『ナチュン』や『ムシユヌン』などで知られる都留泰作先生の最新作は、マンガジャンルとしては珍しい「歴史ファンタジー」。1巻はまだ物語が始まったばかりという展開ですが物語の随所でいわゆる「都留節」は炸裂。都留先生にしか描けない独特の作風だと思います。日本のようで日本ではない世界設定が、今後の展開でどう生かされるのか楽しみです。それにしても1巻でこんなことになっちゃったけど、夫は今後どうなってしまうのだろう……。
木曜日のフルット
「その場しのぎで今日を生きる」猫みたいな人間の鯨井さんと、「ノラネコのプライド」を持つ居候猫フルットの同居生活。人間の世界も猫の世界も、みんな苦労しつつ楽しく生きている。1話1ページでさくっと読めるので、肩の力を抜いてゆったりのんびり楽しみたい。
平成よっぱらい研究所
「こんなに周りに迷惑をかけて自分はもうだめだ」と、酒を飲んで後悔したとき、この本を開こう。「まだまだ二ノ宮先生レベルじゃないから大丈夫だ」と安心して、あなたはまたお酒を飲むことができるだろう。「のだめ」の二ノ宮知子だけを知っている人が読んだら驚愕の内容だ。ただただ二ノ宮先生とまわりの愉快な仲間たちが酔っ払っては、まわりの人たちに迷惑をかけて怒られたり、わがままを言ってほどこしをうけたり、逆に酔っ払いに絡まれて死にそうになったり…と本の内容を説明しようと思うと、しょうもなさすぎるものなのだが、謎の勢いがあり、謎の元気をもらえる…と思う。たぶん。この作品が今出たら確実に炎上案件なので(特にカップルを花火で撃退する話はひどい)、あまりまわりに広めすぎず、こっそりと楽しむことをすすめたい。
コロコロ創刊伝説
昔好きだったマンガ、今ではあまり思い出されることはないけど、マンガ家自身にとっては命を懸けた分身であることがひしひしと感じられる作品。「つるピカハゲ丸」でヒットを飛ばした作者自身の半生を追ってゆく形で、熱さに溢れるコロコロコミックの創刊秘話がひもとかれてゆく。いま栄光は過去のものとなり、年齢と借金を重ね、疲れきった作者。そんな生みの親を励ますように、かつてのヒットキャラクターが変わらない姿で現れる。その都度「オレから漫画をとったらなにが残るー!!!」とペンを握り直す作者の姿はハゲ丸くんであり、轟一番そのもので、武田景虎が憑依している。昔懐かしいドタドタのギャグマンガタッチで描かれるハードノックライフのギャップに引きこまれ、一気に読了してしまった。人生いつだってこれからだ、という気持ちになる。
腐女子のつづ井さん
4年前に初めて生の腐女子に出会い、自分たち男同士の絡みになぜそこまで興奮するんだ? と不可解でしょうがなかった。この「腐女子のつづ井さん」に出会い、得体のしれなかった彼女らをずっと身近に感じている自分がいる。
本作は作者のつづ井さんが、ボーイズラブ(BL)好きであることを隠して生活している仲間たちとの日常を描くギャグエッセイだ。
まったくピンとこない恋愛ソングを、好きな男の子キャラ同士に置き換えることで「わかる」と涙したり。BLに浸りすぎて「男性といい感じになっても『私チ●コついていなけどいいの!?』と本気で思うようになった」と仲間同士でうなずき合ったり。作者は自分たちの思考や言動が世間からずれていることを自覚しながら、ときに自虐的に、ときに幸せそうに、鉛筆画のようなゆるーい画風で面白おかしく描いてくれる。
つづ井さんたちの日常に笑う一方、「わかる」と共感してしまうところも多い。恋愛ソングへの解釈を深めるために、彼女らは歌詞をわざわざワードに打ち込んでプリントアウトし、夜中に熱く議論し、生まれた発見をメモしていく。一瞬「何やってんだ自分ら」という空気が流れながらも、「こういうムダなことする時間を大事にしたいよね」と微笑み合う。
常識からすると引かれるのでは、と隠している趣味や性嗜好は多かれ少なかれみんな持っているものだ。それを表に出せない苦しみだけではなく、素直に楽しんでいるときの幸せ、そして良き理解者がいたときの喜びが、つづ井さんたちの日常には溢れている。
かきのたね
“柿野家の一人娘実子ちゃんは、叔父さんが拾ってきた迷い犬を飼うことになりました。タネと名付けて可愛がっているその犬、実は犬に変身した宇宙人だったのです”――決まってこの冒頭文からはじまる一話完結型の連作マンガ。
