竜女戦記(1)

『ナチュン』や『ムシユヌン』などで知られる都留泰作先生の最新作は、マンガジャンルとしては珍しい「歴史ファンタジー」。1巻はまだ物語が始まったばかりという展開ですが物語の随所でいわゆる「都留節」は炸裂。都留先生にしか描けない独特の作風だと思います。日本のようで日本ではない世界設定が、今後の展開でどう生かされるのか楽しみです。それにしても1巻でこんなことになっちゃったけど、夫は今後どうなってしまうのだろう……。

文=松尾奈々絵
1992年生まれ。少女漫画から青年漫画まで好きです。趣味は野球観戦。

東京トイボクシーズ(1)

東京トイボックスシリーズ最新作は、入学希望者数の下げ止めのために「eスポーツ科」を新設した高校が舞台。これまでのシリーズを読んだ方はもちろん、東京トイボックスシリーズを読んだことがないという方も楽しめます。「今この場にいる誰よりも稼いでいるのは自分たちだ」と言い切る主人公・安曇野蓮のセリフ、格闘ゲームでコマンドを入力できた喜びなど、胸が熱くなるスポーツマンガとしてぜひ手に取ってみてください。

文=松尾奈々絵
1992年生まれ。少女漫画から青年漫画まで好きです。趣味は野球観戦。

ダメ彼を訴えます!!

共有の光熱費からお金をとられ、殴られて鼻を骨折して全治4週間…。結婚を約束して同棲していた彼氏を裁判で訴えた様子を描いたエッセイマンガ。事件が発生してからどのような手順で、どのような苦労があったのかが丁寧に描かれているので、先にマンガを読んでおいて、いざというときに「そういえば…」と思い出せたら心強い一冊です。

文=松尾奈々絵
1992年生まれ。少女漫画から青年漫画まで好きです。趣味は野球観戦。

東京銭湯パラダイス

東京に実在する銭湯のレポ漫画を13本収録。「布を買いに日暮里へ行ったら、偶然『斉藤湯』という銭湯を見つけて入浴したけど、白が基調でめっちゃきれい、BGMのジャズがよい、シャワーの上がガラス張りになってた」など、日常からなめらかにその銭湯独自の魅力をレポートしていく。手塚治虫、さくらももこみたいな漫画らしくのびのびとした絵柄が楽しく、気づいたらその銭湯に行きたくなっています。

文=黒木貴啓
1988年生、鹿児島出身、東京在住のライター。マンガナイトでは執筆を担当してます。ロックンロール、もしくは仮面が題材の漫画を収集&研究中。大橋裕之「音楽と漫画」、榎屋克優「日々ロック」、そして何よりハロルド作石「BECK」……日本人が成したことないロックの魔法を漫画のキャラが見せてくれるところに、希望を感じてしまいます。

ゆとのと

亡くなった祖父は、なぜ最後にこの銭湯の絵を描いていたのか――天涯孤独の身となったOLの湊は、祖父の想いを探るべく大阪の銭湯へ。突然出会った男の子に導かれ、知られざる銭湯の魅力、大阪の下町、そして自分のルーツを知ることになる。作者が銭湯の番台さんだけあり、大阪の銭湯文化が隅々に配された濃密な銭湯ストーリー漫画。

文=黒木貴啓
1988年生、鹿児島出身、東京在住のライター。マンガナイトでは執筆を担当してます。ロックンロール、もしくは仮面が題材の漫画を収集&研究中。大橋裕之「音楽と漫画」、榎屋克優「日々ロック」、そして何よりハロルド作石「BECK」……日本人が成したことないロックの魔法を漫画のキャラが見せてくれるところに、希望を感じてしまいます。

ふろがーる!

仕事のデキる25歳OL・生実野(さゆみの)による様々なお風呂体験を描いた漫画。
季節に合わせたお家風呂から、バイクでの日本各地の温泉地巡り、そしてついには海外・ドイツにまで…!
お風呂を通じた温かい人達との交わりも見所。
日々の忙しさにやられ、お風呂につかることが少ないあなた。
疲れが溜まっているからこそ、お風呂を堪能してみては。
全3巻となっており、とてもさっくりと読めるのでおススメ。

のの湯

浅草で人力車の車夫をしているヒロイン、鮫島野乃。風呂なし(共同入浴券つき)の格安アパートに住むことになった彼女は、同居人で大家の孫の岫子、留学生のアリッサと共に様々な銭湯を開拓していく。お湯より熱い野乃の銭湯愛と、3人の楽しいガールズトークが見どころです。そして原案協力が久住昌之さんということで、実在の銭湯はもちろん、おいしいグルメスポットまでわかるたいへんお得な内容になっています。
お湯の中で、口も心もふやかしちゃってください!

