schoo「マンガで読み解く現代社会学」がアーカイブされました

ネットで無料受講できる授業を生配信している「schoo」にて配信済みの授業「マンガで読み解く現代社会学」がアーカイブされました。代表山内康裕が登壇しています。※アーカイブ授業は、会員登録すると月1授業無料で受講できます

マンガナイトセレクト お仕事マンガ5選~マンガでわかる日本のお仕事事情~

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4月は新生活がスタートする季節。これを読んでいる方の中には、今年から新社会人となった方もいるでしょう。社会人になって久しい方も、新社会人だったころの自分を思い出しながら、初心を返って襟を正したり、自分の変化や成長を実感する季節かもしれません。
今回は、そんな季節に相応しい、「お仕事」を描くマンガを選びました。

ところで、海外の方にとって、日本人の「働く」イメージは「勤勉」「長時間労働」「ものづくりに長けている」等でしょうか。確かにそういう面も、いまだに色濃くあると思います。でも、実際はそれだけじゃない。ぜひ、日本の働き方そのものや、働くことに対する価値観の多様性を感じとって、作中の登場人物たちと一緒に「お仕事」を疑似体験してみてください。

『カレチ』池田邦彦

日本が世界に誇るサービスのひとつに鉄道があげられる。車両や運行システムだけでなく、それに関わる人々の努力の上に世界一正確なサービスが実現しているのだ。池田邦彦『カレチ』は貨客列車の車掌を主人公に鉄道に関わる人たちの仕事と人生を描く作品だ。ただ、その中に描かれているのは明文化されたルールを守るだけではなく、仕事に誇りを持ちながらも、人情厚く、臨機応変に利用者第一の判断をする、倫理的な鉄道員たちの姿である。殺伐としがちな現代の職場において、欠いてしまいがちな「思いやり」を再認識させてくれる名作といえる。(いけだこういち)

『宮本から君へ』新井英樹

大学を卒業したばかりの主人公・宮本は都内の文具メーカー新米営業。右も左も分からないながらに先輩や取引先に噛み付くことだけは一人前。とにかくがむしゃらで社会の理不尽には屈せず、自分の理想をところ構わず主張し、そのたびに現実との乖離に打ちのめされる日々。たまに情熱がいい方向に行くが、情熱だけではうまくいかないのが仕事である。新社会人の頃に読むとあまりにも青臭く「こんなサラリーマンになりたくない」と思うだろうが、社会人経験が増えるごとに感想が人によって大きく異なってくる本作。これからの社会人生活で時折読み返し、そのたびに自分の変化を発見してみてほしい。(kukurer)

『スキエンティア』戸田誠二

自由の女神ならぬ「科学の女神」像が高層タワーの上から人間の生活を見下ろす近未来の日本。しかし、ここで現代に生きる我々と同じように生きづらさを抱える登場人物たちを救うのは、高度な科学技術そのものではない。彼らはひたむきにそれぞれの仕事に打ち込み、悩み、苦しみ、葛藤しつつも大きな達成感を得る、その過程で少しだけテクノロジーの力を借りながら、やがて試練を乗り越えていく。いつの世も、大人の生きる道は険しい。みんな何かを失ったり、諦めたり、挫折しながら、それでも現実に立ち向かっていく。泥臭く実直に自分の仕事をこなすことの喜びや、その姿勢の尊さを描き出す本作は、そんな働く大人たちへのエールのような作品である。(鈴木史恵)

『アゲイン!!』久保ミツロウ

働くとは「はた」を「らく」にすることだとか言うように、日本人の労働観は身近な集団の中でどういった役割を果たすかという問題抜きには成り立たない。自己実現というより、求められた職責に適応する行為としての仕事。その萌芽は、就職以前の学園ものにも表れている。卒業間際で自分にも周りにも不平タラタラだったさえない主人公が、タイムスリップして高校生活をやり直す(=アゲインする)ことになったのをきっかけに、一種の開き直りから応援団を舞台に、以前なら絶対引き受けなかったような役どころを担い、あがく中で意外な能力を発揮し、周りも変わっていく。集団の中での役割を通じた個人の自己体現というものを、信じてみたくなる作品だ。(洛中洛外)

『独身OLのすべて』まずりん

新入社員が社会に入って直面する大変なことに仕事はもちろん、職場の人間関係があるだろう。この作品はデフォルメされたノブ子、マユ子、タマ子の独身OLたちが世間を知らない新入社員や充実した生活を送る既婚者に毒舌を吐き、あるいは共感を生み、あるいは悲哀を生むWEB連載のフルカラーコミックだ。アラサーからアラフォー世代に共感しやすいネタが各所に散りばめられているので同世代が共感することは間違いないのだが、新入社員が本作を読むことによって上司たちのネタ元や共通言語(シークレットコード)を事前学習して職場の人間関係を円滑に回す役にも立つ職場人間関係のバイブルとしてもオススメしたい。(オオタカズナリ)

マンガナイト読書会-マンガマッピング編

3月29日、「マンガナイト読書会-マンガマッピング編」が行われました。当日はお天気にも恵まれ、多くの方々にお越しいただきました。会場は初となるレインボーバードのイベントスペース。たくさんのマンガが並ぶ落ち着いた空間です。
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今回はいつもと少し趣向を変え、マンガをマトリックス(チャート)にして、2013年のマンガの傾向を独自に読み解くワークショップ形式の読書会を開催することになりました。ちょうどマンガ関連の賞が出揃った後のイベントとなり、年度末にふさわしいものとなりました。

代表山内の挨拶の後、まずは参加者が3つのグループに分かれ、おすすめのマンガの紹介を兼ねた自己紹介をしていきます。持ってきてもらったのは「2013年に読んで面白かったマンガ」です。特に内容制限は設けなかったため、幅広いジャンルの作品が集まりました。
自己紹介の次は回し読みタイムに入ります。にぎやかだった会場が一転して静まり返り、辺りは読む人の真剣な空気に包まれました。

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回し読み終了後、用意された3種類のマトリックスにマンガのタイトルを書いたふせんを1枚ずつ貼っていきます。マトリックスの中央には、基準となる人気作品を配置しました。そして軸には「かわいい」「かっこいい」や「人間」「人外」などの対になるワードが書いてあり、人気作品と比べ、持ち寄った作品はどの辺りに位置するのかを決めていきます。
貼り終わった所で他のテーブルに移動し、次のマトリックスにふせんを貼ります。すぐに作業を終えてマンガの回し読みに戻るチームあり、ギリギリまで楽しく検討を行っているチームありと、グループごとに個性が出るのが印象的でした。

3つのテーブルを回り終わった所で作業終了です。こうして3枚のマトリックスが完成しました。マンガのタイトルがびっしりと並んだ紙を見ていると、嬉しさと達成感がわいてきます。

君に届け模造紙進撃の巨人模造紙聖☆おにいさん模造紙

発表タイムでは、一人一人持参したマンガの紹介とマトリックス作成作業について思ったことを語ってもらいました。あるテーマに対して、マンガの立ち位置を一つ一つ決めていくという作業を皆さん楽しんでくれたようです。
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できたマトリックスはこちらの3種類です!