普通の家庭に異分子が入り込む藤子不二雄マンガのような設定と、均一な線で構築された安定した絵柄は、どこかで読んだことがあるかのような懐かしさを感じさせる。設定と絵柄に斬新さはない一方で、登場人物の表情、会話のかけあいとコマ間の時間感覚がとてもセンス良く丁寧に描かれていており、心地よく読める。
さらさらっと描いているように見せて読者の肩の力を入れさせないながらも、最後の方ではちょっとしたメッセージ性も含まれており、心憎い演出でもある。読めば日常が愛おしくなるはず。
ヒナまつり
ヒナまつりは、ヤクザの新田さんと突如異世界から現れた謎の超能力少女ヒナを中心とするギャグマンガだ。といってもその実態は新田さんによるヒナのお世話日記。ヒナが引き起こす数多のトラブルにもへこたれず、ヤクザとしても出世していく「いい人」新田さんを思わず応援してしまう。新田さんとの共同生活を通しての「非常識人」ヒナの成長にも注目だ。クラスメート、組員、ヒナを捕まえに来た超能力少女たちと周囲を彩る面々も個性派ぞろい。癖の強いキャラクターたちが生み出すテンポの良い笑いは、何回読んでも噴き出さずにはいられない。くれぐれも電車の中では読まれませんよう。
孤独のグルメ2
1巻が出たのは1997年、ネットでのコアな人気を経てTVドラマ化、断片的な新作の掲載をまとめて実に18年ぶりの第2巻となった。内容は変わらず、主人公の五郎が街の飲食店に立ち寄り、そこで見せる食事へのこだわり、間をもったモノローグが楽しい作品となっている。チェーン店全盛の昨今、雰囲気がある個人経営の飲食店は入るのにちょっとためらってしまう…そんな私にも日常からの軽い脱却を試みる勇気を与えてくれる。
日々コウジ中
大切な思い出を忘れてしまう、感情が制御できなくなる、それでも自分は正常だと思っている。身近な人がどこまで変わったら、その人はその人じゃなくなってしまうのか。それでも愛情を持って接することができるんだろうか。【高次脳機能障害】になった夫と、それを支える家族の日常が描かれる。柔らかいイラストとコミカルな語り口に、つい「次のページでコウジさんは、どんなことをやらかすんだろう…」と野次馬的に読み進めてしまう。読み終えた時には、この障害とそれを取り巻く環境、家族愛について何かしら考える事になるだろう。障害に翻弄される中、時折「コウジさんらしさ」の本質が見える描写があり、それが鮮やかに胸に迫ってくる。
ドラえもん デジタルカラー版
今までなかったことを意外に思いつつも、今回45周年記念でデジタル版が発行(7/15)とのことで、カラー版1巻を購入してみました。ママがのび太にやたら甘いことに、これからの変貌を考えて恐ろしくなりました。ガリバートンネルってあんな変な配色だったっけ?というのも見どころです。何より、デジタル版でいつまでも劣化しないドラえもんに会える!という感覚がいいですね。
まとめ★グロッキーヘブン
女の子が着替えているところに遭遇したり、転んでぶつかったり。昔からあるラブコメの王道ですよね。そして、そんな不意打ちをくらった女の子が相手をボコボコになぐるというのもお約束。もしその関係が男女逆の立場ならどうなるの…!?というのが本作。主人公は「ラッキースケベ」の血を引き継いだ女子高生、まとめ。そして「暴力ヒロイン」を引き継いだのが、柔道部のイケメン男子高校生、集。女子校が共学になることで出会ってしまった2人は、出会えばToLoveる…。といっても、男女が王道の逆パターンなので、妙に恥ずかしく、笑いがこみ上げてきたり。読んだら何もかもばかばかしくて、元気になること間違いなしです。
ぱら☆いぞ
「下ネタ」の応用力の高さに、笑いを通り越して感心してしまう作品。きっと作者の目には、政治も経済も宗教も、世の中のあらゆる事象が「下ネタ」として映っているのでしょう。「女子高生の日常」を世界観に繰り出される4コマギャグ(全て「下ネタ」)は単行本1冊につき、怒涛の約300題。2巻では「あずまんが大王」のキャラクターも参戦。同じ「女子高生の日常」を世界観としながら、対極に位置する作品同士のコラボレーションは必見です。内容に反して絵柄は淡白で、際どい描写もデフォルメされており、時に不謹慎と思えるネタですら、不思議と許せてしまう独特の魅力があります。飲み会の前に読んでいけば、色々な意味で一目置かれるかも!?
