9月23日(金)、マンガナイト企画イベント「さよなら漫楽園 みんなでマンガ読まナイト」を神保町漫楽園にて行いました。
漫楽園は、東京都最古の漫画喫茶であるとともに、マンガナイトの数々のイベントを行った場所として、メンバーにも大変思い出深い場所です。この度ビルの老朽化に伴って、その17年の長い歴史に幕を閉じる事になりました。
今回は去りゆく漫楽園を惜しみつつ、マンガナイトで店内の一角を借りきり、メンバー主催の個性あふれるミニ企画を逐次行いました。
通常営業に並行しての終日イベントということで、マンガをじっくり読んでいる方々もいる一方で企画を進めてゆく、少し面白い形態となりました。
以下に、プログラム順に沿ったミニ企画のレポートを掲載します。
◆読み食い方研究 11:00〜13:00(担当:岡本)
マンガを読みながらオヤツを食べたり、時には食事をしたりする… 行儀は悪いと知りながら、マンガ好きのみなさまならきっと一度はやってしまう行為ではないでしょうか?
本企画では、このような読書&食事スタイルを「読み食い方」として提唱します。より優れた「読み食い方」を姿勢と食品の両面から探ってゆきました。神保町界隈の名店から、テイクアウトで買ってきた大量の食品を目の前にスタート。新しい「読み食い」スタイルは何処に? 約10名の参加者がそれぞれグルメマンガを手に、難しい姿勢に果敢にトライする姿は、さながらインドのヨギーのような求道精神を感じました。
「読み食い」は、「食事とマンガのマリアージュ」「意外にダイエットになる」「これはまさに“マンガを食べる”スタイルである」とは、担当メンバーの談です。
◆将棋でドン 15:00〜16:00(担当:本多)
日本古来のボードゲーム、将棋。参加者と将棋を指すだけというこの企画、マンガと関係ないのでは? という声に耳を塞ぎ、決行しました。
鳴り響く駒音は、真剣師華やかりし昭和中期の雰囲気が漂う漫楽園と意外に相性が良かったです。幸い、約1名の参加者にも恵まれ、本企画は大成功を収めたといえましょう。
◆4コママンガzine制作ワークショップ(担当:岩渕、本多)
参加者めいめいに4コママンガを描いてもらい、それらをまとめたzine(しばしばホチキスで止められた小雑誌)をその場で制作するという、スピード感あふれる企画です。
テーマは自由。名作4コママンガを机に積み、思うままに描いていただきました。なかなか難しいかな? と危惧していましたが、意外にもみなさん、時間内にキチンと脱稿されてゆくのに驚きました。
中には「先生まだですか? ページを空けて待ってます」編集者にせっつかれる人気漫画家の気持ちも味わえた方もいたり…
ネタの内容も、正統的4コマギャグからエッセイマンガ、「さよなら漫楽園」に関係したもの、実験系までバラエティに富み、この短時間で仕上げたとは思えない質の高さでした。
原稿が揃ったら、製本です。zineは小さいけれど、制作工程は普通の雑誌と同じ。面付に従って指定のページに原稿をセットし、元版を作って発行部数(20部)をコピーします。本文ページを折り、厚紙で作った表紙で覆ってホチキスで留めると完成!
いい記念になりました。
◆ドミ○ゴスの人生相談 20:00〜21:00(担当:向坊、岩渕、阿部※)
場の雰囲気も大分こなれてきたこの時間帯、漫楽園の一隅に怪しげな懺悔室のようなスペースがセッティングされました。人生経験豊富な3人が、参加者の悩み相談を受ける、「ドミ○ゴスの人生相談」の開始です。髪型、服装もキレイに揃ってますね。
よくある人生相談と違うのは、口頭での相談が終わった際に、机に積んであるマンガの山から、その人にあったテキストを取り出し、紙に筆写して渡してくれるところ。これを財布に入れておくと、人生における決断の際に重要な示唆を与えてくれるらしいです。この企画けっこう人気で、予定時間が経過しても予約の列が途切れませんでした。
参加者の悩みは、仕事、恋愛、金銭、生きがい…など多岐にわたったようです。私は「つるピカハゲ丸」から引用された「おまえなんかまだいいわい!!」というセリフをいただきました!
