「地球はまるい。おでこもまるい。そしておなかも。」
「科学の本ってヒンヤリして気持ちがいい」
「瞳の奥には秘密がある」
何のマンガに出てくるフレーズなのか分かりますか? …答えは、それぞれのリンク先です。ただし該当のマンガの“中”には書いていないかもしれません。これらは新刊マンガの表紙に巻かれた帯(オビ)に印刷されている言葉です。帯は、つい手にとって買いたくなってしまうコピーが凝らされている、1人でも多くの読者にマンガを開いてもらいたい編集者の気持ちが滲み出ている部分です。
2015年1月10日、マンガナイトではこのマンガの表紙を彩る小さな役者に注目し、帯ごとマンガを味わうワークショップを開催しました。おりしも新春、日本伝統のカードゲームと組み合わせた「マンガ帯カルタ」というオリジナルゲームを考案し、楽しんでもらおうという趣向です。
帯カルタは、マンガ本体を場札に、対応した帯を読み札にしたカルタ遊びです。引用したように、帯に書かれた言葉には趣向が尽くされていて、断片的なフレーズだけではなかなか正解のマンガにたどり着きません。マンガへの知識と、その場の機転が試されるゲームになるのではないかと期待して考えました。
白熱したマンガ帯カルタ
今回、参加者は全員で約20名。10名づつの2グループに分かれてプレーすることになり、参加者同士の自己紹介から読書会が始まりました。これからしのぎを削るライバルたちとは思えない和やかな雰囲気です。
事前に約30分のリーディングタイムを設け、参加者が持ち寄ったマンガ(場札)を回覧しました。ここで既にゲームは始まっており、テンポよく読んでどういったマンガが播かれるかを広く把握しなければなりません。読み始めたマンガが面白いからといって、1冊に拘りすぎてしまうと、情報量に差が出てしまうからです。しかし私が傍観者として見ている限り、多くの参加者が熱心に1冊のマンガを読み続けています。マンガ好きが仇となる、失敗を予感させるシーンを見ているようで、なんだかハラハラしてしまいました。
心配はよそに、時間が来たのでカルタフェーズに移ります。マンガを重ならないようテーブルに並べると、思わず腰を浮かす参加者の面々。
帯の読み手はマンガナイトスタッフが担当しました。明らかなタイトルや作者名が出ている部分ではなく、そのマンガの内容と関係あるフレーズを選んで読むのがコツです。
いま読まれた帯、自分の好きなこのマンガかも! つい手を伸ばしてお手つきになる人も…
ときどきは、読まれたフレーズと表紙の絵と比べただけで、誰でも分かってしまうマンガもまざっています。こうなると反射神経の勝負です。
白熱の末、結果発表となりました。2回のゲームを終えて、最高得点者にMANGATAマスキングテープが商品として贈られました。
表彰のあと、1位と2位の参加者に、帯カルタで勝つコツを伺いました。
瞬時にこのゲームの肝を把握し、時にスピーディに、時に他プレイヤーのお手つきを待つ柔軟な戦略でダントツの11冊を得点したNさん
「普段から書店に通って帯を見る」「思い切りの良さが決め手」
マンガ蔵書7,000冊の知識量に加え、その場のメンバーの話をメモし、場札の情報を更新しながら8冊をマークしたKさん
「とりあえず手をだすこと」「ただし知識が邪魔をすることも」
観戦していると、プレイヤーのお気に入りのマンガがたまたま場札に出ていると、「これを取りたい!」という気持ちのあまり視野が狭くなったり、勇み足のお手つきをしてしまうという事件がよく起こっていました。ここでもマンガへの愛が時にハンディになってしまう、想定していなかったゲーム性が明らかになりました。「帯カルタ」はマンガへの広い知識、優れた短期記憶と反射神経に加え、冷静さも要求される、総合的な能力が試されるゲームといえるでしょう。
〜レポート後編では、帯のコンテスト「オビ=ワン・グランプリ」、マンガメシと懇親会の模様をご紹介します!