オッス!トン子ちゃん
「哲学ギャグ漫画」とでも呼びたい一冊。著者はナンセンスギャグ漫画の『バカドリル』はもちろん、最近では「コップのフチ子」の生みの親としても有名なタナカカツキ氏。明るく元気いっぱいの主人公・トン子ちゃんが、常連の喫茶店で「岡本太郎」という偉大な芸術家を知り、打たれるところから物語が始まります。わざと古めかしいタッチで描かれたギリギリのダサさを狙ったキャラクターが、世界を飲み込むように描かれた芸術作品と共存するその迫力!トン子ちゃんが芸術に触れるとき、彼女の感動と衝撃がド直球に伝わってきて、一緒に興奮せずにはいられません…なんて書くと、ちょっと難しそうですが、大笑いして読める軽さも魅力的。金八ネタも爆発!情熱的でぽっちゃり体型のトン子ちゃんは、キックボードをぶっとばし、恋に悩み、妄想ポエムが溢れ、時には周囲に嫉妬もする、人間味溢れるチャーミングな女の子。パワーが足りないとき、笑って前を向きたいとき、トン子ちゃんに喝を入れてもらっては?
北欧女子オーサが見つけた日本の不思議
最近、「YOUは何しに日本へ?」の後追い的な、日本すげー!めしうめー!的な番組がばかりで食傷気味な方も多いのは重々承知の上でおススメさせていただきます。北欧スウェーデンからやってきたバリアニオタ、オーサさんの日本での生活と、北欧との文化の違いなどを綴ったエッセイコミック。オーサさんは日本の漫画の専門学校に通っていたという経歴の持ち主。絵だけ見ると、キャラクターのかわいさ、擬音語、デフォルメ表情など、日本人が描いたとしか思えないほど。この作品を通してセーラームーンの偉大なる功績を知る事ができます。あと日本語を学ぶ外国人が苦手なのが「~だ」の使い方らしく、(「気持いいだ」とか)それに関するエピソードが面白かったです。ブログでも四コマ作品が読めるので是非チェックしてみてください。
おしゃれ手帖
勝手に「美大系」と思っているマンガのジャンルがあって、それは「関節に変な主張がある」絵柄を特徴としている。なぜか描線にとどまらずギャグにも似たような傾向があるのは不思議なことだと思っていた。本作は絵、内容ともに美大系の代表ともいえる作品だが、ここまでクセのあるマンガがメジャー誌で連載されていたのが当時、本当に不思議だった。全10巻のうち、最初は単発エピソードのギャグテイストが強く、無理にオチをつけているようで、言葉選びや人物の表情にそのセンスが見えるに留まっていた。たぶん第56話のヒゲさんの登場を境に、リフレインとフラッシュバックの技法が多用されるようになり、新たな展開が見られるようになる。中盤からはどんどん断片的風景のコラージュが重なり、最終巻では、作品世界が大きな曼荼羅の中で閉じられるような、ちょっとした感動が待っている。このたび、同作者による「クリームソーダシティ」の続編製作プロジェクトが進行中らしく、2万円の出資でマンガに登場できるということに心動かされている。
大正野郎
最近、おしゃれな男子の間では「滝廉太郎ヘア」なるものが流行っているらしく髪型だけでなくメガネも合せてのコーディネートが人気らしいですね。(めっちゃ曖昧でざっくり…。すみません…。)ファッションだけでなく古民家改築カフェ・ゲストハウスなども、以前にもまして増えつつあるように感じます。古き良き日本への懐古主義スタイルが復権しつつあるんでしょうか。素晴らしいことです。「大正野郎」は、ファッション、生活様式、文学…全ての大正カルチャーを愛してやまないバブル時代の大学生が主人公の物語。たばこは煙管かゴールデンバッド、銭湯では亀の子たわしで垢をすり、懐中時計を愛用。趣味は切手集め。変わり者扱いされようがどこ吹く風。そんな彼の下宿生活や恋愛が、おもしろおかしく、ゆるやかに、やさしい目線で描かれます。フリーハンドでガシガシ描かれた枠線も魅力的!ルイガ●?ビ●ンキ?男は山口ベニーサイクルに乗れ!
