【出演】1月29日(水)19:00~21:30開催「マンガ家向け確定申告講習会2014@東京~原稿に集中するための税務・節税対策」(主催:トキワ荘プロジェクト)に代表 山内康裕が登壇します。「マンガ家の確定申告」や「マンガ家の法人化」などについての講習会になっています。今年のテーマは、平成26年4月からの消費税8%への対応です。詳細はこちらをご覧ください。
マンガ家向け確定申告講習会2014@東京~原稿に集中するための税務・節税対策


【出演】1月29日(水)19:00~21:30開催「マンガ家向け確定申告講習会2014@東京~原稿に集中するための税務・節税対策」(主催:トキワ荘プロジェクト)に代表 山内康裕が登壇します。「マンガ家の確定申告」や「マンガ家の法人化」などについての講習会になっています。今年のテーマは、平成26年4月からの消費税8%への対応です。詳細はこちらをご覧ください。

主人公に引っ越し業者の若者と中年の男性コンビを据え、行く先々の「ご当地グルメ」を堪能させる。会社で待つ事務の女性や子どもに、スイーツなどのお土産を買って帰るのが基本の流れだ。連載のスタートは2009年12月。グルメ漫画には料理人が作る過程や、対決をメーンにした作品が多かった中で、実在する施設を題材とした「消費行動」を楽しませてくれるのは新鮮な切り口だった。
SAは、もはやトイレ休憩だけの施設ではない。2012年4月に静岡県で開通した新東名高速では、7カ所あるSAの年間立ち寄り人数が3700万人で、利用者の4割が40分以上滞在したという(NEXCO 中日本公表)。集客数日本一の東京ディズニーランドの入場者数は2750万人(『月刊レジャー産業資料』13年8月公表)だから、商業規模は侮れない。
本作の特徴としては他に、料理やお土産を紹介するコマの大きさが挙げられる。1つの商品がページの半分以上を占め、材料や特色をしっかり書き込んでおり、グルメ漫画としては重要な「シズル感」が満載だ。
ただ、ガイドブックとは違い、商品の「値段」がほとんど記されていない。そこには、SAグルメは商品の入れ替えが激しいことに加え、通りかかった時に季節や流行を味わう「一期一会」の面白さがあると訴えている思いが感じられる。
この作品、初めてまとまったのは12年9月発売のコンビニコミック(ペーパーバック)だ。単行本1巻の発売は13年5月と、非常に間が空いている。作者自身も1巻の巻末で「ココまで長かったですね」と主人公に語らせている。なぜそんな経緯をたどったのだろう。
SAは普通、通過点であり、旅や移動のおまけだ。そのおまけを主題にした本作の立ち位置は、当初手探りだったのではないか。しかし、昨今の節約志向からプチ贅沢に消費動向が変わる中、非日常のSAでの消費行動は、一つの目的として定着してきた。本作は、そんなSAの価値向上とともに見直され、単行本化を果たしたのではないか。2巻の巻末でも「次が出るか分からない」となっているが、時代を彩る作品としてぜひとも続刊を残してほしい。
(029*83)

DOTPLACEでの代表山内康裕の隔週連載コラム「マンガは拡張する」、第6回「マンガのある『場』、今はどこに?(中編)」がアップされました。

12/31(火)21:00~24:00本屋B&B開催の年越しトークイベント『岡本真×武田俊×野口尚子×山内康裕×米光一成×内沼晋太郎「本屋で年越し」~book topics of the year 2013~』に代表山内康裕が出演します。
【出演】2013年1月16日(木)21:00~22:00、ネットで受講できる無料授業を配信している「schoo」にて、代表山内康裕が「マンガで読み解く現代社会学」の先生をやります。