● 基準作品:君に届け(かっこいい←→かわいい/ストーリー重視←→キャラ立ち)

君に届けマトリックス

● 基準作品:進撃の巨人(気持ち良い←→気持ち悪い/笑える←→泣ける)

進撃の巨人マトリックス

● 基準作品:聖☆おにいさん(日常←→非日常/人間←→人外)

聖☆おにいさんマトリックス

今回の読書会オリジナルの2013年のマンガの傾向をまとめると、以下のようになりました。

  • ・人間が日常生活を送る作品が多い
  • ・笑える作品より泣ける作品がやや多い
  • ・気持ち良い作品と気持ち悪い作品はどちらも多い
  • ・個性的な作品はマトリックスの端に位置することが多い。例えば「テラフォーマーズ」や「坂本ですが?」など

この「マンガマッピング」はマンガナイトにとっても初の試みでしたが、全員で意見を出し合い考えた結果、このように成果を出すことができました。最後に記念撮影をして、第一部は終了となりました。

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第二部の懇親会は久々のマンガ飯です!
ケータリングのヒラトコセイジさんによる、マンガに登場したメニューの再現の数々に参加者一同が感動したのは言うまでもありません。

当日出たごはんはこちらです。
メニュー名からどの作品に登場したかわかった方はグルメマンガ通です!

【メインディッシュ】ローストビーフもどき
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【副菜】トリッパ、白菜、白インゲンの煮込み
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【スープ】きりたんぽ
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【主食】南風のナポリタン
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【サラダ】
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ローストビーフは簡単に作れるのに味が本格的という、驚きの一品でした。ナポリタンは「南風」のモデルとなった実在するお店「アンデス」のものを参考に再現。料理雑誌にも取り上げられたその味は、ほっとするおいしさに満ちていました。その他の料理も本当においしかったです。
素敵なごはんを作って下さったヒラトコさん、どうもありがとうございました。ごちそうさまでした。

次回も楽しい時間が過ごせるような読書会を開催したいと思います。また今年はマンガナイトが5周年を迎えますので、色々な機会にたくさんの人と交流できたらと考えています。今後ともよろしくお願いします! (ek)

マンガを持ってアキバに出よう 脱出ゲーム×マンガの可能性

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マンガを読む人なら誰でも、「マンガの世界に入り込んで遊べたら」と思うことがあるだろう。本やマンガ好きの夢のひとつだ。これを実現したのがSCRAP主催のリアル脱出ゲーム「書泉リアルゲームブックシリーズ vol.2 漫画迷宮からの脱出」。ゲームブックを片手にゲームを進めていくにつれて、マンガとリアルの世界の境目が曖昧になり、マンガ表現の奥深さや書店のおもしろさを実感できる。
会場は秋葉原駅近くの書泉ブックタワー(東京・千代田、6月1日(日)まで)。

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参加するにはまずゲームブック(税抜き1200円)を購入する。

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ブックはリフィル式で、ゲーム内容や進め方もマンガで描かれる。

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書店で1冊のマンガを手にした参加者が、マンガの中に閉じ込められたという設定。マンガに隠された秘密を探り当てて脱出するため、ゲームブックを片手に書店内などのヒントを探すゲームだ。

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ゲームブック片手に店内をうろうろ

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ゲームを進めるときは店員さんやほかのお客さんの迷惑にならないように

書店を舞台にした脱出ゲームは2013年の「リアルゲームブックシリーズ vol.1 本屋迷宮からの脱出」に続き2回目。今回マンガを題材にしたのは「舞台が秋葉原の書店だから」(SCRAP)とのこと。さらに何ができたらマンガ好きは楽しくて、作品に入り込めるかを考えたという。

筆者も体験したのだが、マンガと脱出ゲームは想像以上に相性がいいことを実感した。(結果として謎を解くところまでは至らなかったが)

脱出ゲームの肝は、プレーヤーを閉じこめた場所に、いかにうまくヒントをちりばめ、プレーヤーに発見させて謎を解かせることにあると考える。

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プレーヤーは店内でゲームブックを熟読することになる

これをマンガ及び書店という場所で考えると、ヒントを潜り込ませる要素がとても多いのだ。物語と絵で構成されるマンガには、文字、枠線、コマ割りと様々な表現方法が隠されており、ゲームではこれらがフル活用されていた。マンガ好きなら行って損はしないだろう。おもしろくも奥が深いマンガ表現の世界にどっぷりつかりながら、自分の普段のマンガの読み方を気づかされることになるのだ。ある参加者は「マンガの背景がリアルの書店っぽくて、より作品に没頭できた。自分とマンガの距離が近くなった気がする」と話す。

SCRAPは今後、マンガ「名探偵コナン」や「DEATH NOTE」、「進撃の巨人」をテーマにした脱出ゲームも計画している。こちらも期待が持てそうだ。

ゲームを進める時間をさらに楽しくするのは書店という場所そのものだ。普段書店でよく目にするものもゲームの展開の鍵になっている。マンガや本が好きなら、自分の好きな漫画家の新作告知のポスターやサイン色紙のところで足を止めてしまい、肝心のゲームを進められないかもしれない。

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ついつい店内のポスターなどに目がいってしまう

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見ているだけで楽しいマンガ売り場だが、謎解きのために泣く泣く離れることに

またゲームの展開上、書店内のいろいろな売場に足を運ぶことになる。すると普段はあまり行かないジャンルの売場で思わぬ出会いが待っている。「趣味人専用」をうたう書泉ブックタワーの店内は、ちょっとしたエンターテインメント空間。例えば5階には、鉄道関連の雑誌や書籍だけでなく、なんと三陸鉄道やJR九州のグッズが並んでいるのだ。

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書店で売っているのは本や雑誌だけではない

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マニアにはうれしい、フリーペーパーコーナーも

今回の脱出ゲームに時間制限はないため、ヒントの場所以外にも安心して立ち寄れる。もちろんルール上、書店の外に出て食事をしたり休憩したりしても問題ない。

今年の春は、マンガを持ってアキバに出てみてはどうだろうか。(bookish)

