かっこいいスキヤキ

孤独のグルメ」同原作者の、昔のガロでの掲載作品を中心とした短篇集。日々、庶民を迷わせる「細かいこと」。それに自分なりの対処法を持って、毎日を過ごしていくことが幸せなのではないかと思う。それは生活をルーチン化し、大切なことに費やす時間を確保するための「バグ取り」とも言えるかもしれないし、ルーチンになりがちな毎日にドラマ性を持たせ、ささやかな日常をいっそう楽しむための「脚色」とも言えるのかもしれない。ドラマチックな弁当の食べ方を「夜行」で、すき焼きをめぐる攻防戦を「最後の晩餐」、かっこつけたい花粉症を「花粉症」で描いている。あと「アーム・ジョーのことを考えると、僕はブルース・リーの映画を観たあとみたいにドキドキした」で始まる作品も、オチをぜひ見てほしい。これが電子書籍で読めるとは、いい時代になったもんだ…最近ドラマ化した「食の軍師」の主人公、本郷さんの原型も見られる。

文=本多正徳
1980年、広島生まれ。専門出版社勤務。マンガナイトではすっかりイジラれ担当になってしまった最近(!?)。男子校の寮でマンガの面白さに目覚めました。好きなジャンルはガロ系とヘタウマ系。藤子不二雄やつげ義春、水木しげるなどの古典的ナンバーも得意。心のマンガは『ダンドリくん(泉昌之)』『サルでも描けるまんが教室(相原コージ、竹熊健太郎)』でしょうか… ほかの趣味は読書、囲碁・将棋と悲しいほどのインドア派。ウェブサイト/グッズ制作を担当。