もはや現代の日本を語る上で欠かすことの出来ないものとなった漫画。当然、日本の一年間を振り返ろうとした時にも漫画という要素は外せない!ということで、PingMagで、いつもマンガに関しての記事を執筆していくれているマンガナイトのメンバーに、この2013年で一番印象に残った漫画作品を聞いてみました!
今回は特別にPingMagに合わせて「絵や表現の素晴らしさ」や「日本文化を感じることができる」といった観点から、特に海外の方にも紹介したいと思った漫画を、マンガナイトのメンバーがそれぞれ1作品づつ計10作品選んでくれました。
2013年に印象に残った漫画を教えてください!
非常に繊細で素晴らしく可愛らしい登場人物達。メルメンな絵本と少女マンガの中間に立つような雰囲気だ。しかし、この作品が際立っているのはキャラクターの存在に過度に依存せず、背景を密に描き込み、生活感や地域感を演出しているところにある。独特の温度で構成された風景は、記憶をたどり人魚を求めるファンタジーの部分と、引っ越しを機に始まる父親との二人暮らし、転校先の学校でのやりとりという二つの部分を違和感なく縫い合わせる役目を果たしている。この作家、この作品でしか味わえない世界観がここにはあるのだ。(いけだこういち)
10代の頃、『アンネの日記』を読み終えた夜にみた夢を、そのまま具象化されたような気がした。余白の多い、あっさりとしたシンプルな絵柄。『我が闘争』を彷彿とさせるような赤と黒の装丁。物語は隠れ家から収容所までの一連の流れと、アドルフとアンネを想起させる「太郎」と「花子」の閉ざされた空間におけるつかの間の交歓のあいだを行き来する。まだのびしろの大きい時期ゆえの夢見がちな伸びやかさと、親の呪縛から逃れられない閉塞感に、人の痛みが分からないがための残酷さ。ここで本質的に語られているのは思春期であり、社会情勢の変化などそのスパイスに過ぎない。少女の中に広がる心象風景そのもののような作品だ。(洛中洛外)
伝統芸能の民謡と踊り「おわら」を守り伝える町を舞台に、恋や友情、秘密が描かれている作品。みずみずしい方言や古い町家の家並みなど、富山県八尾地域の特色が随所に見られ、日本情緒が堪能できる。装丁も凝っており、カバー裏にはおわら節の歌詞が美しくデザインされている。小物による描写も巧みで、例えば踊りに使う菅笠が舞い手の表情を隠し、ドラマをよりミステリアスに見せている。また、主人公の叔父が予期せぬ出会いに際し思わずこぼすコーヒーや、恋するヒロインが食べるサンドウィッチなど、フードを絡めた描写も印象深い。ただの「ボーイ・ミーツ・ガール」ではないこの作品、今後どうなっていくか楽しみなマンガである。(kuu)
有名人の通う店やお取り寄せは「この人ならば、きっと良いものを食べているはず」という期待で人気のコンテンツだ。ステルス・マーケティングという手法が横行する今でさえ、あこがれの人と同じ空間や味を感じたい、という人は多いだろう。本作は、太宰治に芥川龍之介、永井荷風といった、明治以降の文豪の食生活を題材にした珍しい切り口の作品。わずか100年ほど前の国民的作家が、どんなものを食べていたかを、垣間見ることができる。現存の店も多く、足跡をたどるのも面白い。何よりも、写真では小難しい顔が多い文豪の「嬉しそうに食事する姿」を目にできるのが、マンガの醍醐味とも言える。夏目漱石、正岡子規、樋口一葉も登場。(029*83)
フランスでは谷口ジローの漫画が高く評価されている。その理由は過度な装飾が少なく写実的でバンドデシネに近いからだろう。その系譜としてえすとえむを紹介したい。基本的には写実的な絵で大人の恋愛群像劇を描いているが、時々、写実的な絵でシュールなギャグを描く。この作品も、パリに住むやり手弁護士、ジャン=ルイ。一見完璧な紳士に見える彼の大好物はチョコレート——と言った内容である。表紙も紳士がスーツの内ポケットに好物のチョコレートを隠し持つというミスマッチのおかしさを表現している。また、半透明なカバー紙、金色の箔オビ、遊び紙の模様。全て市販チョコレートのパッケージに似せるなど装丁にもこだわり抜いた作品である。(太田和成)
