おとろし

江戸から現代まで、様々な時代を舞台とした、1編6ページのホラー・ショートショート集。ここで描かれるのは、たとえるなら「日陰の大きな石を裏返したところ」のような、じっとりと冷たく湿った恐怖です。派手でわかりやすい演出も、複雑な物語も、話によっては明確なオチすらない。でも、その静かな不気味さが妙にクセになる! 4コマエッセイの中でもたびたび怖い話、不思議な物事に対しての関心を語ってきた作者が満を持して? 挑んだ新境地ですが、本作はホラー漫画の中でも、間違いなく唯一無二の存在感を持っています。どこか落語的な雰囲気も含めて、非常に「日本」を感じさせる一冊。

文=鈴木史恵
1986年2月生まれ、千葉県出身。おもちゃメーカー勤務を経て編集・執筆業へ。マンガ好きとしての原点は物心つく以前から触れてきた手塚治虫と藤子・F・不二雄。24年組、80年代ニューウェーブ、ガロ系、それらの系譜にある青年マンガを中心に、面白そうなものは何でも読みます。マンガ以外の趣味は好きなバンドのライブや映画鑑賞など。