ツブヤ大学ManGa講座「マンガ書店員バトル~にがくてあまい/小林ユミヲ特集~」

マンガナイトは10月2日、横浜市中区野毛Hana*HanaでManGa講座を開きました。横浜地区で様々な講座を手がける「ツブヤ大学」との共催。書店員がテーマに沿って書店の売り場のような書棚を作る「マンガ書店員バトル」と特定の作品のPOPを作る講座の二本立て。約30人がUSTREAMで視聴するなど注目を集めました。

「マンガ書店員バトル」はあらかじめ設定したお題に対し、書店員がそのテーマにあう複数の作品を集めて棚に並べ、講座の参加者や視聴者に投票してもらうことで棚のできを競うもの。今回のテーマは「スポーツの秋」と、小林ユミヲ作「にがくてあまい」(マッグガーデン)で、個性的な書店員がそれぞれのテーマに合う作品を選びました。参加していただいた書店員はあおい書店横浜店の石田真悟さん、あゆみBOOKS早稲田店の太田和成さん、往来堂書店の三木雄太さん。

最初に取り上げたのは「スポーツの秋」。あおい書店の石田さんは、女子サッカーの人気上昇から連想して「女子スポーツ」をテーマに。少女マンガから青年マンガまで幅広い作品を紹介した。従来少女マンガは恋愛が主なテーマで、スポーツは主人公が部活に所属しているなどサイドのような扱いが多かったが「最近はスポーツをメーンにしている作品も多く男性も読みやすい」(石田さん)。「主人公の女の子の芯の強さが特徴的。少女が主人公のスポーツマンガは『自己成長』『自己研鑽』に焦点が当たっている」という。

実際の棚には、高校に入った主人公が薙刀に挑戦する「あさひなぐ」、総合格闘技に挑戦する天才型少女が主人公の「鉄風」、楽しくうつくしく大食いを競う「てんむす」、ラクロスに挑戦する「バガタウェイ」、イケメンに目もくれず弓道に真摯に向き合う女子高校生が主人公の「コイマト」、思春期独特の悩みが特徴的な「少女少年学級団」が並んだ。とくに「あさひなぐ」は「年末の賞レースにも関わってくる」と予測していた。「少女少年学級団」など男の子の野球チームのなかで思春期や女の子独特の悩みに直面する姿を描いていることも特徴的だ。女の子の芯の強さ、女性特有の悩みなど葛藤は女子スポーツを描いたマンガでは見せ場のひとつ。ただ必殺技で主人公が勝って終わるだけでなく、仲間やライバルとの交流、主人公の悩みなどもしっかり描かれる。石田さんは「主人公と一緒にこの秋悩んでみても面白いのでは」と話していた。

続いて往来堂書店の三木さん。「棚は漠然と面白い作品を探すお客さんへの提案」と話す三木さんは、今回の棚ではバスケットボールを取り上げた。王道作品の「SLAM DUNK」から入り、ストリートバスケを取り上げた「DRAGON JAM」を「一番押したい」(三木さん)作品として表紙を表にして目立つように置いた。さらに車いすバスケを扱う「リアル」を並べることで1990年代からのバスケットボールの歴史を紹介。「『SLAM DUNK』では高校生の将来として考えられなかったプロ選手が、『DRAGON JAM』では夢として語れるようになり、『リアル』では入団試験を受けるところまで描けるようになった」と解説した。しかし棚の端をわずかに開けることで現実へのくぎさしも。「プロバスケットボールのリーグが2つに分かれていることで、プロで活躍している選手の姿や実情を描きにくい。早く一体となり、マンガでも面白く描ける現実になってほしい」と話していた。

あゆみBOOKSの太田さんのスポーツの棚は「モータースポーツ」特にバイクという自分の趣味でまとめた。普段の書店の棚はお客さんの好みと書店員のお薦めで構成されるというが「今回はあえて書店にからのお薦めだけでまとめた」という。イタリアのバイクを扱うバイクショップを舞台にした「ジャジャ」、非日常を味わうというバイクの面白さがわかる「東京奥多摩のヒカリ」、バイク好きにお薦めの「My favorite BIKE」、バイク乗りの心情を描いた「モーティヴ」、モータースポーツを通じた仲間とのつながりを描いた「曇天・プリズム・ソーラーカー」、夢のバイクを描いた「AKIRA」を並べ、バイク初心者からすでにバイクに乗っている人が面白いと思う作品を推した。「AKIRA」に登場したバイクは「バイク乗りのあこがれ。できたら乗ってみたい」(太田さん)といい、似たデザインのバイクが実際に発売されている。