2013年は間違いなく「自分の夢に向かって切磋琢磨しながら成長する」少女たちがメディアでよく活躍した一年だった。本書は表紙こそユニコーンが出てきそうなくらいパステルカラーで原宿カワイイを彷彿とさせるデザインとなっているが、歌劇団養成学校を舞台に一生懸命な天真爛漫な女の子と、やる気がない元アイドルの女の子が、ぶつかりながらトップを目指して成長していく青春物語である。どんなシーンにも10代ならではのキラキラしたひたむきさや純真さが画面から伝わってくる点は現在の少女たちそのものだ。かげきしょうじょたちの成長と今年活躍した少女たちを重ねあわせて一年を振り返ってみても面白いかもしれない。(kukurer)
やっぱり、天才です。絵も、タイトルも、セリフも、ディテールも、全体も秀逸。宮崎さんにしか出せない、独自の世界観に心ゆくまで没入してください。気持ちいいですよ。内容は、一言でいうと、たぶん、大きな愛についての話です。(イワサキユミ)
オランダ出身の画家、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホとその弟、テオドルス・ヴァン・ゴッホ。この2人の生きざまを、「絵画のよう」といいたい絵柄で描いた作品。ヴィンセントは「ひまわり」など後生に残る作品がありながら、生前には評価されず。弟のテオドルスも、「兄の生活を支えた」としか伝えられていない。そうした通説を元に、「実はこうだったのでは」と大胆な解釈でフィクションを作り上げ、圧倒的な物語として読ませている。同時に働くということについても考えさせられる。弟のテオドルスは作品中、「画家になりたくてなれなかったもの」と描かれる。自分より才能のあふれる人の隣で生きていくとき、人はどのような闇を抱えるのか。またそのなかでもどうすれば居場所を作り上げることができるのかー対照的な兄弟の姿を通じて作者は訴えてくるのだ。(bookish)
空気系グルメマンガの極北。いかにも仕事のできなそうな刑事たちが、実在のチェーン店、弁当、スナックなどのB級グルメについて、こだわりとウンチクを語りまくる! 首都圏だけの話に終わらず、地方独自の店舗や文化までフォローしているのが凄いと思う。ここまでファストフードに詳しい原作者は何者?(本多正徳)
天才津軽三味線奏者の血を受け継ぐ少年。彼は才能に恵まれながらも、純粋な性格が災いして、外の世界に出ようとはしない。彼の純粋な性格や才能に惚れ集まってくる人たちに影響を受け、しだいに社会と交わり成長していく作品です。少年の成長を促すのは、子供からお婆さんまでのさまざまな女性たち。様々な角度から引っ張られて、助けられ成長していく少年の姿をみると、男性はどんな立場や年齢の女性にも心を動かされてしまうのだなと感じます。(山内康裕)
マンガ表現の拡張という視点から、「音」に着目して活動している二者の今後の展開に期待したい。一つは新しい電子コミックスの可能性に挑戦している漫画元気発動計画主催「Domix」。漫画家集団が主導で制作している音声付の電子コミックスは、アニメとは違う系譜でのマンガの進化の可能性を秘めている。
一方、アナログという観点から、ミエルレコードwithOTOWA「紙巻きオルゴール漫画」にも注目だ。オルゴールの音源となる紙自体がマンガになっており、手巻きで音を鳴らすと同時にマンガのコマも現れるという仕組みは、音楽を聴くスピードとマンガを読むスピードを一致させるという意味で画期的である。