◆カズノコの穴2011 21:00〜22:00(担当:太田)
ミニ企画の大トリとなる本企画、現役書店員であるカズノコ君が2011年の個人的ベスト漫画を発表してくれました。
順位 | タイトル | コメント |
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1 | がらくたストリート | 最早お目にかかれるとは思っていなかった奇跡の2巻を祝して堂々第1位! 宇宙人に神様にヤクザに、電車、バイク、自転車、水泳、チャーハンからスピーカーまで男の浪漫がギッシリ詰まっています! |
2 | あさひなぐ | 本来弱いものが身につけた武術「薙刀」。ここでは高校デビューを夢見る女子高生旭が仲間とともに楽しく、厳しく、健気に奮闘する薙刀ガールズハイスクールライフ。 |
3 | ねじまきカギュー | 表現の極北とも言うべき圧倒的な表現力に度肝を抜かれること間違い無し! カギューちゃんのギャップでの可愛さも凄い! |
4 | 生きろ! モリタ | 扱っているテーマはかなりヘビーでニッチだが描き方、テンポなどで何故かライトに読めてしまう怪作! 年齢や嗜好の異常さばかりに目が行きがちだが、精神的な結びつき(相互依存)の奇跡を感じさせられる。 |
5 | のりりん | 個人的には2巻で自転車に乗った時のカタルシスが素晴らしいと感じた。頭で嫌がっていても心や身体は否応無く反応してしまう、そんな自転車の楽しさが滔々と描かれている。 |
6 | C-黒咲錬導作品集 | 4位『生きろ!モリタ』のようにフェティシズムを扱ったオムニバス形式の作品集だが、こちらは全然ライトではない! むしろえげつないほどにありありと描かれるフェティシズムに目を覆いたくなる。怖いもの見たさで是非ご一読。 |
7 | 姉の結婚 | 『娚の一生』で30代女性と50代男性の恋愛を描いて好評を博した著者の最新作は、四十路女性の恋愛を描いた作品。風雲急を告げる四十路ホームに恋愛ベルが鳴り響く! |
8 | ふーふ | ネットゲーム上で結婚をした同級生の女子たちだが、現実でも気持ちは変わらない。オンラインでは祝福され、認められるものがオフラインでは嫌悪され虐げられる。一見ゲームを楽しんでいるようなラッピングだが実はかなり深く現代的にプラトニックな精神性を描いた作品。 |
9 | 銀の匙 | 『鋼の錬金術師』でお馴染みの著者の最新作。今度の舞台は北海道の農業高校。自分の将来や夢を具体的に描けない主人公が、学校生活や農業体験を通して実学的な学びを得る作品。相変わらず人間を描くのが上手い!そして、ハガレンで目が慣れているとキャラがみんな強そうに見えるw |
10 | 恋するサバンナ | 顔が良くて仕事もこなす櫻井だが、言い寄ってくる女性にいまいちピンと来なくて関係は一度きり。害獣扱いされる日々だが、ある日出会った女性に本気になってしまう。こんなイケメンキャラが本気の愛を見付けて狼狽する姿は悶絶もの! またそつなく仕事をこなすが本気を出して失敗することを恐れている同僚明石を描いた中編『シリカゲル』も収録。 |
また、希望者には個人面談形式でそれぞれのニーズにあった漫画をオススメしてくれる、通ごのみの企画となりました。マンガ好きが、マンガについて真摯に対話する姿は、今日の漫楽園で目撃したたくさんの風景の中でも、最もマンガナイトを象徴する絵のように思えました。
以上、ミニ企画のレポートでした。参加していただいたみなさま、ありがとうございました。
マンガナイトが漫楽園で行うイベントはこれで最後となります。漫楽園は、こういった混沌としたイベントも自然に展開できる、いい意味でゆったりした素晴らしい空間でした。このような場所が無くなるのは本当に残念なことですが、マンガナイトの企画イベントはこれからも目白押しです。マンガナイトの中に生きる漫楽園精神にこれからも注目してください。漫楽園園長も若干の充電期間の後、きっと新しい何かを携えて現れてくれることと思います。(本多正徳)