『ナチュン』や『ムシユヌン』などで知られる都留泰作先生の最新作は、マンガジャンルとしては珍しい「歴史ファンタジー」。1巻はまだ物語が始まったばかりという展開ですが物語の随所でいわゆる「都留節」は炸裂。都留先生にしか描けない独特の作風だと思います。日本のようで日本ではない世界設定が、今後の展開でどう生かされるのか楽しみです。それにしても1巻でこんなことになっちゃったけど、夫は今後どうなってしまうのだろう……。
東京トイボクシーズ(1)
東京トイボックスシリーズ最新作は、入学希望者数の下げ止めのために「eスポーツ科」を新設した高校が舞台。これまでのシリーズを読んだ方はもちろん、東京トイボックスシリーズを読んだことがないという方も楽しめます。「今この場にいる誰よりも稼いでいるのは自分たちだ」と言い切る主人公・安曇野蓮のセリフ、格闘ゲームでコマンドを入力できた喜びなど、胸が熱くなるスポーツマンガとしてぜひ手に取ってみてください。
ダメ彼を訴えます!!
共有の光熱費からお金をとられ、殴られて鼻を骨折して全治4週間…。結婚を約束して同棲していた彼氏を裁判で訴えた様子を描いたエッセイマンガ。事件が発生してからどのような手順で、どのような苦労があったのかが丁寧に描かれているので、先にマンガを読んでおいて、いざというときに「そういえば…」と思い出せたら心強い一冊です。
東京銭湯パラダイス
東京に実在する銭湯のレポ漫画を13本収録。「布を買いに日暮里へ行ったら、偶然『斉藤湯』という銭湯を見つけて入浴したけど、白が基調でめっちゃきれい、BGMのジャズがよい、シャワーの上がガラス張りになってた」など、日常からなめらかにその銭湯独自の魅力をレポートしていく。手塚治虫、さくらももこみたいな漫画らしくのびのびとした絵柄が楽しく、気づいたらその銭湯に行きたくなっています。
ゆとのと
亡くなった祖父は、なぜ最後にこの銭湯の絵を描いていたのか――天涯孤独の身となったOLの湊は、祖父の想いを探るべく大阪の銭湯へ。突然出会った男の子に導かれ、知られざる銭湯の魅力、大阪の下町、そして自分のルーツを知ることになる。作者が銭湯の番台さんだけあり、大阪の銭湯文化が隅々に配された濃密な銭湯ストーリー漫画。
ふろがーる!
仕事のデキる25歳OL・生実野(さゆみの)による様々なお風呂体験を描いた漫画。
季節に合わせたお家風呂から、バイクでの日本各地の温泉地巡り、そしてついには海外・ドイツにまで…!
お風呂を通じた温かい人達との交わりも見所。
日々の忙しさにやられ、お風呂につかることが少ないあなた。
疲れが溜まっているからこそ、お風呂を堪能してみては。
全3巻となっており、とてもさっくりと読めるのでおススメ。
のの湯
浅草で人力車の車夫をしているヒロイン、鮫島野乃。風呂なし(共同入浴券つき)の格安アパートに住むことになった彼女は、同居人で大家の孫の岫子、留学生のアリッサと共に様々な銭湯を開拓していく。お湯より熱い野乃の銭湯愛と、3人の楽しいガールズトークが見どころです。そして原案協力が久住昌之さんということで、実在の銭湯はもちろん、おいしいグルメスポットまでわかるたいへんお得な内容になっています。
お湯の中で、口も心もふやかしちゃってください!