DOTPLACEでの代表山内康裕の隔週連載コラム「マンガは拡張する」、第5回「マンガのある『場』、今はどこに?(前編)」がアップされました。

今年5月に刊行され話題を読んでいるスーザン・ケイン著『内向型人間の時代』(講談社)に続き、10月にはジェニファー・B・カーンウェイラー著『内向型人間がもつ秘めたる影響力』(すばる社)が発売され、ビジネス誌でも特集が組まれるほどだ。そこで語られているのは外向的で社交的な振る舞いをする人だけが評価されるのではなく、多くを語らなくともじっくり物事を考え、冷静に判断を下す内向的なタイプの人にもスポットを当てるべきだという提案である。
内向型が注目されているといっても、従来のように会議術やリーダーシップに関するノウハウ本が次々と出版され、ハーバード流、BCG流というような看板を掲げてそれに箔をつけようとする外向型養成の熱もいまだ冷めていない。
そんな中、内向型-外向型の軸には当てはまらない重要な存在に気づかせてくれるマンガが青桐ナツ『flat』(マッグガーデン「アヴァルス」連載)である。
主人公・平介は超がつくほどのマイペース。さらに「コイツが本気になることなんてあるのか?」と思うくらい冷めていて無駄な努力などする気はサラサラない。唯一、彼が好んで自ら行動することといえば、大好きなお菓子を作ることくらいだ。物静かな性格とはいえ、前向きに何かを考える姿勢が見られない平介は内向型の人間というよりも無気力な人間と言った方がしっくりくる。しかし、彼の周りにはなぜか親戚、友人、先輩後輩、そして先生までもが集まってきて活発な交流が行われるのだ。
平和を好み、のんびりとマイペースに生きる平介。そんな彼にも天敵が現れる。後輩の海藤である。海藤は互いが積極的に関わらない友情や、年下を思いやらない年長者(=平介)に大いなる疑念を抱いている。なぜもっと前向きに関係を築こうとしないのか、相手の気持ちを細かく拾い上げようとしないのか。ことあるごとに海藤は平介の態度に注文を付ける。
海藤に叱責され、表面上は平静を保ちつつも悩む平介。最初は自分の行動のなにが問題なのかすら気づかない。だが周囲との関係を振り返ることで「ああ、そういうことか」と自覚していき、そして得た結論は「このままでいいのでは」というものである。悩む平介と並行して海藤は崩壊していく。自分が理想とする積極的な人物像を平介に押し付けることで、彼を見下していたということに気づいたり、自分が考えていた以外にも友情や信頼関係にはいろいろな形態が存在することを知ってしまうからだ。
『flat』が提示するのは積極的に他人に働きかける外向型人間と、一人での熟考を好む内向型人間だけでは定義づけられない個性をもった人間がいるという視点である。それは社交的な振る舞いをとったり沈思黙考したりするのではなく、自覚なく周囲の人を惹き付ける性質を持っている存在だ。そうした人は外向型、内向型双方が周囲にいたとしても、それぞれに偏見を持ったり優劣をつけたりするような判断はせず、どちらのタイプも受容することができる。
社会学者アーヴィン・ゴフマンはこうした性質を持った人を「オープン・パーソン」と呼んだ。皆さんの周りに、よく道を聞かれる人、すぐに子供が懐く人は居ないだろうか。そういった人に共通するのは相手に警戒心を抱かせず、話しかけやすいオーラを放っていることである。例えばイヌを散歩させている人、幼児や老人などは人から気軽に話しかけられやすいオープン・パーソンだとされている。
平介は一見、消極的で無気力な存在のように思われる。だが、彼が無自覚に持っているのは、周りに人を集め、気兼ねないやり取りを成立させるオープン・パーソン的性質なのだ。外向型人間、内向型人間それぞれの能力を高める方策はビジネスの現場において非常に重要なことで、それによるメリットもわかりやすい。だが、クリエイティビティを高めるために人間の性質を二分し、それぞれに処方箋を出す一方で、多様な人々が協働する組織において欠かせないのは、まったく性質の違う人の間を取り持ち、潤滑油やハブの役割を果たす平介のような人物なのである。
現代のビジネスシーンにおいては内向型-外向型問わず、常にクリエイティブに、前向きになることが求められる。しかし、それだけが個人の価値や存在意義を決める軸ではない。そう、平介のような存在をその条件だけで排してしまっては組織が上手く機能しないのだ。
『flat』はそんな二者択一の行き詰まりをやんわりと否定する、“平熱感”の重要性を教えてくれる作品だといえるだろう。
関連サイト
アヴァルスオンライン