる!シリーズ1作目が描かれたのは91年、1巻が発売されたのは08年。2巻が出る日を心待ちにしております…!
鵼の絵師
今年になってから1巻が出た作品の中で、個人的暫定ベストがこちらの作品。生者に死を、死者には生をもたらすとまことしやかに囁かれる「鵼の絵師」・菅沼英二郎をめぐる、短編連作形式の幻想的な人間ドラマ。マンネリにならないよう趣向を凝らされたストーリー、丁寧に描かれる昭和初期という時代の空気感、味のある台詞回しやモノローグに加えて、陰のある色気と茶目っ気を兼ね備えた男性キャラクター陣の魅力もたまりません!派手ではないけれど、何度も読み返したくなるマンガです。
トロイメライ
一台の伝説のピアノ「ヴァルファールト」をめぐる、国も時間も飛び越えた壮大な物語。巻末の村上知彦さんによる解説に「ほらふき爺さん、かく語りき」とありますが、島田虎之介さんの作品のスケールの大きさ、それを破綻なく語りきるディティールのリアリティには脱帽です。「この風呂敷、だいぶ広がっちゃってますけど?」とドキドキしていても、最後には涼しい顔で、かつ力強く、予想もつかなかった美しい形にキュッと畳みきってくれるのが憎たらしい。抜群の構成と画面割りは、上質な映画のよう!輪郭線のくっきりした独特のタッチが苦手かも…という人も、だんだんと白と黒のコントラストや、イラストのようなキャラクター造型が癖になってくること間違いなしです。初めて読んだときにはなんとなく読み飛ばしていた部分が、二度目には意味をもって捉えられたり…何度も読み返しては、酔いしれてほしい作品!
みんなのトニオちゃん
最近「シンギュラリティ」という言葉が流行っていて、私もあまり詳細を知らないまま会話の端々に忍ばせています。もし脳の完全コピーができたら、「この人は昨日死んだ」ということに周りの人が気づかず、人間にとっての死は極私的なイベントになってしまうことでしょう… というので思い出したのが本書に収録の「アルバイト(通称:五億年ボタン)」。以前からネットで散々、話題になったり画像アップされたりしているので知ってる人も多いと思うのですが、わざわざ紙の本で買いました。味があるとさえ言えない、恐ろしく無機質なCGと乾いたギャグに戦慄します。「小学生のころ考えた」という人も多いこの手のネタですが、小学28年生の今でも考えれば考えるほど恐ろしく、夜も良く眠れます。来たるディストピアに備え、読めば憂いなし!
地獄のガールフレンド1
恋愛、結婚、出産、子育て、仕事、介護…アラサー女性は人生における大きな選択肢や考えることが本当に多い年代。本作はバツイチシングルマザー、セカンドバージンの真面目OL、超絶モテて男関係がゆるいデザイナーの三人のアラサーが一つの家をシェアする話だが、アラサーと一口に言っても生活が全然違って、そんな三人が「家」だけは同じという構造が面白い。作者はアラサー女性の心象を描くのがとても上手なので、気になっている人は本作から読んでみてほしい。
シンプルノットローファー
モンナンカール女子高等学校という架空の学校を舞台にした短編集。各話の主役は一人か二人で、その他の生徒が脇に回る構成となっている。どの話にも大きなテーマや濃厚なドラマは見られないが、さばさばした雰囲気が心地よく、小さなエピソードを積み重ねてうまくまとめている所に作者の力を感じる。巻末に主なクラスメート一覧が載っているので、ストーリーに戻ってチェックするのも楽しい。自分はこのキャラクターに似ている、こんな人昔いたなあ、この子と友達になりたい……などと楽しめること請け合い。
殺し屋1