ダンドリくん
私は最高に面白いと思うのに、読ませた人も、Amazonのレビューもいまいち奮わないマンガ。朝起きて、目覚ましを止める手の返す刀でカーテンを開け、お湯を沸かしながらハミガキする…少し前に紹介した「大東京ビンボー生活マニュアル」と同じく、ハウツーの筈が次第にエッセイと化していくのはこの手のマンガのお決まりのようだ。思へらく、この現象はある種の「道」を説明する上での避けられないパターンなんじゃないか。道を説くには、論語や禅の公案のように、祖師の具体的な行為や言動をただ例示することが一番であり、その解釈は読者に委ねることで、時代や風土を超えた頑健性が得られるのだろう。「ダンドリくん」、残念なのは長らく絶版であることだが…あっ電子書籍版が出たんだ!もしかしたらあなたは好きかもしれないから読んでみて!
モンキーパトロール
おやっさんと呼ばれるオヤジのような女子「ヤイチ」、男にモテまくりのプータロー女子「すず」、お金大好きキャリアウーマンまっしぐらな女子「香ちゃん」、性格は全然違うけれど仲良しアラサー(あえて女子と言おう)3人が織りなす、爆笑必至の4コマ漫画。しかし、ただの4コマと侮るなかれ。それぞれのキャラがとにかく濃く、喜劇と悲劇、泣きと笑いが表裏一体で描かれ、深い人生観で表現された作品となっている。絵がそんなに上手いわけではないのに、とにかく捨てキャラがおらず、脇役と思われていた人物の日々や心の機微まで透けて見えてくるほどキャラクターの魅力で溢れている。読み応えがあるのに、さらっと一気読みしてしまう面白さ。読んだ後、必ず登場人物の誰かに共感してしまうだろう。本編を読んだ後は、外伝まで通して更に深みにハマって欲しい。
ニァイズ 東京都写真美術館ニュース別冊~『クレムリン』出張版
美術館の月刊広報誌の中で唯一無二の個性を放つ「ニァイズ」。東京都写真美術館(写美)とカレー沢薫の名作猫漫画「クレムリン」が強力なタッグを組んだフリーペーパーで、本作はそれらを単行本化したもの。広報誌というと堅い感じだが、そのイメージは見事なまでに裏切られる。「クレムリン」のキャラクターにより、毎回写美のあれこれが紹介されるのだが、暴露本を読んでいるようなスリリングさもありニヤリとしてしまう。写美は残念ながらリニューアルのため休館中。しかし「ニァイズ」のペーパーは深く静かに発行され続けており、美術館復活の時を待っている。他館や書店などで見かけたら、家まで連れて帰ってほしい。
よちよち文藝部
『坊っちゃん』の舞台がこのSNS全盛の現代日本だったら? 川端康成は流麗な文章と「※注釈」の裏に何を隠していた? 非リア充たちの愛読書・『山月記』の中島敦は実はモテ男だった? 学生時代に教科書で読んだ文学作品や文豪たちの知られざる一面に、斜め上な切り口から親しみを持ってゆる〜く迫ったコミックエッセイ。大人になるとなかなかじっくり本を読む時間が取れなくなりがちですが(でもマンガは読む)、やっぱりたまにはあらためて純文学に触れてみたいなーという気にさせられます。
ファッション王
暇つぶしに、と思ってダウンロードしたLINE漫画アプリに思わぬ傑作が混じっていました。韓国発のWEBコミック。スクールヒエラルキー底辺に属する主人公が、ファッションに目覚め好きな女子が属するイケイケ集団への仲間入りを果たし、バラ色の高校生活が始まる…と思いきや…。学校の過ごし方、ふざけ合い、修学旅行の緊張感など日本の高校生も韓国の高校生もみんな一緒なんだな、と感じさせます。主人公の妄想や漫画らしい大げさな表現などが日本の漫画とはまた違うテイストでとても新鮮。ノリが独特なので苦手な人もいるかもしれません。絵は上手いわけではないのですが、妙な味があります。流行に追随した似たような絵柄、内容が多いな、と感じる最近の日本の漫画に少し飽きた方にオススメ!
