アンダーカレント

何も言わずに彼は失踪した──。若夫婦で営んできた町の銭湯に1人残された「あたし」の話。自分は身近な人のことをどこまで分かっているのだろう、そもそも分かることなんて可能なのか、必要なのか?といつしか考えさせられる。一瞬の表情が切り取られているコマが多いため、この人は今何を思っているのだろう、と自然と物語に入り込むことができる。また、「何故銭湯が舞台なのか?」という視点から読むと、日常性の象徴や不特定多数の人の交流の場という舞台装置としての銭湯の特徴が見えてくるようで興味深い。

文=青柳拓真
1992年生。10代の多くをシンガポールで過ごす。何度も読み返してきた漫画は「ジョジョの奇妙な冒険」、「鈴木先生」、「それでも町は廻っている」、「三月のライオン」、「魔人探偵脳噛ネウロ」など。漫画の面白さって何なんだろう、「漫画」ってどう定義できるんだろう…とか色んな作品を読んで考えるのが楽しい。オールラウンドなマンガ読みを目指して最近は恐る恐る少女漫画に挑戦中。