文=kuu
マンガナイトではイベントのお手伝いと、執筆ちらほら。90年前後のなかよし、りぼんなどの影響をやや強く受けてますが、いろいろ読みます。好きな漫画家は、羽海野チカ、佐原ミズ。展覧会と舞台、可愛くて面白いものに心惹かれます。お茶とおいしいものにも。

おふろどうぞ

「前にセックスしたのいつだっけ」「『好きだ』って言われたのいつだっけ」50歳既婚の編集者に迫られ、家の湯船で気持ちを整理する35歳の独身イラストレーター。本作は「おふろ」という身も心も裸になる非日常空間を舞台に、異なる人間ドラマを7本収録。母が知らない男と入っていった旅館で、尾行に付き合ってくれたセックスレス中の彼氏と入る個室風呂。部下や妻へのストレスが頂点に達し、仕事をサボって入るスーパー銭湯。心身リラックスするおふろだからこそ、外界と遮断されたおふろだからこそ、湧きあがる思いを切り取る。

文=黒木貴啓
1988年生、鹿児島出身、東京在住のライター。マンガナイトでは執筆を担当してます。ロックンロール、もしくは仮面が題材の漫画を収集&研究中。大橋裕之「音楽と漫画」、榎屋克優「日々ロック」、そして何よりハロルド作石「BECK」……日本人が成したことないロックの魔法を漫画のキャラが見せてくれるところに、希望を感じてしまいます。

エルフ湯つからば

未知のものと戦い、お宝を探す異世界の冒険者の物語。わくわく読みながら現代人として気になるのは「この人たち、いつお風呂に入るのだろう」ということ。そんな疑問に応えてくれるのが本作。
まるで幻のオアシスのように、心身ともに疲弊した冒険者の前だけに現れ、圧倒的なお風呂力で冒険者を生まれ変わらせる「エルフ湯」。知恵とパワーを持つ店主が独自に配合する薬湯は、その効能の但し書きでマンガの登場人物だけでなく、読者の私たちの癒しにも。
読み進めていくうちに、自然とお風呂の力を再認識し、入浴が恋しくなります。

文=bookish
1981年生まれ。「ドラえもん」「ブラック・ジャック」から「週刊少年ジャンプ」へと順当なまんが道を邁進。途中で「りぼん」「なかよし」「マーガレット」も加わりました。主食はいまでも少年マンガですが、おもしろければどんなジャンルも読むので常におもしろい作品を募集。歴史や壮大な物語をベースにしたマンガが好み。マンガ評論を勉強中。マンガナイト内では「STUDIOVOICE」のコラムなど書き物担当になっています。マンガ以外の趣味は、読書に舞台鑑賞。最近はサイクリングも。

マンガ サ道―マンガで読むサウナ道

浴室の片隅にひっそり佇む木の扉、その向こうに広がる新しい体験世界とは?ざっくりだがドラッギーな絵柄と軽快なセリフ回しは気取らない銭湯の雰囲気そのもので、サウナから帰ったときに読めば脳内でもう一度「ととのったー!」を味わえてお得。サウナ開眼の追体験なら原典ともいえる「サ道(2011)」が、踏み入ったサウナ体験の違いを知りたいなら「マンガ サ道(2016)」がおすすめです。最近は公衆浴場でこのサ道ポスターも多く見かけるようになった。この絵柄にピンときたら、気になる扉を開けてみないか?