人が集まれば「SかMか」という会話、くだらなくて帰りたくなる! という果報者に薦めたいマンガ。残酷なシーンが多く、好きだというのが憚られる作品だが、怖いもの見たさでページをめくっていくと、単純には分類できない人間の情念の深淵に迫れる…気がする。最終巻の垣原組長が裸になるシーン。そのページだけ見るとギャグにしか見えない筈の立ち姿が、それまでの流れで妙にかっこよく見えた時、このマンガが名作と悟った。
茄子
茄子を狂言回しに、今も世界のどこかで流れているかも知れない風景を切り取ってきた短篇集。省略法が効きすぎた、スナップショットの連続のようなコマ割りと、話し言葉に近い順番のセリフ回しが最初は慣れませんでしたが、読めば読むほど心が落ち着いていくテンポがあります。何か起こるのか?…と思ったら起きない。これは伏線か?…回収されない。ただ語られるだけの物語がここにあるわけです。アニメ版「茄子 アンダルシアの夏」はこのうちの1編を元にした映像化作品ですが、またマンガとは違ったテイストで名作です。
風流江戸雀
北斎の娘を描いた代表作『百日紅』のアニメ映画公開も待ち遠しい杉浦日向子さんの、これは私が最初に読んだ作品。江戸っ子の穏やかでやかましい日常を、川柳に絡めてゆったりと描いています。この人の描く江戸には、他の作家の描く時代物が必ずまとっている「気負い」のようなものがなく、ただそこにあったもの・いた人の姿をそのまま写し取ったとしか思えない、あたたかい生々しさに溢れていて、本作はそれが顕著に感じられる、軽く読めるのにトリップ感のある一作。ハマれば全作品読みたくなるに違いない日向子さんの世界、映画をきっかけにもっと拡がるといいなあ。
ショート・アラベスク
3年前に初めて実家を出たとき、新居に持っていくマンガは厳選に厳選を重ねました。手塚作品の中から、その栄えある選抜メンバーに選ばれたのがこちらの1冊。収録作品のメインは文芸誌で発表された1話16ページの短編作品群なのですが、どれもピリッとスパイスの効いたショート・ショートになっていて、いつ読んでも、何度読んでも絶品です。いわゆる「黒手塚」的な作品とも少し違う、お酒のつまみのような手塚ワールドも、是非多くの人に味わってほしい!
竜宮家族
今クールでドラマ放映の『アイムホーム』。本作がマンガ原作と知っている人は多くないと思う。原作は、メディア芸術祭マンガ部門で大賞を受賞した作品ではあるが、連載から15年以上の時を経てのドラマ化だからだ。なぜ今また注目されているか、それは最新作である本作と読み比べると腑に落ちる。「家族とは?」をテーマに、作者は何をもって「家族」なのか、「家」の意味について疑問を投げかける。それは普遍的なテーマで、作者の伝えたいことの根底は大きく変わっていない。ただ、バブル崩壊前に連載された『アイムホーム』と、震災後に連載された本作、その投げかけの変化よりも受け取り手である読者の方が変化しているのではと思う。この2作品、合わせて読むのにベストなタイミングに違いない。
長い道
「この人とは仲良くなれるかも…!」そんな予感のした人が、すっと貸してくれたマンガ。不思議であたたかな読後感に、私もすっかり魅了されました。内容を一言でいえば「ある日突然夫婦になってしまったチグハグな男女の、ささやかで愛おしい日常」というところでしょうか…ただ、この漫画に流れる独特な空気は言葉で表現するのは難しいです。甲斐性なしで女好きの荘介どのと、天然に見えて心に抱えているものがある道。酔っ払った父親同士のノリで夫婦になってしまった、愛から始まったわけではない二人の生活が、一話3〜4ページの短編で綴られていきます。一切セリフなしで、日常がファンタジーのように広がっていく話もあり、自由で豊かな表現にくらくら。決して甘くなりすぎず、感傷に流れないストーリーも素晴らしい!