マンガナイトセレクト お花見マンガ5選:「花」から感じる日本の美意識

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こんにちは。マンガナイトです。今月より、毎月テーマを決めて、マンガナイトメンバーがおすすめマンガを紹介していきます。今月のテーマは“お花見マンガ5選~「花」から感じる日本の美意識~”春の訪れを日に日に感じるこの季節にマンガでお花見をしながら、日本の美意識を再確認してはいかがでしょうか。季節折々に咲かせる花は、古くから和歌や美術などのモチーフとなり、日本独特の「四季」の情感と彩を、作品に与えてきました。現代のマンガの中にも、花を象徴的に扱っている作品があります。今回はそんな作品を5点選びました。

『雨柳堂夢咄(うりゅうどうゆめばなし)』波津彬子

時は明治。骨董屋・雨柳堂(うりゅうどう)を舞台に、骨董品にまつわる因縁を描く幻想物語。雨柳堂の店主の孫、連が、持ち込まれる骨董品の声を聞き、人と人あらざるものの間をつないでいく。その媒介となるのが四季折々の花だ。店のシンボルが柳であるように、多くのエピソードに植物、特に花の姿が描かれる。「月の花影」では人の姿をとり、自らの最後の花を花入れにさしてもらいに。「一朝の夢」では葉っぱが不思議な茶会への招待状に。「夜咄」では、梅の木直々に、指定の盆鉢への入れ替えを依頼される―と、この作品で、花は骨董品の模様としてだけでなく、人と人ではない世界の架け橋としても登場。日本人が身近にある植物に親しみつつも、その生命力に特別な力を見いだしていることを感じさせる作品だ。(bookish)

『花食う乙女』絹田村子

食べられる花、エディブルフラワーという言葉が一般化してきている。しかし、日本には古くからふきのとうや菜の花を春の訪れとして楽しむ文化があり、東北地方を中心として盛んに行われている食用菊の栽培などから「花を食べる」ことへの心理的ハードルは決して高くなかったといえる。そんな文化を知ってか知らずか、大学の薬用植物園を舞台に繰り広げられるコメディを描いた作品が『花食う乙女』だ。大学のエリート研究員、宇佐見となぜか彼の部下になってしまった激貧の占い師、遠子。植物にまつわる効用や成分をもとに二人が植物園で起こる事件を解決していくという、推理作品的様相も持ち合わせる異色の作品と言えるだろう。(いけだこういち)

『おいしい銀座 バイヤー真理』酒井郁子

東京・銀座の老舗百貨店で、食品仕入れを担当する現場を扱った作品。2巻収録の「春告げ魚 サワラ」は、花見がテーマだ。桜(主にソメイヨシノ)の花見は1年の節目の時期に、誰もが楽しみにしているイベント。見ごろが1~2週間しかない桜の開花に合わせた食材の仕入れを見極めるため、百貨店周辺の桜の開花状況やお花見客の様子を見回る。桜は元日からの積算温度が600度で開花すると言われるが、予想が2日前後ずれることもある。「お花見弁当」等「お花見」の文字があるだけで売り上げが3割も変わるため、小さな公園もチェックして準備を進める。私たちが毎年、おいしい食べ物に囲まれて花見を楽しめている裏には、こうした仕入れ担当者の努力があるのだろうと思わせてくれる。(旨井旬一)

『花吐き乙女』松田奈緒子

片想いをすると花を吐く奇病「花吐き病」。患者が吐いた花に他人がさわると感染してしまうが、恋をしない限り症状が出ることはない―。世にも不思議な「花吐き病」の謎を解こうとする研究所の面々が織りなす群像漫画である。装丁はレトロモダンで抒情的な感じだが、ストーリーはそれを見事に裏切るごった煮感が魅力。登場人物が花を吐くシーンは苦しそうでいて、見ていると段々すがすがしさまで覚えてくるから不思議だ。そこに描かれる花はチューリップや水仙、百合など多種多様で、華やかさをもたらしている。作者のエッセンスがたっぷり詰まっていて、ぜひ注目してほしい一冊である。(Kuu)

『花よりも花の如く』成田美名子

伝統芸能である「能」を主軸に置き、能楽師として成長してゆく主人公の姿を描いたこの作品は、タイトルからして『花』と謳われているように、様々な「花」が象徴的に描かれており、各エピソードと絡まりながら技巧的かつ繊細に表現されている。作中では梅、桜、蓮、杜若、菊、牡丹、林檎など四季折々の花たちが物語を彩り、単に絵の中に華を添えるだけでなく、登場人物の心の機微に触れる重要な役割を果たしている。「花は自分が美しいことを知らない」という主人公の言葉が、静かに染み込んでくる作画である。また日本画の技法が取り入れられた表紙もこの作品の見所。「能」と「花」を見事に融合させ、日本的な美しさに溢れている作品である。(ヤマダナナコ)

~本屋B&B連動企画「マンガナイト×PingMag」~

昨年末に特集した「BEST of 2013 マンガナイトセレクトの海外にも紹介したい漫画10選」を、下北沢の「本屋B&B」にて、期間限定の特別企画で展示販売しておりますので、ぜひお立ち寄りください。今後もこちらで紹介したマンガを随時B&Bで展示販売する予定です。お楽しみに。

マンガ大賞受賞作品などから、社会のイマを読み解く

4月14日(月)21:00~22:00の日程で、ネットで受講できる無料授業を配信している「schoo」にて、代表山内康裕が往来堂書店三木雄太さんと「マンガ大賞受賞作品などから、社会のイマを読み解く」の先生をやります。

マンガナイト読書会―マンガマッピング編

全体12014年3月29日(土)に「マンガナイト読書会―マンガマッピング編」を開催します。
今回の読書会は、参加者が持参したマンガについて話し合い、オリジナルのマンガマトリックス(チャート)を作っていくワークショップ形式になります。

参加のお申し込みは下記のフォームからお願いします。

皆さんに持参していただくマンガは「2013年に読んで面白かったマンガ」です。昨年出会ったマンガの中で、ぜひみんなに伝えたい、共有したいと思った単行本をお持ちください。

「心をゆさぶられた」「何かツボにはまった」「ひたすらかわいい」など、おすすめポイントは何でもOKです。有名無名新旧は問いません。みなさまのイチオシのマンガをお待ちしております。

集まったマンガは参加者で検討してマッピングし、2013年マンガマトリックスを作っていきます。昨年愛されたマンガの傾向が一目でわかり、これから流行る一冊も見えてくるーそんな一枚をみんなで作り上げてみませんか?