文=本多正徳
1980年、広島生まれ。専門出版社勤務。マンガナイトではすっかりイジラれ担当になってしまった最近(!?)。男子校の寮でマンガの面白さに目覚めました。好きなジャンルはガロ系とヘタウマ系。藤子不二雄やつげ義春、水木しげるなどの古典的ナンバーも得意。心のマンガは『ダンドリくん(泉昌之)』『サルでも描けるまんが教室(相原コージ、竹熊健太郎)』でしょうか… ほかの趣味は読書、囲碁・将棋と悲しいほどのインドア派。ウェブサイト/グッズ制作を担当。

アンダーカレント

何も言わずに彼は失踪した──。若夫婦で営んできた町の銭湯に1人残された「あたし」の話。自分は身近な人のことをどこまで分かっているのだろう、そもそも分かることなんて可能なのか、必要なのか?といつしか考えさせられる。一瞬の表情が切り取られているコマが多いため、この人は今何を思っているのだろう、と自然と物語に入り込むことができる。また、「何故銭湯が舞台なのか?」という視点から読むと、日常性の象徴や不特定多数の人の交流の場という舞台装置としての銭湯の特徴が見えてくるようで興味深い。

文=青柳拓真
1992年生。10代の多くをシンガポールで過ごす。何度も読み返してきた漫画は「ジョジョの奇妙な冒険」、「鈴木先生」、「それでも町は廻っている」、「三月のライオン」、「魔人探偵脳噛ネウロ」など。漫画の面白さって何なんだろう、「漫画」ってどう定義できるんだろう…とか色んな作品を読んで考えるのが楽しい。オールラウンドなマンガ読みを目指して最近は恐る恐る少女漫画に挑戦中。

昼のセント酒

仕事は終わったことにして、昼間っから銭湯につかり、そのままビール!…という背徳感をがっつりと楽しめるマンガ。主人公が「…申し訳ない!」と思いながらも、満面の笑みを浮かべて風呂につかるその姿は、まじめに働いている人々にとって敵以外の何ものでもないが、いつか1度でいいから実践してみたくなる魅力がある。ちなみに、孤独のグルメの原作者・久住昌之さんが書いたエッセイをもとにドラマ化したものを、コミカライズしたという経緯。実在する銭湯や飲食店が登場するので、都内銭湯のガイドマップとしてもぜひ。

文=松尾奈々絵
1992年生まれ。少女漫画から青年漫画まで好きです。趣味は野球観戦。

湯遊ワンダーランド

サウナのあとはご飯が美味しい――。前半は水風呂に入れなかった作者が、最後にはトリップ状態になれるまで成長する?作品。まず4ページ目にはサウナの入り方が解説してあり、作中では各所に存在する〝ボス〟との付き合い方などのマナーが参考になる。基本的に狂気に満ち、人を選ぶ本作。そんな作者でも「銭湯で私の人生変わったかな?」「あ~いい風超気持ちいい これぞ銭湯効果」「うん、こういうので十分だな」と語っているほどに、風呂とサウナの素晴らしさが集約されています。

文=旨井旬一
1978年、山形県山形市生まれ。業界新聞記者歴16年、グルメマンガ蒐集家。取材で主に担当してきた分野はバイオテクノロジーとスマート農業。特に畜産の和牛改良や蜜蜂不足問題、豚コレラ対応など。好きな食べ物は、冷やしたぬき蕎麦。

天国大魔境

石黒正数待望の最新作。壁に囲まれた謎の施設で外の世界に興味を抱くトキオと、「大災害」から15年後の荒涼とした日本を生きるマルとキルコの視点が相互に描かれる。1巻の時点では謎が謎を呼ぶ展開。しかしそこは石黒正数、見事着地を決めることは間違いない。何度も読み返して想像を膨らませつつ次巻を待つ…。1巻しか出ていない今だからこそできる楽しみ方を満喫したい。

文=青柳拓真
1992年生。10代の多くをシンガポールで過ごす。何度も読み返してきた漫画は「ジョジョの奇妙な冒険」、「鈴木先生」、「それでも町は廻っている」、「三月のライオン」、「魔人探偵脳噛ネウロ」など。漫画の面白さって何なんだろう、「漫画」ってどう定義できるんだろう…とか色んな作品を読んで考えるのが楽しい。オールラウンドなマンガ読みを目指して最近は恐る恐る少女漫画に挑戦中。

Present for me 石黒正数短編集

代表作の『それでも町は廻っている』3巻と同時に発売された、石黒正数初の短編集。カラッとしていて「すこし・ふしぎ」、最後の1ページで「おお…」とうならされる独特の作風が初期から確立していたことがよくわかる。コミカルな収録作たちの中では、表題作のしっとりとした感動が際立つ。