先生の白い嘘(3)
自分の生まれ持ってしまった性を否応なく他人から実感させられる彼女たち。生きるのが辛そうな反面、その辛さを離そうとしないようにも見える姿はまさに彼女たちの迷いや混乱が表現されているよう。1、2巻よりもぐっと現実味を帯び、言ってることとやってることのねじれをどこかしこで感じながら最後まで勢いよく読まされてしまう本巻。彼女たちが幸せになる方法はあるのか、読み終わってしばらく考えてしまった。
黒─kuro─ 2
可愛らしい、忌憚なき言い方をすると萌え漫画風な主人公の少女と飼い猫のクロ。二人のほのぼのした日常を描く漫画ーーではないことは一巻の数ページで、少しずつ何かが違うことに気づく。謎が多すぎるというより、なにか「違和感」がたくさん残ったまま一巻が終了して、本巻に突入する。細かいところに「違和感」を散りばめる作者のこだわりも秀逸。もちろんカバーにも。手にとってカバー裏を見てみてほしい。可愛らしい絵のお陰でホラーやグロが苦手な私でも読めたので、その点で躊躇している人は読んでみてもいいかもしれない。
あなたのことはそれほど
少女漫画界の大家であるいくえみ綾が描く、大人向け底なしW不倫の話、と書けば安易だが、そこはいくえみワールド。かなりリアルで丁寧な描写に誰もが引き込まれる作りとなっている。主人公の美都を中心として、夫、不倫相手、不倫相手の妻、4人それぞれの視点が徐々に絡み合っていく様に目が離せなくなる。未婚者、既婚者、男性、女性関係なく、読んでいて誰もが他人事とは思えなくなるリアリティがある。普段女子高生などを主役にキュンとする少女漫画を描き続け、未だに一線で活躍し続けている作者の多才さには感嘆せざるを得ない。2巻以下続刊で、続きが待たれる。
よいこの星!
女のエロ衝動を、これでもかというほど包み隠すことなく直接的に描いた衝撃作「いぬ」の連載後、女のエゲつなさと打算、ドロドロとした人間関係を、女子小学生を主人公としエロ要素0で描いたこちらの作品。最近、オシャレ系女性コミックで人気(?)の女のドロドロ系テーマを、15年以上も前に「ヤングサンデー」で連載していたというのが驚き。おまけに舞台は小学校。絵柄やタイトルで勝手にギャグ漫画だ、思って侮ると痛い目に合いますよ。絵柄といいストーリーといい、柏木ハルコさんって本当に唯一無二の漫画作家だなあ、と改めて思います。
GBパーク
しゃべって、食べて、GB、すぐ脱線。シニア世代のユーモラスな日常をつづったオノ・ナツメ先生の「GBパーク」。そこにはなんにもないようで、何かある。忙しくしていたら見過ごしてしまいそうなものが、毎話6ページのコマの中にちりばめられています。時代劇とも西洋ものとも違う愛らしいキャラクターを見ていると、年を取るのも楽しそう、と思えてくるから不思議。理想の未来がここにあるかも。
暁星記
設定と構成がぶっ飛んでます。キャラの風貌や恐竜のような生物な表紙から、パッと見、原始時代の話?と思う方も多いでしょうが、実は時代設定は22世紀末。惑星改造により、1000mを超える木々が地表を覆う金星が舞台というれっきとしたSF漫画。今、手元に本がないため、wikiを見ながらこのレビューを書いていますが、作品未読の方がwikiを見てもおそらくチンプンカンプンでしょう。それくらい設定が込み入って複雑ではあるのですが、張られた伏線は決して破綻せず、キャラも個性的でいきいきと描かれているので、いつの間にか世界観にどっぷりハマれる事受け合い!絵も内容もあっさりした作風が好まれる昨今ですが、こういう胸焼けするくらいの「THE漫画」がもっと増えないかなあ。
Little Nemo
モノと情報にあふれている今、現代人の想像力は100年前の人間よりその範囲を遥かに広げている筈、そんな思い込みを粉砕してくれた作品。少年ニモの夢のなか、軟体動物のように歪むベッド、超巨大なキノコの国、60種類以上の動物が詰め込まれた1ページ…その奇想に実体を与える圧倒的な観察力と、独特な色遣いに吸い込まれてしまう。アマゾンでは発売当初より少し高くなってるけど、まだまだ内容に見合う価格だと思うし、もし書店で定価で見かけたら絶対買った方がいい。あと、マフラーを巻いたフクロウのキャラがかわいい。
青春うるはし!うるし部
漆作家でもある著者による唯一無二のうるしコメディ。冒頭での神々しい合鹿椀の描写に目を奪われたが最後、個性的な登場人物や予測不能なストーリー展開、何よりそのうるし愛に一気読み間違いなし。しかも漆の本格的な知識まで手に入ります。日々の生活を豊かにしたいあなたも、MADE IN JAPANを語るあなたも決して外せないこの強烈な一冊。実家に眠っている漆器を見る目が変わります。
