「ガンダム」を創った男たち。

富野由悠季氏ら、「機動戦士ガンダム」シリーズを生み出した人々の姿を、基本的な事実を押さえてドキュメンタリー風に描いたギャグマンガ。「新しいアニメを生み出す」という富野氏、アニメーターの安彦良和氏らの熱量が、マンガ家・大和田秀樹氏の熱量で増幅され、当時の熱気や可能性が無限に膨らんで伝わってくる。ギャグマンガ的表現や誇張もあるだろうが、「新しい何かを作り出すときのパワーとはこういうもの」と納得させてくれた。アニメから映画への展開、ファンの巻き込み、そして目の肥えたオトナを満足させる表現手法の革新――今のアニメ業界がやっていることの原点を垣間見た。玩具メーカーや映画会社が関係してくるからこその生々しいお金の話も含めて、だ。史実をもとに物語を展開する大河ドラマ的面白さが味わえる。多くのアニメが放映されては消費されていく今こそ、新しいことを進める覚悟と熱量を知るために必読のマンガではないだろうか。
ちなみに私自身は、当時の関係者による書籍であとからガンダムシリーズを知った人間だ。そんな私も改めて「この熱量で生み出されたアニメは一体どんなものか」と、見たくなった。特に映画版が気になる。ガンダムシリーズを良く知らない人こそ読むと新しい世界が開けそうだ。

文=bookish
1981年生まれ。「ドラえもん」「ブラック・ジャック」から「週刊少年ジャンプ」へと順当なまんが道を邁進。途中で「りぼん」「なかよし」「マーガレット」も加わりました。主食はいまでも少年マンガですが、おもしろければどんなジャンルも読むので常におもしろい作品を募集。歴史や壮大な物語をベースにしたマンガが好み。マンガ評論を勉強中。マンガナイト内では「STUDIOVOICE」のコラムなど書き物担当になっています。マンガ以外の趣味は、読書に舞台鑑賞。最近はサイクリングも。