マンガマトリックスの例

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そして、読書会後の懇親会では、久しぶりにマンガ飯が登場予定です。
※フードの一部にマンガに登場したメニューを再現

フード担当 ヒラトコセイジ

新しいマンガに出会いたい方から、ヘビーリーダーの方まで、マンガを介して気軽にコミュニケーションが生まれ、新しいマンガに出会えるイベントです。みなさまのご参加をお待ちしております。

※過去のイベントの様子はこちらから

概要

【マンガナイト読書会―マンガマッピング編】

内容
2013年のおすすめマンガについてブレストし、世界に一つだけのマンガマトリックスを作る
日時
2014年3月29日(土)17:30(開場17:00)~22:00 ※ 20:00~懇親会
持ち物
「2013年に読んで面白かったマンガ本」1冊〜数冊。2013年発行のものでなくても構いません。
参加料
読書会 1,000円(ソフトドリンク付き)
懇親会 2,500円(フード&1ドリンク)
定員
15名程度(事前予約制)
会場
レインボーバード(スタジオスペース)
文京区小石川2-1-13後楽園ビューハイツ703
後楽園駅・春日駅6番出口徒歩2分

新たなマンガの生まれる場所

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「マンガを描く人はみな、漫画家である」。マンガ好きは当たり前のようにこう考える。だが、マンガという表現はもはやマンガ家だけのものではない。アニメーターやイラストレーターなど幅広い表現者が自分の表現したいことに適した手法としてマンガを選ぶ時代なのだ。その動きを垣間見せるのが、「3331Arts Chiyoda」で開催中の「タマグラアニメとマンガ博」(3月9日まで)だ。元学校という空間に登場したマンガ作品は、書店で流通する作品とは違った魅力を見せ、マンガとは何かを考えさせてくれる。

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飾りつけは学園祭風

「タマグラ」とは多摩美術大学グラフィックデザイン学科のこと。卒業生に個性的な短編アニメーションの作家が多いことで有名だ。今回はこのタマグラを卒業しアニメーションを作りながら、マンガも描く新旧幅広い世代6人が集まった。(そのため隣の部屋では、のアニメ作品も放映。同じ人が作る、マンガとアニメという似て非なる表現を見比べてみるのもおもしろい)

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同じクリエイターのアニメーションも上映

元教室の会場に一歩はいると、壁全体に大判で印刷された6つのマンガ作品。これらはすべて今回のための書き下ろしだ。教室の奥にはそれぞれのキャラクターの立体像が並ぶ。元学校という環境とあいまって、レベルの高い学園祭にきた気分になる。

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元教室の会場でマンガを読む

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会場ではタマグラ卒業生の作品を実際に読むことができる

展示されている作品の、テーマや絵柄は6者6様だ。

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壁にはられた作品を読むという楽しさも

マンガ愛好家にとっつきやすいのは、クリハラタカシ氏の「夏の怪獣」などだろう。すらりとした線の絵でちょっとシュールな物語が展開されている。杉崎貴史氏の「亀」もデフォルメされたキャラクターが動き回るコメディタッチの作品で、手塚治虫氏や杉浦茂氏を彷彿とさせる。本人も子供の頃、手塚治虫氏や水木しげる氏の作品を読んで育ったという。

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クリハラタカシ氏の「夏の怪獣」

アーティストとして活躍する近藤聡乃氏の「さようなら」は男女関係がテーマ。繊細な線の絵柄からはひりひりと女性の葛藤が伝わってくる。

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近藤聡乃氏「さようなら」

しかし、いつもの紙の雑誌や単行本のマンガを読むつもりで作品に向き合うと、少し戸惑うかもしれないものもある。

たとえば久野遥子氏の「神の兄弟」。コマの時間の流れがすごく独特で、何度もコマとコマを行き来して、時間の流れを確認してしまった。

あるいは短編アニメーション「つみきのいえ」の手がけた加藤久仁生氏の「ともまち」。ひとつひとつの絵は絵本のようなのに、コマはきちんと時間を切り取っていて、時と場所の変化を感じさせた。しかもシャープペンシルと墨で描いたという。

みる順番は自由なので、かしこまらず自分の好みにあうものから楽しむのがいいだろう。

彼らにとってマンガとは何か。これに答えてくれたのが「歯クション大銀河」を発表したぬQ氏だ。

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ぬQ氏「歯クション大銀河」

アニメを作り、イラストもマンガもかくぬQ氏曰く「マンガは言葉のかけあいがおもしろい話を短くまとめるのに向いている」とのこと。確かにぬQさんが今回発表した作品も、アニメーションでは言葉が流れていってしまうし、イラストにしてしまうと言葉の掛け合いのおもしろさが見えてこない。

「ともまち」を発表した加藤さんも「動きで楽しませるアニメーションに対し、マンガは『止』を見せるよさがある」と話す。

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オープニングには多くの人が集まった

「マンガ表現はもはやマンガ家だけのものではない」-――不器用な人間は、自分の考えや世界を表現する方法はひとつだと限定してしまいがち。だが今回の6人は、アニメーション、マンガ、そしてイラストレーションというそれぞれの表現を自在に選択し始めているようにみえる。日本にマンガという表現が根付いた証でもあるだろう。

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会場外には落書きスペース

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会場外にも展示が

マンガ家以外がマンガを描き始め、マンガを描くことが、「文字を書く」「絵を描く」ことと同じぐらい一般的な表現方法になったとき、マンガはなにが表現できるのか。そこからどんな作品が生まれてくるのか楽しみだ。(bookish)

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会場は大学が卒業生のために借りたギャラリー
「タマグラアニメとマンガ博」概要
http://akibatamabi21.com/exhibition/
日程
2月1日(土)~3月9日(日)、火曜日は休み
開場時間
12:00~19:00(金・土は20:00まで)
会場
3331Arts Chiyoda 201・202(千代田区外神田6-11-14)

正解を模索する曖昧な往来

大今良時氏にとって初のオリジナル作品『聲の形』(週刊少年マガジンに連載中)。小学6年生の主人公・石田将也のクラスに聴覚に障害をもつ西宮硝子が転校してくるところから始まるこの物語は、“曖昧な往来”がマンガの世界を超えてこちら側の現実に飛び込んでくる。

子どもの将也にとって耳の聞こえない硝子は異星人そのもので、彼女の私物を捨てても、大声で悪口を言っても、何ら罪悪感を感じることもない。クラスメイトも将也に同調し行動はエスカレートしていくが、最終的に将也のほうがいじめられる側になってしまい小学校生活は暗澹たるものになる。一方で硝子は転校してしまい、後悔や懺悔も伝える術もないまま将也の鬱々とした時代が始まってしまう。

時に硝子の母親にビンタをくらいながら、時に誰かの手によって停学に陥れられながらも心のうちにあるものを行動にうつし、目に見えるように「聲」が聞こえない相手に届けるためにひたすら悩みあがく、見えないものを形にしていくことがこの『聲の形』というタイトルにつながっていくのだと思う。

だが同じくして、将也は久々にできた高校の友人・永束にこう質問している。「“友達の定義”って何かわかる?」。これに対し永束は、それは定義づけないといけないものなのか? 友情は言葉や理屈を超えたところにあると思う、とハッキリと答えた。

