BEST of 2013 #4:マンガナイトセレクトの海外にも紹介したい漫画10選

こちらのコンテンツは、PingMagからの許諾を得ての転載となります。
元ページの記事はこちら。元ページの英文翻訳記事はこちら

もはや現代の日本を語る上で欠かすことの出来ないものとなった漫画。当然、日本の一年間を振り返ろうとした時にも漫画という要素は外せない!ということで、PingMagで、いつもマンガに関しての記事を執筆していくれているマンガナイトのメンバーに、この2013年で一番印象に残った漫画作品を聞いてみました!

今回は特別にPingMagに合わせて「絵や表現の素晴らしさ」や「日本文化を感じることができる」といった観点から、特に海外の方にも紹介したいと思った漫画を、マンガナイトのメンバーがそれぞれ1作品づつ計10作品選んでくれました。

2013年に印象に残った漫画を教えてください!

『青い鱗と砂の街』小森羊仔

非常に繊細で素晴らしく可愛らしい登場人物達。メルメンな絵本と少女マンガの中間に立つような雰囲気だ。しかし、この作品が際立っているのはキャラクターの存在に過度に依存せず、背景を密に描き込み、生活感や地域感を演出しているところにある。独特の温度で構成された風景は、記憶をたどり人魚を求めるファンタジーの部分と、引っ越しを機に始まる父親との二人暮らし、転校先の学校でのやりとりという二つの部分を違和感なく縫い合わせる役目を果たしている。この作家、この作品でしか味わえない世界観がここにはあるのだ。(いけだこういち)

『アノネ、』今日マチ子

10代の頃、『アンネの日記』を読み終えた夜にみた夢を、そのまま具象化されたような気がした。余白の多い、あっさりとしたシンプルな絵柄。『我が闘争』を彷彿とさせるような赤と黒の装丁。物語は隠れ家から収容所までの一連の流れと、アドルフとアンネを想起させる「太郎」と「花子」の閉ざされた空間におけるつかの間の交歓のあいだを行き来する。まだのびしろの大きい時期ゆえの夢見がちな伸びやかさと、親の呪縛から逃れられない閉塞感に、人の痛みが分からないがための残酷さ。ここで本質的に語られているのは思春期であり、社会情勢の変化などそのスパイスに過ぎない。少女の中に広がる心象風景そのもののような作品だ。(洛中洛外)

『月影ベイベ』小玉ユキ

伝統芸能の民謡と踊り「おわら」を守り伝える町を舞台に、恋や友情、秘密が描かれている作品。みずみずしい方言や古い町家の家並みなど、富山県八尾地域の特色が随所に見られ、日本情緒が堪能できる。装丁も凝っており、カバー裏にはおわら節の歌詞が美しくデザインされている。小物による描写も巧みで、例えば踊りに使う菅笠が舞い手の表情を隠し、ドラマをよりミステリアスに見せている。また、主人公の叔父が予期せぬ出会いに際し思わずこぼすコーヒーや、恋するヒロインが食べるサンドウィッチなど、フードを絡めた描写も印象深い。ただの「ボーイ・ミーツ・ガール」ではないこの作品、今後どうなっていくか楽しみなマンガである。(kuu)

『文豪の食彩』原作:壬生篤、作画:本庄敬

有名人の通う店やお取り寄せは「この人ならば、きっと良いものを食べているはず」という期待で人気のコンテンツだ。ステルス・マーケティングという手法が横行する今でさえ、あこがれの人と同じ空間や味を感じたい、という人は多いだろう。本作は、太宰治に芥川龍之介、永井荷風といった、明治以降の文豪の食生活を題材にした珍しい切り口の作品。わずか100年ほど前の国民的作家が、どんなものを食べていたかを、垣間見ることができる。現存の店も多く、足跡をたどるのも面白い。何よりも、写真では小難しい顔が多い文豪の「嬉しそうに食事する姿」を目にできるのが、マンガの醍醐味とも言える。夏目漱石、正岡子規、樋口一葉も登場。(029*83)