文=鈴木史恵
1986年2月生まれ、千葉県出身。おもちゃメーカー勤務を経て編集・執筆業へ。マンガ好きとしての原点は物心つく以前から触れてきた手塚治虫と藤子・F・不二雄。24年組、80年代ニューウェーブ、ガロ系、それらの系譜にある青年マンガを中心に、面白そうなものは何でも読みます。マンガ以外の趣味は好きなバンドのライブや映画鑑賞など。

ネムルバカ

モラトリアムの大学生の漫画といえばこれ。バンドに打ち込んでいつも金欠な先輩と、やりたいことがみつからず、もやもやだらだらな日々を過ごす後輩の日常譚。大学を卒業した今、大学の友だちと久しぶりに飲みに行くような気分になる1冊です。

文=松尾奈々絵
1992年生まれ。少女漫画から青年漫画まで好きです。趣味は野球観戦。

ポジティブ先生

「正義」の味方って誰の味方? 透明人間になれたら本当に嬉しい? 人間並みの知能を持ったロボットが誕生したらどうなる? アイディア自体はよくあるものでも、石黒正数のユーモアあふれる調理が絶品。『それ町』主人公の嵐山歩鳥というキャラクターが誕生した作品も収録でお得感満載の一作。

文=青柳拓真
1992年生。10代の多くをシンガポールで過ごす。何度も読み返してきた漫画は「ジョジョの奇妙な冒険」、「鈴木先生」、「それでも町は廻っている」、「三月のライオン」、「魔人探偵脳噛ネウロ」など。漫画の面白さって何なんだろう、「漫画」ってどう定義できるんだろう…とか色んな作品を読んで考えるのが楽しい。オールラウンドなマンガ読みを目指して最近は恐る恐る少女漫画に挑戦中。

響子と父さん

定年退職して1年の父と長女響子の日々。大抵のことはかみ合わないが、大事なところは理解しあえている父と娘の「絶妙な距離感」が温かい。響子と対照的に家出中の次女春香、そして大体旅行中の妻の存在も相まって、家族というつながりについて考えさせられる。1巻完結だが、『ネムルバカ』とつながりがあるところもファンにはたまらない。

文=青柳拓真
1992年生。10代の多くをシンガポールで過ごす。何度も読み返してきた漫画は「ジョジョの奇妙な冒険」、「鈴木先生」、「それでも町は廻っている」、「三月のライオン」、「魔人探偵脳噛ネウロ」など。漫画の面白さって何なんだろう、「漫画」ってどう定義できるんだろう…とか色んな作品を読んで考えるのが楽しい。オールラウンドなマンガ読みを目指して最近は恐る恐る少女漫画に挑戦中。

外天楼

笑えて、泣けて、鳥肌。てんでバラバラなエピソードが急速に収束していく快感。圧倒的な構成力と、それを読者に悟らせない演出力。セリフの一言一言に潜むユーモア。こんなマンガを描ける人の頭は一体どうなっているのだろう。稀代のストーリーテラー、石黒正数のエッセンスが詰まったこの作品から、あなたもぜひ石黒ワールドへ。

文=青柳拓真
1992年生。10代の多くをシンガポールで過ごす。何度も読み返してきた漫画は「ジョジョの奇妙な冒険」、「鈴木先生」、「それでも町は廻っている」、「三月のライオン」、「魔人探偵脳噛ネウロ」など。漫画の面白さって何なんだろう、「漫画」ってどう定義できるんだろう…とか色んな作品を読んで考えるのが楽しい。オールラウンドなマンガ読みを目指して最近は恐る恐る少女漫画に挑戦中。

それでも町は廻っている

石黒正数代表作。突然メイド喫茶になった喫茶店シーサイドで働く嵐山歩鳥の高校3年間の物語。SFあり、人情あり、ユーモアあり、ホラーあり…。既存のジャンルに当てはめることは難しいが、日々の生活のふとした面白さを、マンガというメディアだからこそできる形で提示してくれる本作。何度読んでも新しい発見があり、「廻」り続けるそれ町の世界はいつ訪れても最高に魅力的。