続いて棚のテーマになったのは「にがくてあまい」。「出版社の社長と一緒に食べに行った野菜料理をマンガにできないか考えて生まれた(マッグガーデン編集者)この作品を中心に、一緒に並べて売りたい作品は何かというお題に対し、3人の書店員はそれぞれ特徴的な棚を用意した。

あゆみBOOKSの太田さんはベジタリアンの主人公が作る料理に注目。「にがくてあまい」から連想しやすく人気が高い、ゲイの男性2人組の日々の食事と料理風景を描いた「きのう何食べた?」を並べ、都会派の女性が農家生活に飛び込む「GREEN」へ。さらに東北地方の自給自足の生活を描いた「リトル・フォレスト」、荒廃した未来でも日々の食事を作り続ける「花と奥たん」、日本文化・料理の奥深さを描いた「おせん」とつなげた。太田さんは「食べた人のおいしそうな笑顔を見ることで読者も幸せになれる」とグルメマンガの良さを話した。

続く三木さんは太田さんへの指摘から。「『にがくてあまい』を売るなら、真ん中において表紙を見せるべきでしょう」とのこと。三木さんはこの作品を「仕事、恋愛、健康と30代前後の女性の悩みをうまく描いている」とみて、働く30代女性向けの作品を並べた。コンセプトは「あなたの問題解決、食べる? 働く」とし、「にがくてあまい」の左側には、仕事、家庭など様々な問題をおいしいご飯や思い出の料理を食べて解決する、「ピリ辛の家政婦さん」「女の子の食卓」を置いた。さらに、自身が料理人となる「おいしい食卓」を追加。右側は食べること以外で解決する作品として「Real Clothes」「働きマン」を並べた。

あおい書店の石田さんは「内容は30代女性向けだが、店舗の客層を考え男性客にもアピールしたい」というわがままを棚で実現した。「にがくてあまい」を中心に、左側には主に女性向け、右側には男性向けの作品を置き、全体をみると野菜料理から肉料理、コーヒー、食後のデザートまでフルコースとなるようにしつつ、男女両方が楽しめる棚となった。全体の基準は「いい男がメシを作ってくれる作品」(石田さん)とのことで、女性向けにはイケメン男子高校生が料理に挑戦する「銀のスプーン」、ホームキーパーとしてきた男子高校生と恋愛する「お嫁にいけない!」、イケメン4人組による甘味処での人間模様を描く「甘美男子」。男性向けには料理シーンが華やかな「男の料理!」、ベジタリアンに詳しくなれる「華麗なる食卓11」、素材を生かした料理が特徴の「ダシマスター」と並べ、コースの最後を奥深いコーヒーの世界を描いた「バリスタ」でしめた。

マッグガーデンの営業担当者からも「こんな作品と並べてもらえるとは」と驚きの声が上がり、「これをほかの書店員にも提案したい」との本音も出た。

後半は、「にがくてあまい」を書店でアピールするPOP作成のワークショップ。まず太田さんからPOPの作り方のミニ講座。「絵が入っていると気合いがはいっていると伝わりやすく目を引きやすい」など基本を説明すると一斉にうなずく様子がみられました。参加者はとまどいながらもペンを選び出版社が用意したフォーマットに思い思いのPOPを描くことに。マンガを見つつもくもくと描く人、真っ白な紙を前に悩む人などそれぞれ。

描き終わると一人ずつ前に出て発表した。緊張しながらも「野菜が足りないと思っている人を意識しました」「二人の関係を表しました」と自分の作品の特徴を説明した。POPはほかの作品を意識したものから、イラスト入り、カラフルなものなど多種多様で、出版社の方と書店員の審査の結果、3作品を賞に選んだ。
選ばれたのは

<書店員賞>「野菜が足りないあなたへ」


<マッグガーデン賞>イラスト入り


<MVP賞>「かみあわない2人がなぜかかみあう?」

の3つ。なんとMVP賞の受賞者には小林ユミヲ先生直筆のイラスト入りサイン色紙が、ほかの2つの賞の受賞者にはサイン入りの複製原画がプレゼントされました。

最後は書店員バトルの結果発表。僅差ながら、「スポーツの秋」棚、「にがくてあまい」棚の両方であおい書店の石田さんが1位となった。2時間半程度の長時間の講座でしたが、作品紹介から、棚作りの極意、そしてPOP講座など充実の時間でした。(libro)