おふろどうぞ
「前にセックスしたのいつだっけ」「『好きだ』って言われたのいつだっけ」50歳既婚の編集者に迫られ、家の湯船で気持ちを整理する35歳の独身イラストレーター。本作は「おふろ」という身も心も裸になる非日常空間を舞台に、異なる人間ドラマを7本収録。母が知らない男と入っていった旅館で、尾行に付き合ってくれたセックスレス中の彼氏と入る個室風呂。部下や妻へのストレスが頂点に達し、仕事をサボって入るスーパー銭湯。心身リラックスするおふろだからこそ、外界と遮断されたおふろだからこそ、湧きあがる思いを切り取る。
エルフ湯つからば
未知のものと戦い、お宝を探す異世界の冒険者の物語。わくわく読みながら現代人として気になるのは「この人たち、いつお風呂に入るのだろう」ということ。そんな疑問に応えてくれるのが本作。
まるで幻のオアシスのように、心身ともに疲弊した冒険者の前だけに現れ、圧倒的なお風呂力で冒険者を生まれ変わらせる「エルフ湯」。知恵とパワーを持つ店主が独自に配合する薬湯は、その効能の但し書きでマンガの登場人物だけでなく、読者の私たちの癒しにも。
読み進めていくうちに、自然とお風呂の力を再認識し、入浴が恋しくなります。
マンガ サ道―マンガで読むサウナ道
浴室の片隅にひっそり佇む木の扉、その向こうに広がる新しい体験世界とは?ざっくりだがドラッギーな絵柄と軽快なセリフ回しは気取らない銭湯の雰囲気そのもので、サウナから帰ったときに読めば脳内でもう一度「ととのったー!」を味わえてお得。サウナ開眼の追体験なら原典ともいえる「サ道(2011)」が、踏み入ったサウナ体験の違いを知りたいなら「マンガ サ道(2016)」がおすすめです。最近は公衆浴場でこのサ道ポスターも多く見かけるようになった。この絵柄にピンときたら、気になる扉を開けてみないか?
アンダーカレント
何も言わずに彼は失踪した──。若夫婦で営んできた町の銭湯に1人残された「あたし」の話。自分は身近な人のことをどこまで分かっているのだろう、そもそも分かることなんて可能なのか、必要なのか?といつしか考えさせられる。一瞬の表情が切り取られているコマが多いため、この人は今何を思っているのだろう、と自然と物語に入り込むことができる。また、「何故銭湯が舞台なのか?」という視点から読むと、日常性の象徴や不特定多数の人の交流の場という舞台装置としての銭湯の特徴が見えてくるようで興味深い。
昼のセント酒
仕事は終わったことにして、昼間っから銭湯につかり、そのままビール!…という背徳感をがっつりと楽しめるマンガ。主人公が「…申し訳ない!」と思いながらも、満面の笑みを浮かべて風呂につかるその姿は、まじめに働いている人々にとって敵以外の何ものでもないが、いつか1度でいいから実践してみたくなる魅力がある。ちなみに、孤独のグルメの原作者・久住昌之さんが書いたエッセイをもとにドラマ化したものを、コミカライズしたという経緯。実在する銭湯や飲食店が登場するので、都内銭湯のガイドマップとしてもぜひ。
湯遊ワンダーランド
サウナのあとはご飯が美味しい――。前半は水風呂に入れなかった作者が、最後にはトリップ状態になれるまで成長する?作品。まず4ページ目にはサウナの入り方が解説してあり、作中では各所に存在する〝ボス〟との付き合い方などのマナーが参考になる。基本的に狂気に満ち、人を選ぶ本作。そんな作者でも「銭湯で私の人生変わったかな?」「あ~いい風超気持ちいい これぞ銭湯効果」「うん、こういうので十分だな」と語っているほどに、風呂とサウナの素晴らしさが集約されています。
天国大魔境
石黒正数待望の最新作。壁に囲まれた謎の施設で外の世界に興味を抱くトキオと、「大災害」から15年後の荒涼とした日本を生きるマルとキルコの視点が相互に描かれる。1巻の時点では謎が謎を呼ぶ展開。しかしそこは石黒正数、見事着地を決めることは間違いない。何度も読み返して想像を膨らませつつ次巻を待つ…。1巻しか出ていない今だからこそできる楽しみ方を満喫したい。