文=青柳拓真
1992年生。10代の多くをシンガポールで過ごす。何度も読み返してきた漫画は「ジョジョの奇妙な冒険」、「鈴木先生」、「それでも町は廻っている」、「三月のライオン」、「魔人探偵脳噛ネウロ」など。漫画の面白さって何なんだろう、「漫画」ってどう定義できるんだろう…とか色んな作品を読んで考えるのが楽しい。オールラウンドなマンガ読みを目指して最近は恐る恐る少女漫画に挑戦中。

音楽と漫画

「ヒマだからバンドやってみっか」楽器をまったく知らない不良3人が始めた音楽は、ベース2本とドラムをただ無心に弾き続けるめちゃくちゃなものだった。歌もメロディもコードもない。けど3人は「カッコよくね?」「気持ちいい」と己の演奏に惚れこむ。やり続けていたら「男らしい」「前衛的」と支持者が現れ始め……技術とかビジュアルとかオーラとかではない、ロックの原始的な魅力がここにある!

文=黒木貴啓
1988年生、鹿児島出身、東京在住のライター。マンガナイトでは執筆を担当してます。ロックンロール、もしくは仮面が題材の漫画を収集&研究中。大橋裕之「音楽と漫画」、榎屋克優「日々ロック」、そして何よりハロルド作石「BECK」……日本人が成したことないロックの魔法を漫画のキャラが見せてくれるところに、希望を感じてしまいます。

ソウナンですか?

巷には「女子高生×〇〇」系のマンガが数多くある。はいはい、萌え系ね、可愛い女の子を出せば売れると思ってんだろ、興味ないよ…と敬遠することなかれ。女子高生はあくまで入口を広げるツールであって、「×〇〇」の部分にこそ作者の真の熱量が潜んでいるのだ。その点自らの猟師としての日々を綴った『山賊ダイアリー』の作者、岡本健太郎先生が原作に入った本作のガチ度は折り紙付き。ぜひ手に取ってセミの食べ方等実践的アウトドアスキルを学んでください。なお、私は表紙につられてジャケ買いしました。

文=青柳拓真
1992年生。10代の多くをシンガポールで過ごす。何度も読み返してきた漫画は「ジョジョの奇妙な冒険」、「鈴木先生」、「それでも町は廻っている」、「三月のライオン」、「魔人探偵脳噛ネウロ」など。漫画の面白さって何なんだろう、「漫画」ってどう定義できるんだろう…とか色んな作品を読んで考えるのが楽しい。オールラウンドなマンガ読みを目指して最近は恐る恐る少女漫画に挑戦中。

ハチミツとクローバー

高校のころ初めて読んだときには「片思いっていいよね」くらいに思っていたけど、歳を重ねて読み方が変わってきました。一見甘い砂糖菓子でコーティングされているから、「ゆるふわ恋愛漫画」だと思われがちだけど、内面をきつくえぐってくる作品。「才能がなければもがくしかない」、「お金がなければ大切な人も支えられない」。そのシビアな世界を伝えてくれました。生きていくための一冊です。

文=ユハラカナ
ユハラです。 ふだんはIT企業で働いてます。小説アニメ漫画短詩、なんでもいけます。ジャンル問わず嗜みますが、起承転結のない淡々とした物語を好む傾向があります。ほかには和の文化にも興味があります。座禅とか盆栽とか。ユパというあだ名がつきやすく、ユパ様と呼ばれがちですが、ただの一般人です。

半神

腰のところがつながって生まれた双子の少女、ユージ―とユーシー。ふたりは体の機能を共有していて、ユージーは賢いけれども栄養状態が悪く、ユーシーは知能は低いけれども天使のように愛らしい美貌の持ち主。生まれてから16年の間にふたりの身に起こった出来事が、ユージ―の視点で淡々と語られます。中学生の時に初めて読んで、たった16ページのマンガで、こんなにも深く人間の業について考えさせられたことに衝撃を受けました。マンガという表現の持つ力を実感した作品です。

文=鈴木史恵
1986年2月生まれ、千葉県出身。おもちゃメーカー勤務を経て編集・執筆業へ。マンガ好きとしての原点は物心つく以前から触れてきた手塚治虫と藤子・F・不二雄。24年組、80年代ニューウェーブ、ガロ系、それらの系譜にある青年マンガを中心に、面白そうなものは何でも読みます。マンガ以外の趣味は好きなバンドのライブや映画鑑賞など。

