複雑な環境のなか、しなやかに生きるキャラクターたちの人間らしさに、何度も読み返したくなる物語。主人公は問屋の若旦那である八衛と、その愛人と噂されるわっちゃん。そして八衛の異母弟である稲造。わっちゃんが稲造と徐々に距離を縮めていく話なのか、ととらえて読み進めていくと、最後には八衛と稲造の関係性のほうが印象に残っていた。恋愛や家族愛だけでなく、男同士の繊細な関係を読みたい人にとっても楽しめる作品かもしれない。「もっと素直になればいいのに……」と思う人間の不器用さや意固地な部分を愛おしく思える。
投稿日: 2016年1月22日
文=ユハラカナ
ユハラです。
ふだんはIT企業で働いてます。小説アニメ漫画短詩、なんでもいけます。ジャンル問わず嗜みますが、起承転結のない淡々とした物語を好む傾向があります。ほかには和の文化にも興味があります。座禅とか盆栽とか。ユパというあだ名がつきやすく、ユパ様と呼ばれがちですが、ただの一般人です。