物語はこれまで相手に何かを届けるためにどんなに鞭打たれても行動していく姿を描いていたが、ここで「言葉や理屈を超えたところ」という、将也のそれまでを全否定といってもいいシーンを描いている。硝子に近づいてもいいのか、その資格があるのか、再び将也の行動原理はぐらつく。ぐらつきながらも、おそるおそる硝子に近づいていく。

何が正解か明快なものが存在しない中で「やっぱりこっちが正解なのか?」「自分は間違っていたんじゃないのか?」と、行ったり来たり悩みながら変化していく将也の“曖昧な往来”。ヒーローのように正義の鉄槌を下すこともなく、ライバルを打ちのめすこともなく、ひたすら迷い続けるこの姿こそが現実世界に生きる人間にリアルさを感じさせ、目が話せなくなってしまうのだ。

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文=川俣綾加
1984年生まれ福岡県出身。フリーライター、猫飼い。岡田モフリシャス名義で「小雪の怒ってなどいない!!」を「いぬのきもち ねこのきもち WEB MAGAZINE」にて連載中。ライターとしてのジャンルは漫画、アニメ、デザインなど。冒険も恋愛もホラーもSFも雑多に好きですが最終的になんとなく落ち着くのは笑える作品。人生の書は岡田あーみん作品とCLAMP作品です。個人ブログ「自分です。

原典へと誘う“キャラクター化”の効果

2月も終盤に入り、受験シーズンが大詰めを迎えている。試験までに多くの知識を身につけなくてはならない学生、教養や社会常識が問われる社会人ーーいつになっても「知識の習得」から人は逃れることはできない。その習得をエンターテインメントにするのが、「キャラクター化」だ。教養などの知識が自分になじみ深い方向に引き寄せられており、知れば知るほど楽しさが増すーー。キャラクター化はそんな好循環を生み出している。

文豪をキャラクター化した作品『文豪ストレイドックス』(原作=朝霧カフカ、漫画=春河35、KADOKAWA、ヤングエース連載中)もその1つだ。芥川龍之介ら有名な作家をモチーフにした登場人物が、敵と味方に分かれ、超能力を駆使して闘うファンタジーである。

この作品の肝は、人物造形の面白さだ。登場する多くのキャラクターの場合、容姿は今の読者にウケがいい造形だが、性格や超能力は、作家の残したエピソードや代表作を意識している。

例えば主人公の「中島敦」。名前は歴史上の文豪の本名そのものだが、容姿は華奢な美少年となっており、残されている作家の写真とは印象が異なる。他の文豪もほぼ同様の扱いで、中には性別が変わっているキャラクターもいる。一方で彼らの性格や超能力には、作家本人の個性や代表作が反映されている。「太宰治」は自殺愛好家であり、「谷崎潤一郎」の能力名は「細雪」、というように。

このようなキャラクター化された作家による物語を通じて、読者はキャラクターを通じて、作家そのものに親しみを覚えるようになる。自分にとって遠い存在だった作家達が一気に身近な存在になるのだ。たとえそれぞれの作品を読んだことがない人でも自然と作家本人についての知識が頭に入ってくる。その結果、「本当にこんな人だったのか」「どんな作品なのか」とオリジナルに興味を引かれるようになる。

もちろんもともと文学史や作家に関心があった人の楽しみはより大きい。次はどの作家が登場するのか、どんな名前の必殺技が飛び出すのか、その必殺技はどんな効力があるのか―先の読めないストーリー展開に加えてこんな予想ができるからだ。文学の知識があればあるほど、その楽しみは無限に増えていく。

知識重視の勉強に代表される「知識の習得」の苦痛の悪影響のひとつは、その苦痛によって知識そのものが嫌いになってしまうことだ。このアレルギーを乗り越える方法のひとつとして、キャラクター化は有効なのだ。

既存のものにキャラクターという新たな名前と形を与え、関係性を生み出して、物語を作っていく試み。これは意外に日本社会に浸透している。例えば2013年から話題沸騰中の「艦隊これくしょん」。日本の戦艦を萌え擬人化したキャラクターを使ったゲームを通じて、戦艦名が自然と頭に入ってきた人も多いのではないだろうか。これまでも元素記号や世界各国の擬人化・キャラクター化した作品が登場している。必ずしも万人向けではないかもしれないが、自分の感性に合えば、知識の吸収を助ける。今後も様々な分野で作品が増えていくだろう。

『文豪ストレイドックス』では、発売中の3巻で早くも海外の文豪が登場。現時点では直接ストーリーとは絡んでいないが、綾辻行人、京極夏彦、そして『ダヴィンチ・コード』で有名なダン・ブラウンなど存命の作家もキャラクター化されている。この作品が、今後もファンを広げながら多くの読者の興味をオリジナルの文学にも引き付けてくれることを願ってやまない。

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起業家、投資家、ハッカー。現実に肉薄する描写

フィクション、特にマンガの昔からの役割に、経験できない世界を見せるという役割がある。さだやす『王様達のヴァイキング』(深見真ストーリー協力、週刊ビッグコミックスピリッツで連載中)は、普通の人がなかなか経験しにくい起業や事業たちあげの瞬間を冒険物語ととらえ、私たちに疑似体験させてくれる一作だ。

タイトルにある「王様達」の一人であろう登場人物の是枝一希は、高校中退。パソコン・プログラミングだけが世界とつながるツールという人物。もう一人の坂井大介は個人の資金やノウハウ、ネットワークを提供し、企業を支援するエンジェル投資家だ。この二人が出会い、ハッカーの力でネットセキュリティ分野の新規事業を立ち上げていく。

これまでも起業家を取り上げたマンガはあったが、多くが成功した起業家の一代記。だが本作は、綿密な取材を元に、事業を見つけるところや起業に対する社会の反応を組み込みながら、その工程を魅力的な物語に仕立てている。「今から俺とコーヒーミーティングでも」などキャラクターの細かな台詞にも今の起業カルチャーが反映されている。

このように魅力ある物語になるのは、起業・新規事業立ち上げがまさに冒険そのものだからだ。
海のように広大な市場への挑戦であり、けして一人ではできない。時には波のような周囲からの反発もうけつつ、それでもできるか――経済活性化に起業や新規事業が求められる風潮で、普通の生活からは想像しにくい世界を、フィクションを使いながら読者にこう訴えかけているのだ。