鈴木先生

絶対的な正しさの存在をぼんやりと信じていた中学生の私に、物事にはグレーゾーンがあるということを教えてくれた作品。中学校教員の鈴木先生が生徒の悩みを解決していく…とだけいえばよくありそうな話ですが、『鈴木先生』のすごいのは問題の本質をひたすら考え抜くことから全てが始まること。「常識」に与せず徹底的に考え、その信念に基づいて行動する。自分の頭で考えるとはどういうことか、私は鈴木先生に教えてもらいました。

文=青柳拓真
1992年生。10代の多くをシンガポールで過ごす。何度も読み返してきた漫画は「ジョジョの奇妙な冒険」、「鈴木先生」、「それでも町は廻っている」、「三月のライオン」、「魔人探偵脳噛ネウロ」など。漫画の面白さって何なんだろう、「漫画」ってどう定義できるんだろう…とか色んな作品を読んで考えるのが楽しい。オールラウンドなマンガ読みを目指して最近は恐る恐る少女漫画に挑戦中。

BASARA

20世紀の文明が滅んだあとの日本を舞台に、各地の独立状態から人々が革命軍と旧体制で国づくりをしてく作品。王が突然戦場で「王を辞める」と言う場面があります。兵士たちは困るじゃないですか。それで兵士が「どうすればいいですか?」と聞くと「そんなこと自分で考えろ」って言われるんですよ。超個人主義の世界観ですよね。「最終的に人生を決めるのは自分しかいない」というメッセージは、学生時代に友人が少なかった私に強く響きました。

文=bookish
1981年生まれ。「ドラえもん」「ブラック・ジャック」から「週刊少年ジャンプ」へと順当なまんが道を邁進。途中で「りぼん」「なかよし」「マーガレット」も加わりました。主食はいまでも少年マンガですが、おもしろければどんなジャンルも読むので常におもしろい作品を募集。歴史や壮大な物語をベースにしたマンガが好み。マンガ評論を勉強中。マンガナイト内では「STUDIOVOICE」のコラムなど書き物担当になっています。マンガ以外の趣味は、読書に舞台鑑賞。最近はサイクリングも。

NATURAL

マンガにハマるきっかけとなった『セーラームーン』、海外育ちのわたしに良い東京指南書となった『こち亀』など選びきれないが、帰国して高校にも日本の環境にも馴染めなかったわたしに大切なことを教えてくれたのがこの作品。主人公がペルーから日本の養子に入るところから始まる。育った環境も価値観も何もかも違う中で、沢山の人に出会い成長していく。とにかく作者の視線は繊細で優しく、しかし客観的な冷静さで登場人物たちを包み込む。「還る」場所を探していた自分に静かに染み渡り、今でも核になっている。

文=ヤマダナナコ
広島生まれ、マレーシア育ち、東京在住。 マンガナイトでは偶にイベントに参加したり、こっそり執筆したりしています。 兄の影響で少年ジャンプから漫画の世界に入り込み、その後なかよしやりぼんで育ちました。今では何でも読む雑食。 無条件で手に取るのは、いくえみ綾、吉田秋生、成田美名子、古谷実あたりの作家さん。 甘いものが大好き。食べ物を与えられていれば大体ご機嫌です。

曽田正人の作品はどれも好きだけど、大学生のときにタイムリーに読んでいたのが『昴』。ゴールが見えない中での天才の苦悩や葛藤を描いている作品です。自分も会社を興して人をひっぱっていく立場になったとき、自分一人の考えで進めていってしまうと、いつかは人が離れていって、自滅していってしまのではないか。たとえどれほどの天才でも、周りのサポートがないと社会でうまくやっていくのは難しいということを教えてくれます。

