翔んで埼玉

インターネット上でよくネタにされる埼玉県を遠慮なくディスっていて、差別表現大丈夫なの……?と心配になるレベル。
たとえば東京都民と埼玉県民は歩ける道が違う。飲食店で頼める注文メニューも違う。野望ある埼玉県民は都民に養子入りしたり、うまいこと潜り込まなければならない……。その中で都民と埼玉県民が出会い、恋に落ちてしまう、埼玉版『ロミオとジュリエット』。
コミックスは2015年に発売されたものの、なんと初出は1980年代の『花とゆめ』である。キラキラしたあの少女漫画誌に、こんなアブない作品が掲載されていたとはとても想像がつかない。時代は変わる。
差別撤廃をぶっ飛んだ作風で後押ししてるのか、逆にやや過敏になりがちな物事を風刺しているのか、そもそもノリだけの物語なのか、何度読んでもよくわからない。でも読んでしまう。そして繰り返していくうちに「どこに住んでるかとか格差とか、なんかどうでもよくなってくるな……」とふと思ったりする。
仕事や日常に疲れた時、ぼんやりとなにも考えずに読むと脱力できそう。
それがこの作品の力なのかもしれない……。

文=ユハラカナ
ユハラです。 ふだんはIT企業で働いてます。小説アニメ漫画短詩、なんでもいけます。ジャンル問わず嗜みますが、起承転結のない淡々とした物語を好む傾向があります。ほかには和の文化にも興味があります。座禅とか盆栽とか。ユパというあだ名がつきやすく、ユパ様と呼ばれがちですが、ただの一般人です。