さらにおもしろいのは、起業家・投資家をダークヒーローとして描いていること。ダークヒーローは古くは手塚治虫氏のブラック・ジャックなど「ヒーローだが社会からなかなか理解されない。でも傍に必ず一人は認めてくれる人がいる」存在。もちろん現実世界の起業家がすべてダークヒーローというわけではないが、最初の理解者が少ないという点では起業家をこの系譜に位置づけたい。本作でも是枝や坂井には当初理解者が少なく、既得権益者からは懐疑的な目でみられる。是枝や坂井も、行動と技術で徐々に「味方」(例えば顧客)を見つけていくことになるのだろう。

起業や新規事業の成功率は非常に低く、全員が簡単にできるわけではない。だが未知の文化への扉となり、読者をわくわくさせてあこがれを抱かせる――作られた物語というコンテンツが担う役割を改めて実感させてくれる。

(bookish)

文=bookish
1981年生まれ。「ドラえもん」「ブラック・ジャック」から「週刊少年ジャンプ」へと順当なまんが道を邁進。途中で「りぼん」「なかよし」「マーガレット」も加わりました。主食はいまでも少年マンガですが、おもしろければどんなジャンルも読むので常におもしろい作品を募集。歴史や壮大な物語をベースにしたマンガが好み。マンガ評論を勉強中。マンガナイト内では「STUDIOVOICE」のコラムなど書き物担当になっています。マンガ以外の趣味は、読書に舞台鑑賞。最近はサイクリングも。

SNS以降、人間関係の着地点はどこにあるのか

「コミュニケーションが大切」「会話で人間関係の構築を」ーーそうはいわれても、多様な価値観が広がり、コミュニケーションツールが複雑になる現代社会では、コミュニケーションそのものが一筋縄ではいかない。これを実感させてくれるのが、大瑛ユキオ「ケンガイ」(「月刊!スピリッツ」連載中)だ。

主人公の伊賀(23)は就活を戦線離脱してレンタルビデオ店でアルバイト中。同じ職場の女性・白川(24)が気になり始める。しかし白川は、伊賀のアルバイト仲間内で「あいつはないわ(=恋愛対象の圏外)」とされている女性。伊賀は仲間に評価されないという理由で声をかけられず、伊賀は「ケンガイみたいな扱いを受けるのはよくないことだからきちんと話し合って解決しよう」と白川に働き掛ける。

しかし白川はバイト仲間からの評価を気にしない。さらに考えを押し付けてくる伊賀の接触を遮断しようとする。そして「ケンガイな白川に構うと下の立場になるからやめなよ」という同調圧力をかけてくるバイト仲間ーーそれぞれが己の「人間関係の作り方」「コミュニケーションのやり方」が正しいと考えており、溝が埋まる気配は見えない。

話しあったり気持ちを伝え続けたり、「努力すれば気持ちが通じる」というマンガが多い中、『ケンガイ』には本当に分かり合えない人も世の中にはいるかもしれないと思わせるところが肝だ。

これを読者がリアルに感じるのは、特に20代がこの「分かり合えない」現実に直面しているからだ。SNSを通じて日常や交友関係が丸見えになり、「この人はこういう人」というイメージが勝手に形成される。「自分は他人からどうみえているのだろうか」と意識する人も増えている。その中に、どう見られようが気にしない人、「常識」を重んじる人が交じり合う。コミュニケーションツールの増加で、表面的には人間関係を築いているようにみえて、本質的には溝があるーーこのような状況を日々実感するのが今の若者なのだ。

世代、性別、生活環境などの違いで価値観が理解できない人が交じり合う状況は変わらない。その中で、隣にいる理解できない人たちの人間関係の着地点はあるのだろうか。
(kukurer)

熱気を帯びつつあるアナログゲーム界隈

ハイカルチャーの条件とは何だろうか。
伝統があり、議論や評価をする場が整っており、嗜むのにそれなりの財政的な負担を覚悟する… 少し考えただけでもいくつか条件が想い浮かぶ。

ハイカルチャーとローカルチャーは時代とともに流動する側面も持つ。例えば、マンガは幅広い層の人が手に取り、近年は随分議論する場も揃ってきている。善し悪しは別として学問として学ぶ場も増えてきていることから次第にローカルチャーから離陸しつつあるのが実情だといえる。

すでにハイカルチャーとされる歌舞伎も、もとをたどれば戦国時代に派手で異形の装束をまとう荒くれ者(傾く者=かぶくもの)の姿を真似、型破りの舞を踊ったところから始まった。江戸時代には庶民が楽しむ大衆演芸的要素が強かったとされ、重要無形文化財に認定されたのは1965年と意外に最近のことだ。同じく、茶道も戦場に向かう武士たちがひとときの静けさを得たり、宴会の一部として行われたりしていたものを、豊臣秀吉が武将の嗜みとして一気にハイカルチャーに引き上げたというのは有名な話であるし、近年ではサッカーがJリーグ発足により、野球をしのぐような国民的スポーツに成長したことなども好例といえよう。

そんな文化としての様相について意識させられるマンガが、中道裕大『放課後さいころ倶楽部』(小学館、『ゲッサン』連載)である。

主人公、武笠美紀はクラスでもあまり人との関わりを持とうとしない控えめな高校生。そんな彼女が、転校してきた好奇心おう盛なクラスメイト、高屋敷綾の登場により「ドイツゲーム」として近年知名度を高めてきた海外のアナログゲームの世界にのめり込んでいくストーリーだ。しかし、この二人はゲーム初心者。二人とゲームを結びつけるには、クラス委員長として学校で完璧な姿を演じながらも、兄の影響で小学生のときからそれらに親しんできた、大野翠の存在が欠かせない。

構成は基本一話完結。各話ごとに海外のアナログゲームを主人公たちがプレイし、その面白さを伝えるものだ。ただ、それだけであればゲームの宣伝マンガになってしまうが、本作ではゲームをプレイする側からの視点だけでなく、作る側からの視点も交え語っている点が大きく異なる。

誰もが楽しみ、繰り返しプレイする事ができるゲームを設計するためにどんな工夫がされているのか。どうやって可能な限りシンプルな構成で奥深い世界観を作っていくのか。さらに言ってしまえばゲームを介して人々を幸せにできるのか・・・。ゲームをプレイする中で、美紀と綾はそこに込められた作家の意図に気付いていく。それに対し、ゲームに精通している翠や彼女のアルバイト先『さいころ倶楽部』の店長がそれぞれのゲームが作られたエピソードを紹介する。中でも力を入れて解説されているのは、アナログゲームの地位を立派に文化として語られるステージにまで高めようと努力した、ゲーム作家たちの努力である。店長が言う。

「ドイツではゲームの作り手を『作家』と呼ぶ。ほら、どのパッケージにも作者の名前が書かれているだろう?『小説家』や『漫画家』と同じように、ドイツゲームは『ゲーム作家』が誇りを持って創り出しているんだ」

