風流江戸雀

北斎の娘を描いた代表作『百日紅』のアニメ映画公開も待ち遠しい杉浦日向子さんの、これは私が最初に読んだ作品。江戸っ子の穏やかでやかましい日常を、川柳に絡めてゆったりと描いています。この人の描く江戸には、他の作家の描く時代物が必ずまとっている「気負い」のようなものがなく、ただそこにあったもの・いた人の姿をそのまま写し取ったとしか思えない、あたたかい生々しさに溢れていて、本作はそれが顕著に感じられる、軽く読めるのにトリップ感のある一作。ハマれば全作品読みたくなるに違いない日向子さんの世界、映画をきっかけにもっと拡がるといいなあ。

文=鈴木史恵
1986年2月生まれ、千葉県出身。おもちゃメーカー勤務を経て編集・執筆業へ。マンガ好きとしての原点は物心つく以前から触れてきた手塚治虫と藤子・F・不二雄。24年組、80年代ニューウェーブ、ガロ系、それらの系譜にある青年マンガを中心に、面白そうなものは何でも読みます。マンガ以外の趣味は好きなバンドのライブや映画鑑賞など。