しわあせ
「幸せ」ではなく「皺汗」です。念のため。「へうげもの」でご存知の方も多い山田芳裕さんの短編作品。バブル景気に湧いた1980年代を、サイコーにファンキーでクールに過ごした主人公が老後を過ごす西暦2030年代は、教育・政治・環境、服装、娯楽、飲食も含めたカルチャーなど全てが、バブル時代とは真逆の人畜無害で健全な物になり果てる。退屈この上ない世の中を嘆き、アナーキー精神を常に持ち続けようとする主人公。いちご風味のわざとらしさや着色ウィンナーへの渇望、オニツカタイガーへの羨望、文化遺産となったジュリアナ跡地など、細かい描写がいたる所に。山田先生の作品は、何かに対して一途にこだわる主人公が描かれる事が多いのですが、先生自身もこだわりの多い方だと思います。そういう作家さんの描く作品というのは、やはり他には無い絵柄だったり設定だったりして、発表から何年経とうがいつまでも新鮮で印象に残ります。装丁デザインも、私が所持する書籍の中で一番凝っててサイコーにCOOLですYO!YO!
かっこいいスキヤキ
「孤独のグルメ」同原作者の、昔のガロでの掲載作品を中心とした短篇集。日々、庶民を迷わせる「細かいこと」。それに自分なりの対処法を持って、毎日を過ごしていくことが幸せなのではないかと思う。それは生活をルーチン化し、大切なことに費やす時間を確保するための「バグ取り」とも言えるかもしれないし、ルーチンになりがちな毎日にドラマ性を持たせ、ささやかな日常をいっそう楽しむための「脚色」とも言えるのかもしれない。ドラマチックな弁当の食べ方を「夜行」で、すき焼きをめぐる攻防戦を「最後の晩餐」、かっこつけたい花粉症を「花粉症」で描いている。あと「アーム・ジョーのことを考えると、僕はブルース・リーの映画を観たあとみたいにドキドキした」で始まる作品も、オチをぜひ見てほしい。これが電子書籍で読めるとは、いい時代になったもんだ…最近ドラマ化した「食の軍師」の主人公、本郷さんの原型も見られる。
あめつちだれそれそこかしこ
古民家×不思議×疑似家族という鉄板かつ強力な布陣のストーリーです。主人公の笹木青司は天涯孤独なのに、妙にドライな現代っ子。また彼と同居する謎の存在たちは、浮世離れしている割に俗っぽいものを知っていたり好んだりします。そんな彼らのちょっとした会話でくすっと笑える本作は、元気が出ない時の読書にもぴったり。一番の見どころは、年男というキャラクターが見せる、いざという時のかっこ良さでしょうか。1巻には2回しか出てこないので要チェックです。WEBでは第1話がお試し読みできますよ。
サディスティック・19
塀の上を走らずにはいられないという性癖を持つ、哀愁漂うバーコード頭のサラリーマン。残酷なもの、悪趣味なものが大好きなお嬢様。マンガのキャラ専門の耽美系美容整形外科医。妖怪油すましとある家族のハートウォーミングな日常。かわいらしい絵柄からは想像もつかない、濃厚すぎるキャラクターたちが繰り広げるシュール&ブラックな笑いの連鎖、たまりません。かつて衝撃を受けた作品、Kindleで読めるのが本当に嬉しい!
とんかつDJアゲ太郎
とんかつ屋見習いとDJの共通点とは何だろうか? それは「アゲる」こと。とんかつを揚げることとDJでフロアを盛り上げること、本作はその二つに共通点を見いだし渋谷系と言い切った時点で勝ちである。実はこのマリアージュ、言い換えると食×音楽×地域となり、なんと普遍的な強度をもってしまったのだ。そして、ジャンプブランドにも関わらず、あまりに絵が下手かつ実験要素満載。それは、電子マンガアプリ(少年ジャンプ+)の無料閲覧枠という新たなプラットフォームができたからこそであり、その最初のヒット作でもある。そういう意味でもマンガ史において重要な作品として語り継がれるかもしれない。
咲くは江戸にもその素質
『八犬伝』に登場する犬士同士の恋愛を妄想し、創作し、語り合い、作品世界を象徴するモチーフを嬉々として身につける。これはそんな、「もし江戸時代の女子が腐の道に目覚めてしまったら」を描いた、comico発のギャグマンガ。現代の腐女子の感性を江戸に生きる少女たちに仮託する描写に笑いつつ、私がその世界を知った頃ーー15年ほど前は、本当に知る人ぞ知る文化だったものが、今やこんなにも広く若い人向けの媒体で題材とされ、人気を得ていることに、隔世の感があったりもします。
サムライせんせい
最近江戸マンガがアツい気がしますが、これは江戸からタイムスリップしてきてしまった人の話。突然現代の日本に現れたサムライは、幕末の志士として(地味に)歴史に名を残している武市半平太その人だった! コメディとして楽しめる作品ですが、周辺住人の好奇の視線に晒されることや現代日本人との価値観の相違に悩む武市せんせいの姿には考えさせられる部分も… 今後の展開が楽しみです!