わずか50年前までは作品、作家という認識を持たれていなかったアナログゲームの地位を、アレックス・ランドルフをはじめとする作家たちは絶え間ない努力で、正統なカルチャーとして認知される位置まで押し上げたのだ。

同じようにマンガやアニメといった海外からクールと賞される日本文化も、登場から長い年月をかけてようやく一般化した。アナログゲームはヨーロッパでは広く認知されているが、日本ではまだ一部愛好者が嗜むという認識が強い。今後、こうしたゲームが広く楽しまれるようになるためには、先に挙げたいくつかの条件をいかにしてクリアしていくかというハードルが存在する。

だが、こうした文化の定着過程をただ傍観するのはもったいなくはないだろうか。是非、本作を読まれて「こんなに面白い世界があるのか」と感じられるのであれば、アナログゲームの楽しさを体感し、広める側に参加してみてほしい。実際、アナログゲーム人気の高まりを受け、ボードゲームカフェと呼ばれる空間が全国に生まれてきているし、専門店も増えてきているのだ。私たちが文化に押し上げる側にまわるための土壌もまた整えられてきている。

『放課後さいころ倶楽部』はそんな熱気を帯びつつあるアナログゲーム界隈の楽しさを伝えるだけでなく、ローカルチャーがハイカルチャーに昇華するうねりを感じさせる魅力的なマンガだといえよう。

文=いけだこういち
1975年、東京生まれ。マンガナイト執筆班 兼 みちのく営業所長。好きなジャンルは少女マンガ。谷川史子、志村貴子作品をマイ国宝に指定している。日々、大蔵省(妻)の厳しい監査(在庫調整)を受けながらマンガを買い続ける研究者系ライター。どうぞごひいきに。

マンガ家向け確定申告講習会2014@東京~原稿に集中するための税務・節税対策

【出演】1月29日(水)19:00~21:30開催「マンガ家向け確定申告講習会2014@東京~原稿に集中するための税務・節税対策」(主催:トキワ荘プロジェクト)に代表 山内康裕が登壇します。「マンガ家の確定申告」や「マンガ家の法人化」などについての講習会になっています。今年のテーマは、平成26年4月からの消費税8%への対応です。詳細はこちらをご覧ください。

サービスエリアという「一期一会」の楽しみ

年末年始の帰省ラッシュが近づいてきた。ニュースで渋滞が取り上げられるのが風物詩ともなっている高速道路。その高速道路で巨大テーマパーク並みの集客力を誇る、サービスエリア(SA)を舞台としたのが、末広有行『ドライブご飯 SAグルメ日記』(『週刊漫画TIMES』連載中)だ。

主人公に引っ越し業者の若者と中年の男性コンビを据え、行く先々の「ご当地グルメ」を堪能させる。会社で待つ事務の女性や子どもに、スイーツなどのお土産を買って帰るのが基本の流れだ。連載のスタートは2009年12月。グルメ漫画には料理人が作る過程や、対決をメーンにした作品が多かった中で、実在する施設を題材とした「消費行動」を楽しませてくれるのは新鮮な切り口だった。

SAは、もはやトイレ休憩だけの施設ではない。2012年4月に静岡県で開通した新東名高速では、7カ所あるSAの年間立ち寄り人数が3700万人で、利用者の4割が40分以上滞在したという(NEXCO 中日本公表)。集客数日本一の東京ディズニーランドの入場者数は2750万人(『月刊レジャー産業資料』13年8月公表)だから、商業規模は侮れない。

本作の特徴としては他に、料理やお土産を紹介するコマの大きさが挙げられる。1つの商品がページの半分以上を占め、材料や特色をしっかり書き込んでおり、グルメ漫画としては重要な「シズル感」が満載だ。

ただ、ガイドブックとは違い、商品の「値段」がほとんど記されていない。そこには、SAグルメは商品の入れ替えが激しいことに加え、通りかかった時に季節や流行を味わう「一期一会」の面白さがあると訴えている思いが感じられる。

この作品、初めてまとまったのは12年9月発売のコンビニコミック(ペーパーバック)だ。単行本1巻の発売は13年5月と、非常に間が空いている。作者自身も1巻の巻末で「ココまで長かったですね」と主人公に語らせている。なぜそんな経緯をたどったのだろう。

SAは普通、通過点であり、旅や移動のおまけだ。そのおまけを主題にした本作の立ち位置は、当初手探りだったのではないか。しかし、昨今の節約志向からプチ贅沢に消費動向が変わる中、非日常のSAでの消費行動は、一つの目的として定着してきた。本作は、そんなSAの価値向上とともに見直され、単行本化を果たしたのではないか。2巻の巻末でも「次が出るか分からない」となっているが、時代を彩る作品としてぜひとも続刊を残してほしい。

(029*83)

schoo「マンガで読み解く現代社会学」配信

【出演】2013年1月16日(木)21:00~22:00、ネットで受講できる無料授業を配信している「schoo」にて、代表山内康裕が「マンガで読み解く現代社会学」の先生をやります。

BEST of 2013 #4:マンガナイトセレクトの海外にも紹介したい漫画10選

こちらのコンテンツは、PingMagからの許諾を得ての転載となります。
元ページの記事はこちら。元ページの英文翻訳記事はこちら

もはや現代の日本を語る上で欠かすことの出来ないものとなった漫画。当然、日本の一年間を振り返ろうとした時にも漫画という要素は外せない!ということで、PingMagで、いつもマンガに関しての記事を執筆していくれているマンガナイトのメンバーに、この2013年で一番印象に残った漫画作品を聞いてみました!

今回は特別にPingMagに合わせて「絵や表現の素晴らしさ」や「日本文化を感じることができる」といった観点から、特に海外の方にも紹介したいと思った漫画を、マンガナイトのメンバーがそれぞれ1作品づつ計10作品選んでくれました。

2013年に印象に残った漫画を教えてください!