文=山内康裕
1979年生。法政大学イノベーションマネジメント研究科修了(MBA in accounting)。 2009年、マンガを介したコミュニケーションを生み出すユニット「マンガナイト」を結成し代表を務める。 イベント・ワークショップ・デザイン・執筆・選書(「このマンガがすごい!」等)を手がける。 また、2010年にはマンガ関連の企画会社「レインボーバード合同会社」を設立し、“マンガ”を軸に施設・展示・販促・商品等のコンテンツプロデュース・キュレーション・プランニング業務等を提供している。 主な実績は「立川まんがぱーく」「東京ワンピースタワー」「池袋シネマチ祭2014」「日本財団これも学習マンガだ!」「アニメorange展」等。 「さいとう・たかを劇画文化財団」理事、「国際文化都市整備機構」監事も務める。共著に『『ONE PIECE』に学ぶ最強ビジネスチームの作り方(集英社)』、『人生と勉強に効く学べるマンガ100冊(文藝春秋)』等。

TRIGUN MAXIMUM

この作品の主人公は「絶対に人を殺さない」ことを信条に掲げている。相手が自分や誰かを殺そうとする悪人でもだ。漫画の舞台は地球ではない砂漠の国。生きていくのも困難な環境。偽善者だと人にののしられながらも、主人公はその困難な道を選びつづけている。誰も不幸にならないよう考えられる最善の道を、ボロボロになり苦しみながらも進んでいこうとする姿は、高校生のときに初めて読んで衝撃を受けた。自分もこうなりたいと憧れる永遠のヒーローです。

文=松尾奈々絵
1992年生まれ。少女漫画から青年漫画まで好きです。趣味は野球観戦。

ねじ式

高校は男子校で、寮に住んでいて、寮の中で漫画が回ってくるのが日常でした。すごくたくさんの量があったけど、その中でも天久聖一の作品と『ねじ式』と『サルでも描けるまんが教室』は特に記憶に残っていて。『ねじ式』は、絵のきれいさとか、文芸的な間の取り方が、ほかにはなくて革新的でした。今の自分の趣味嗜好の形成は、その寮生活のなかで作られたと思います。

文=本多正徳
1980年、広島生まれ。専門出版社勤務。マンガナイトではすっかりイジラれ担当になってしまった最近(!?)。男子校の寮でマンガの面白さに目覚めました。好きなジャンルはガロ系とヘタウマ系。藤子不二雄やつげ義春、水木しげるなどの古典的ナンバーも得意。心のマンガは『ダンドリくん(泉昌之)』『サルでも描けるまんが教室(相原コージ、竹熊健太郎)』でしょうか… ほかの趣味は読書、囲碁・将棋と悲しいほどのインドア派。ウェブサイト/グッズ制作を担当。

日々ロック

主人公のいじめられっ子高校生が、文化祭でライブする場面。不良にスコップで頭をぶっ叩かれて血みどろになりながらも、笑顔&パンツ一丁でロックンロールを歌い続ける。すると別のいじめられっ子がライブ会場の体育館を重機で破壊しに来る。常識を破るロックステージの連続で、就活期にコンビニで立ち読みした時、脳天に電流が走った。志望するメディア企業に落ちまくっていてほかの業界に就こうか悩んでいるところに、一時フリーターになってもいいから挑戦してみよう、というエネルギー、勇気を与えてくれた。

文=黒木貴啓
1988年生、鹿児島出身、東京在住のライター。マンガナイトでは執筆を担当してます。ロックンロール、もしくは仮面が題材の漫画を収集&研究中。大橋裕之「音楽と漫画」、榎屋克優「日々ロック」、そして何よりハロルド作石「BECK」……日本人が成したことないロックの魔法を漫画のキャラが見せてくれるところに、希望を感じてしまいます。

GIANT KILLING

「普通に考えたら出来なさそうなことをひっくり返して、ワクワク感を持ちながら過ごしていきたい」。そのスタンスを学べる作品。あきらめないでチャレンジすることを伝えてくれます。印象に残っているのは、主人公の監督から選手に言った「ピッチに立つ以上 誰一人手ぶらで帰ってくるんじゃねえぞ!」というセリフ。自分も何かをする以上、ちょっとずつ進んでいくんだ、と読むたびにモチベーションが上がります。

kiji
文=木嶋雅史
1981年千葉県生まれ、立川在住。ITサービスに従事するかたわら、趣味の自転車で多摩中を巡っている。メンバー中最もマンガを読んでいない部類に入り、普段はもっぱら活字派だが、マンガナイトのオススメマンガを手に取るうちにマンガのおもしろさにはまり始めた今日この頃。ジャンプやマガジン世代で仮面ライダーが好き。最近はのりりんも好き。マンガナイトの他、奥多摩トレックリングという日帰りレンタサイクルツアーも定期的に開催している行動派。

