おしゃれ手帖

勝手に「美大系」と思っているマンガのジャンルがあって、それは「関節に変な主張がある」絵柄を特徴としている。なぜか描線にとどまらずギャグにも似たような傾向があるのは不思議なことだと思っていた。本作は絵、内容ともに美大系の代表ともいえる作品だが、ここまでクセのあるマンガがメジャー誌で連載されていたのが当時、本当に不思議だった。全10巻のうち、最初は単発エピソードのギャグテイストが強く、無理にオチをつけているようで、言葉選びや人物の表情にそのセンスが見えるに留まっていた。たぶん第56話のヒゲさんの登場を境に、リフレインとフラッシュバックの技法が多用されるようになり、新たな展開が見られるようになる。中盤からはどんどん断片的風景のコラージュが重なり、最終巻では、作品世界が大きな曼荼羅の中で閉じられるような、ちょっとした感動が待っている。このたび、同作者による「クリームソーダシティ」の続編製作プロジェクトが進行中らしく、2万円の出資でマンガに登場できるということに心動かされている。

文=本多正徳
1980年、広島生まれ。専門出版社勤務。マンガナイトではすっかりイジラれ担当になってしまった最近(!?)。男子校の寮でマンガの面白さに目覚めました。好きなジャンルはガロ系とヘタウマ系。藤子不二雄やつげ義春、水木しげるなどの古典的ナンバーも得意。心のマンガは『ダンドリくん(泉昌之)』『サルでも描けるまんが教室(相原コージ、竹熊健太郎)』でしょうか… ほかの趣味は読書、囲碁・将棋と悲しいほどのインドア派。ウェブサイト/グッズ制作を担当。