『その男、甘党につき』えすとえむ

フランスでは谷口ジローの漫画が高く評価されている。その理由は過度な装飾が少なく写実的でバンドデシネに近いからだろう。その系譜としてえすとえむを紹介したい。基本的には写実的な絵で大人の恋愛群像劇を描いているが、時々、写実的な絵でシュールなギャグを描く。この作品も、パリに住むやり手弁護士、ジャン=ルイ。一見完璧な紳士に見える彼の大好物はチョコレート——と言った内容である。表紙も紳士がスーツの内ポケットに好物のチョコレートを隠し持つというミスマッチのおかしさを表現している。また、半透明なカバー紙、金色の箔オビ、遊び紙の模様。全て市販チョコレートのパッケージに似せるなど装丁にもこだわり抜いた作品である。(太田和成)

『かげきしょうじょ』斉木久美子

2013年は間違いなく「自分の夢に向かって切磋琢磨しながら成長する」少女たちがメディアでよく活躍した一年だった。本書は表紙こそユニコーンが出てきそうなくらいパステルカラーで原宿カワイイを彷彿とさせるデザインとなっているが、歌劇団養成学校を舞台に一生懸命な天真爛漫な女の子と、やる気がない元アイドルの女の子が、ぶつかりながらトップを目指して成長していく青春物語である。どんなシーンにも10代ならではのキラキラしたひたむきさや純真さが画面から伝わってくる点は現在の少女たちそのものだ。かげきしょうじょたちの成長と今年活躍した少女たちを重ねあわせて一年を振り返ってみても面白いかもしれない。(kukurer)

『僕は問題ありません』宮崎夏次系

やっぱり、天才です。絵も、タイトルも、セリフも、ディテールも、全体も秀逸。宮崎さんにしか出せない、独自の世界観に心ゆくまで没入してください。気持ちいいですよ。内容は、一言でいうと、たぶん、大きな愛についての話です。(イワサキユミ)

『さよならソルシエ』穂積

オランダ出身の画家、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホとその弟、テオドルス・ヴァン・ゴッホ。この2人の生きざまを、「絵画のよう」といいたい絵柄で描いた作品。ヴィンセントは「ひまわり」など後生に残る作品がありながら、生前には評価されず。弟のテオドルスも、「兄の生活を支えた」としか伝えられていない。そうした通説を元に、「実はこうだったのでは」と大胆な解釈でフィクションを作り上げ、圧倒的な物語として読ませている。同時に働くということについても考えさせられる。弟のテオドルスは作品中、「画家になりたくてなれなかったもの」と描かれる。自分より才能のあふれる人の隣で生きていくとき、人はどのような闇を抱えるのか。またそのなかでもどうすれば居場所を作り上げることができるのかー対照的な兄弟の姿を通じて作者は訴えてくるのだ。(bookish)

『めしばな刑事タチバナ』原作:坂戸佐兵衛、作画:旅井とり

空気系グルメマンガの極北。いかにも仕事のできなそうな刑事たちが、実在のチェーン店、弁当、スナックなどのB級グルメについて、こだわりとウンチクを語りまくる! 首都圏だけの話に終わらず、地方独自の店舗や文化までフォローしているのが凄いと思う。ここまでファストフードに詳しい原作者は何者?(本多正徳)

『ましろのおと』羅川真里茂

天才津軽三味線奏者の血を受け継ぐ少年。彼は才能に恵まれながらも、純粋な性格が災いして、外の世界に出ようとはしない。彼の純粋な性格や才能に惚れ集まってくる人たちに影響を受け、しだいに社会と交わり成長していく作品です。少年の成長を促すのは、子供からお婆さんまでのさまざまな女性たち。様々な角度から引っ張られて、助けられ成長していく少年の姿をみると、男性はどんな立場や年齢の女性にも心を動かされてしまうのだなと感じます。(山内康裕)

最後に、2014年にはこれが注目!という漫画や、漫画界でのムーブメントがあれば教えてもらえますか?

マンガ表現の拡張という視点から、「音」に着目して活動している二者の今後の展開に期待したい。一つは新しい電子コミックスの可能性に挑戦している漫画元気発動計画主催「Domix」。漫画家集団が主導で制作している音声付の電子コミックスは、アニメとは違う系譜でのマンガの進化の可能性を秘めている。

一方、アナログという観点から、ミエルレコードwithOTOWA「紙巻きオルゴール漫画」にも注目だ。オルゴールの音源となる紙自体がマンガになっており、手巻きで音を鳴らすと同時にマンガのコマも現れるという仕組みは、音楽を聴くスピードとマンガを読むスピードを一致させるという意味で画期的である。