Spirit of Wonder

男の子のための本です。高校生の時に読んでから、もう何冊も購入しています。世界の不思議(wonder)に対する探究心(spirit)がテーマで。世界を構成する見えないエネルギーを信じている世界で、そういうエネルギーを使った世界をつくることなどを描いています。僕にもめでたく子供が生まれて、子育てをしていると、子供にはそういう見えない面白いものが見えているんだなと最近実感していて。大人になるとなくなっていく、そういう感覚を思い出させてくれる作品です。

ohta
文=凹田カズナリ
街の文化を支える書店チェーンで勤務。平和台→早稲田→五反田店でコミック担当を歴任。現場で仕入れた知識を広めるべくマンガナイトにも参画。2011年~「このマンガがすごい!」「このマンガを読め」にもアンケートを寄稿。日本橋ヨヲコ、鶴田謙二、長田悠幸、阿部共実、きくち正太、山田穣、谷川史子、堀井貴介、沙村広明、松本藍、篠房六郎(敬称略・順不同)を筆頭にオールジャンル好きな漫画多数。

日出処の天子

小学生の私は、物語というものは、誰かが幸せになったり、成長したりするキッパリとしたオチが必要だと思っていた。「火曜日にコンビニに行くと既にジャンプが無い!」というジャンプ黄金期に育てられた私は、オチがないと物語がある意味がないじゃない! ぐらいに感じていたのだ。努力、友情で勝利だぜ! でも『日出処の天子』は、本物の名作とは、そんなところとは別のところにあるんだ、と教えてくれた。誰も幸せにならない、誰も成長しない終わり方。でもこの物語は美しい! と初めて感じたマンガ。

文=大阪れい

モテない女は罪である

まず、刺激的なタイトルが好き。帯のコピーも秀逸。「あなたは、いつまで愛されないという罰を受け続けるのか」…だぜ? 女どもを煽る煽る。テーマは男が語る「女がモテるための秘密」らしいけど、そんなチープなノウハウ本じゃない。「洞察することのできる力」をどのようにして養うのか。ボロボロになりながら「山よ!銀河よ!俺の歌を聴け!!」と描きあげられた作品。マクロスの世界にこの本があったなら、戦争は起こらなかったかもしれない。超時空シンデレラを目指せる1冊です。結婚相談所のアドバイザーは全員読め!

文=小谷中宏太
1991年生。千葉県市川市出身。普段は、行政機関や不動産デベロッパー等に対して「人が集まり、賑わいが生まれる場」を企画・提案する仕事をしています。マンガナイトに参画した理由は、仕事の一環として、マンガが持つコミュニケーションツールとしての可能性に注目していたこともありますが、やはりマンガやアニメについて思いっきり語れる「場」に居たいということと、自分もそんな「場」を創ることに対して、力になりたいと思ったからかもしれません。マンガナイトではワークショップの運営と「日替わり推しマン」の執筆が中心ですが、何でもやります。お気軽にご連絡下さい。

ヘルタースケルター

高校生のときにヴィレッジヴァンガードで平積みにされていて、表紙のインパクトに思わず手に取った。それが初めての岡崎京子との出会い。
主人公のりりこはトップモデルで誰もが憧れる存在。でも本人は圧倒的な孤独を持て余し、自分でもくだらないと思う行動ばかりとってしまう。
美容整形の副作用や仕事のストレスで、心身ともに蝕まれていき……でも、全て自分の選んできた道であり「進むしかない」と突っ走る。
自分の好きなように生きていいんだ、と、読むたびに彼女の力強さに鼓舞されます。

文=山口文子
1985年生まれ。映画制作を目指して迷走中。歌も詠む。マンガナイト見習いで、執筆などをお手伝い。 女子高時代、魚喃キリコの『短編集』をきっかけに、安野モヨコ、南Q太などフィールヤング系を読みあさる。その後、友達と「週10冊ずつオススメ漫画を交換する」修行を数ヶ月行い、興味のベクトルが全方向へ。 思い入れの強い漫画に『BANANA FISH』、『動物のお医者さん』、『ナンバー吾』。岡崎京子の影響を受け続けて今に至る。