最後のレストラン
フレンチレストラン「ヘブンズ・ドア」には、なぜかいまわの際の世界の偉人たちが次々に来店。彼らの抽象的で難解なオーダーにオーナーシェフ・園場凌とバイトのウエイトレスたちが知恵を振り絞って応えていく、一話完結形式のコメディ作品です。雑談の小ネタになりそうな、歴史上の人物と料理に関するうんちくが満載。他作品のパロディをさりげなく混ぜ込んでくるギャグも私は好きです。主要キャラの名前がダジャレなのもいまどき珍しいかも。
月の子
連載終了から20年以上も経っているこちらの作品ですが、絵柄も内容も、まっっったく色あせません。月、人魚、三つ子、変身、バレエ、NY、ロシアなど設定だけ見ると、THE花とゆめコミックスなのに、根底のテーマはチェルノブイリ原発事故…というなんとも骨太な作品。2011年3月11日からはや4年が経ちますが、原発に関するニュースを見かけるたびにこの作品のラストを思い出すのは私だけでないはず。若干逸れますが、外国が舞台&外国人が主人公の少女漫画って今は少なくなりましたね。昔はいっぱいあったのに。「ファミリー!」や「CIPHER」を読んでアメリカに憧れた小学生時代でした。
ガンロック
あの歴史上の人物が架空の世界にいたら! というifは、妄想好きのマンガ読み方にはたまらないはず。この作品の主役はホームズ&ワトソン。というのもあり短期的な事件を推理するための伏線はもちろんのこと、長期的な伏線もあちこちに張りめぐらされている。まだ第1巻が発売されたばかりだが、伏線がどのように回収されていくのか楽しみな作品である。
まんぷく広島
朝ドラをはじめ民放でも舞台に使われていたり、いま広島が熱い‼︎ ということで、この作品を。牡蠣やお好み焼きなどメジャーなものから、マイナーグルメまで、広島の魅力を『ワカコ酒』の作者が余すところなく描いたグルメエッセイ。シンプルな人物画に対して、丁寧に描かれた料理絵は、見ると(お腹が)唸ります。読めば今すぐ広島に行きたくなる、そんな作品。ワカコがちょこっと登場したり、ワカコ酒ファンにも嬉しい仕上がりになっています。
アドルフに告ぐ
数ある手塚作品の中でも私が一番、というかマンガの中で一番好きな作品がこちら。名作ではあるのですが、ナチスというテーマがテーマなだけに残酷な描写も多数あり、意外と未読の方も多いのではないでしょうか? 世界中で今もなお続く紛争の本質を読み解く上で避けては通れないテーマを、手塚治虫の見事な手腕で描き切っています。追う側と追われる側の立場が逆転するラストも秀逸。手塚治虫自身はこの作品をラブストーリーでもある、と表現していました。どうでもいい余談ではありますが、主人公の峠草平は、私の理想の男性像ですw。
ダンジョン飯
昔のローグライクゲームで「モンスターも食べれるんだ!?」という絶妙な面白さ、自分しか気づいていないと思っていた。そのおかしさが本作でうまいこと昇華されたような気がする。おりしも食マンガブームの中で、グランドクロス的な効果をもたらした作品。
コミック☆星新一
日本国民の多くが通過してきたであろう星新一のショートショートを気鋭のマンガ家たちがコミカライズ。シンプルな文章で綴られた原作だからこそ、各作家の想像力が存分に発揮された、バラエティ豊かな仕上がりに。原作小説も改めて読み返したくなる、良質なオムニバスとなっています。単行本既刊3巻のほか、2巻までの内容からの再録による文庫版も発売中。
こくごの時間
国語の教科書に載っていた物語がベースの短編集。懐かしい話や知らない話が出てきて、誰かと教科書のことやその授業にまつわる思い出を話したくてしょうがなくなってしまう一冊。個人的には出てこないが、かまきりりゅうじの話がしたい。
その娘、武蔵
「千年万年りんごの子」の作者待望の新作は、なんとバレーボールマンガ。「部活をやる意味とは何か?」「頑張った先に見えるものとは?」という問いに真っ正面から切り込む作品です。心理描写も繊細かつ大胆で引きつけられます。そして184cmの女子高生、兼子武蔵がとにかく大っきくてキュート。彼女の真っ直ぐな「なぜ?」は、部活に限らず、何かをする意味について考えさせてくれます。読者はそのトスをどう受け止め、返していくか。読みながら青春できるシリーズになりそうで期待大です。