『青い鱗と砂の街』小森羊仔

非常に繊細で素晴らしく可愛らしい登場人物達。メルメンな絵本と少女マンガの中間に立つような雰囲気だ。しかし、この作品が際立っているのはキャラクターの存在に過度に依存せず、背景を密に描き込み、生活感や地域感を演出しているところにある。独特の温度で構成された風景は、記憶をたどり人魚を求めるファンタジーの部分と、引っ越しを機に始まる父親との二人暮らし、転校先の学校でのやりとりという二つの部分を違和感なく縫い合わせる役目を果たしている。この作家、この作品でしか味わえない世界観がここにはあるのだ。(いけだこういち)

『アノネ、』今日マチ子

10代の頃、『アンネの日記』を読み終えた夜にみた夢を、そのまま具象化されたような気がした。余白の多い、あっさりとしたシンプルな絵柄。『我が闘争』を彷彿とさせるような赤と黒の装丁。物語は隠れ家から収容所までの一連の流れと、アドルフとアンネを想起させる「太郎」と「花子」の閉ざされた空間におけるつかの間の交歓のあいだを行き来する。まだのびしろの大きい時期ゆえの夢見がちな伸びやかさと、親の呪縛から逃れられない閉塞感に、人の痛みが分からないがための残酷さ。ここで本質的に語られているのは思春期であり、社会情勢の変化などそのスパイスに過ぎない。少女の中に広がる心象風景そのもののような作品だ。(洛中洛外)

『月影ベイベ』小玉ユキ

伝統芸能の民謡と踊り「おわら」を守り伝える町を舞台に、恋や友情、秘密が描かれている作品。みずみずしい方言や古い町家の家並みなど、富山県八尾地域の特色が随所に見られ、日本情緒が堪能できる。装丁も凝っており、カバー裏にはおわら節の歌詞が美しくデザインされている。小物による描写も巧みで、例えば踊りに使う菅笠が舞い手の表情を隠し、ドラマをよりミステリアスに見せている。また、主人公の叔父が予期せぬ出会いに際し思わずこぼすコーヒーや、恋するヒロインが食べるサンドウィッチなど、フードを絡めた描写も印象深い。ただの「ボーイ・ミーツ・ガール」ではないこの作品、今後どうなっていくか楽しみなマンガである。(kuu)

『文豪の食彩』原作:壬生篤、作画:本庄敬

有名人の通う店やお取り寄せは「この人ならば、きっと良いものを食べているはず」という期待で人気のコンテンツだ。ステルス・マーケティングという手法が横行する今でさえ、あこがれの人と同じ空間や味を感じたい、という人は多いだろう。本作は、太宰治に芥川龍之介、永井荷風といった、明治以降の文豪の食生活を題材にした珍しい切り口の作品。わずか100年ほど前の国民的作家が、どんなものを食べていたかを、垣間見ることができる。現存の店も多く、足跡をたどるのも面白い。何よりも、写真では小難しい顔が多い文豪の「嬉しそうに食事する姿」を目にできるのが、マンガの醍醐味とも言える。夏目漱石、正岡子規、樋口一葉も登場。(029*83)

『その男、甘党につき』えすとえむ

フランスでは谷口ジローの漫画が高く評価されている。その理由は過度な装飾が少なく写実的でバンドデシネに近いからだろう。その系譜としてえすとえむを紹介したい。基本的には写実的な絵で大人の恋愛群像劇を描いているが、時々、写実的な絵でシュールなギャグを描く。この作品も、パリに住むやり手弁護士、ジャン=ルイ。一見完璧な紳士に見える彼の大好物はチョコレート——と言った内容である。表紙も紳士がスーツの内ポケットに好物のチョコレートを隠し持つというミスマッチのおかしさを表現している。また、半透明なカバー紙、金色の箔オビ、遊び紙の模様。全て市販チョコレートのパッケージに似せるなど装丁にもこだわり抜いた作品である。(太田和成)

『かげきしょうじょ』斉木久美子

2013年は間違いなく「自分の夢に向かって切磋琢磨しながら成長する」少女たちがメディアでよく活躍した一年だった。本書は表紙こそユニコーンが出てきそうなくらいパステルカラーで原宿カワイイを彷彿とさせるデザインとなっているが、歌劇団養成学校を舞台に一生懸命な天真爛漫な女の子と、やる気がない元アイドルの女の子が、ぶつかりながらトップを目指して成長していく青春物語である。どんなシーンにも10代ならではのキラキラしたひたむきさや純真さが画面から伝わってくる点は現在の少女たちそのものだ。かげきしょうじょたちの成長と今年活躍した少女たちを重ねあわせて一年を振り返ってみても面白いかもしれない。(kukurer)

『僕は問題ありません』宮崎夏次系

やっぱり、天才です。絵も、タイトルも、セリフも、ディテールも、全体も秀逸。宮崎さんにしか出せない、独自の世界観に心ゆくまで没入してください。気持ちいいですよ。内容は、一言でいうと、たぶん、大きな愛についての話です。(イワサキユミ)

『さよならソルシエ』穂積

オランダ出身の画家、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホとその弟、テオドルス・ヴァン・ゴッホ。この2人の生きざまを、「絵画のよう」といいたい絵柄で描いた作品。ヴィンセントは「ひまわり」など後生に残る作品がありながら、生前には評価されず。弟のテオドルスも、「兄の生活を支えた」としか伝えられていない。そうした通説を元に、「実はこうだったのでは」と大胆な解釈でフィクションを作り上げ、圧倒的な物語として読ませている。同時に働くということについても考えさせられる。弟のテオドルスは作品中、「画家になりたくてなれなかったもの」と描かれる。自分より才能のあふれる人の隣で生きていくとき、人はどのような闇を抱えるのか。またそのなかでもどうすれば居場所を作り上げることができるのかー対照的な兄弟の姿を通じて作者は訴えてくるのだ。(bookish)

『めしばな刑事タチバナ』原作:坂戸佐兵衛、作画:旅井とり

空気系グルメマンガの極北。いかにも仕事のできなそうな刑事たちが、実在のチェーン店、弁当、スナックなどのB級グルメについて、こだわりとウンチクを語りまくる! 首都圏だけの話に終わらず、地方独自の店舗や文化までフォローしているのが凄いと思う。ここまでファストフードに詳しい原作者は何者?(本多正徳)

『ましろのおと』羅川真里茂

天才津軽三味線奏者の血を受け継ぐ少年。彼は才能に恵まれながらも、純粋な性格が災いして、外の世界に出ようとはしない。彼の純粋な性格や才能に惚れ集まってくる人たちに影響を受け、しだいに社会と交わり成長していく作品です。少年の成長を促すのは、子供からお婆さんまでのさまざまな女性たち。様々な角度から引っ張られて、助けられ成長していく少年の姿をみると、男性はどんな立場や年齢の女性にも心を動かされてしまうのだなと感じます。(山内康裕)

最後に、2014年にはこれが注目!という漫画や、漫画界でのムーブメントがあれば教えてもらえますか?

マンガ表現の拡張という視点から、「音」に着目して活動している二者の今後の展開に期待したい。一つは新しい電子コミックスの可能性に挑戦している漫画元気発動計画主催「Domix」。漫画家集団が主導で制作している音声付の電子コミックスは、アニメとは違う系譜でのマンガの進化の可能性を秘めている。

一方、アナログという観点から、ミエルレコードwithOTOWA「紙巻きオルゴール漫画」にも注目だ。オルゴールの音源となる紙自体がマンガになっており、手巻きで音を鳴らすと同時にマンガのコマも現れるという仕組みは、音楽を聴くスピードとマンガを読むスピードを一致させるという意味で画期的である。