僕といっしょ
稲中後に連載された作品で賛否両論ありますが、私は大好きです。主人公や登場人物を取り巻く環境は劣悪。それを秀逸なギャグとして笑いに変えつつ、同時に生きていく辛さ・厳しさを容赦なく描きます。ギャグ表現な分、「ヒミズ」に比べると幾分救いや笑いはあるものの、普段はお調子者でアホな稲中的主人公達が、大人の圧倒的な暴力の前でなす術もない様子は胸が痛むし、落差が激しい分「ヒミズ」よりも胸にズンと来るものがあります。昔、一度だけ読んでみてつまらないと思った方も、今一度、別視点で再読してみてはいかがでしょうか。
服なんて、どうでもいいと思ってた。
「カシュクールタイプのショート丈で女度全開コーデ」「男をキュン死♡させる!!キュートなお嬢チックコーデ!」上記の言葉でどんな服装か想像つくだろうか。微塵もわからないと思っている人はぜひこの本を手に取ってみてほしい。盆栽雑誌の編集から赤文字系女性誌「ルイルイ」に異動になった主人公。女性誌のことは右も左もわからない中、幾度と無く編集という立場が揺らぐ危機が迫る。ただ、いつだって彼らは努力を忘れない。そのピンチをきちんと自分なりの解釈で切り抜けていく。よくあるミスコミュニケーションギャグ漫画かと思うが、リアリティのさじ加減が秀逸な一冊。ファッションをよく知る人はもちろん、知らない人はきっと彼らの絶望具合に共感して、いつしか応援してしまうことだろう。
カラスヤサトシの日本びっくりカレー
自身と周囲をネタにしたじわじわ可笑しい4コマ作品で知られる作者によるカレーマンガ。「日本一辛いカレーを出す店」「汽車がカレーを運んでくる店」といった個性的なカレー屋さんのレポートから全国のご当地レトルトカレー食べ比べ、研究者の先生への取材など、しつこいほどにカレーにまつわる体当たり企画満載! カレー愛を自覚する人もしない人もきっと楽しめます。
人は見た目が100パーセント
ここ最近の中で笑った作品。電車の中でも笑いそうになり、あわてて本を閉じたことも。製紙会社の研究員3人が、勤務時間後に美容やファッションの研究に勤しむというビューティコメディものですが、ギャグシーンはむしろ青年マンガ誌に載せても良いくらい。小技も効いています。インパクトのあるタイトル、そして化粧品のCMを彷彿とさせる装丁も魅力的な一冊です。
サ道
冴えない中年男性の娯楽と思っていた「サウナ」が、ちょっと流行っているらしい。そんなニュースを見て、この「サ道」を思い出した。銭湯の隅、サウナのドアの不思議な存在感が気になったことがないだろうか。これまで理解できなかった世界に、ほんのきっかけから足を突っ込み、ドはまりの時期を経て、自分の選択肢が少し拡がった状態に落ち着く、あの感覚を追体験できる。「さらに、高次元へとアセンションされたし!」
沈夫人の料理人
料理マンガは数多くあれど、私が一番好きなのはこちらの作品!明代中国を舞台に、ドSの沈夫人とドMの李三の物語。李三は窮地に陥るほど作る料理の味をレベルアップする。それを知った沈夫人は美味しい料理を食べたいがために彼に無理難題を押し付けるのですが、困り果てる彼の表情を見てほくそ笑んだり、美味しい料理にありつけた時の喜んだ顔などがなんともキュート。中華料理が食べたくなります!時代を1900年代初頭に設定した「沈夫人の料理店」も必読。
めしばな刑事タチバナ 1
コンビニグルメやお菓子など、身近な食品への愛が語られる。一見マンネリになりつつ、いきなり無声映画風の回があったり、江戸時代の夢をみたりと、油断ならない工夫を放ってくる。最初はクサいと思っていたが、巻を進めると素直に感心できるようになった。