Present for me 石黒正数短編集
代表作の『それでも町は廻っている』3巻と同時に発売された、石黒正数初の短編集。カラッとしていて「すこし・ふしぎ」、最後の1ページで「おお…」とうならされる独特の作風が初期から確立していたことがよくわかる。コミカルな収録作たちの中では、表題作のしっとりとした感動が際立つ。
ネムルバカ
モラトリアムの大学生の漫画といえばこれ。バンドに打ち込んでいつも金欠な先輩と、やりたいことがみつからず、もやもやだらだらな日々を過ごす後輩の日常譚。大学を卒業した今、大学の友だちと久しぶりに飲みに行くような気分になる1冊です。
ポジティブ先生
「正義」の味方って誰の味方? 透明人間になれたら本当に嬉しい? 人間並みの知能を持ったロボットが誕生したらどうなる? アイディア自体はよくあるものでも、石黒正数のユーモアあふれる調理が絶品。『それ町』主人公の嵐山歩鳥というキャラクターが誕生した作品も収録でお得感満載の一作。
響子と父さん
定年退職して1年の父と長女響子の日々。大抵のことはかみ合わないが、大事なところは理解しあえている父と娘の「絶妙な距離感」が温かい。響子と対照的に家出中の次女春香、そして大体旅行中の妻の存在も相まって、家族というつながりについて考えさせられる。1巻完結だが、『ネムルバカ』とつながりがあるところもファンにはたまらない。
外天楼
笑えて、泣けて、鳥肌。てんでバラバラなエピソードが急速に収束していく快感。圧倒的な構成力と、それを読者に悟らせない演出力。セリフの一言一言に潜むユーモア。こんなマンガを描ける人の頭は一体どうなっているのだろう。稀代のストーリーテラー、石黒正数のエッセンスが詰まったこの作品から、あなたもぜひ石黒ワールドへ。
それでも町は廻っている
石黒正数代表作。突然メイド喫茶になった喫茶店シーサイドで働く嵐山歩鳥の高校3年間の物語。SFあり、人情あり、ユーモアあり、ホラーあり…。既存のジャンルに当てはめることは難しいが、日々の生活のふとした面白さを、マンガというメディアだからこそできる形で提示してくれる本作。何度読んでも新しい発見があり、「廻」り続けるそれ町の世界はいつ訪れても最高に魅力的。
音楽と漫画
「ヒマだからバンドやってみっか」楽器をまったく知らない不良3人が始めた音楽は、ベース2本とドラムをただ無心に弾き続けるめちゃくちゃなものだった。歌もメロディもコードもない。けど3人は「カッコよくね?」「気持ちいい」と己の演奏に惚れこむ。やり続けていたら「男らしい」「前衛的」と支持者が現れ始め……技術とかビジュアルとかオーラとかではない、ロックの原始的な魅力がここにある!
ソウナンですか?
巷には「女子高生×〇〇」系のマンガが数多くある。はいはい、萌え系ね、可愛い女の子を出せば売れると思ってんだろ、興味ないよ…と敬遠することなかれ。女子高生はあくまで入口を広げるツールであって、「×〇〇」の部分にこそ作者の真の熱量が潜んでいるのだ。その点自らの猟師としての日々を綴った『山賊ダイアリー』の作者、岡本健太郎先生が原作に入った本作のガチ度は折り紙付き。ぜひ手に取ってセミの食べ方等実践的アウトドアスキルを学んでください。なお、私は表紙につられてジャケ買いしました。
ハチミツとクローバー
高校のころ初めて読んだときには「片思いっていいよね」くらいに思っていたけど、歳を重ねて読み方が変わってきました。一見甘い砂糖菓子でコーティングされているから、「ゆるふわ恋愛漫画」だと思われがちだけど、内面をきつくえぐってくる作品。「才能がなければもがくしかない」、「お金がなければ大切な人も支えられない」。そのシビアな世界を伝えてくれました。生きていくための一冊です。
半神
腰のところがつながって生まれた双子の少女、ユージ―とユーシー。ふたりは体の機能を共有していて、ユージーは賢いけれども栄養状態が悪く、ユーシーは知能は低いけれども天使のように愛らしい美貌の持ち主。生まれてから16年の間にふたりの身に起こった出来事が、ユージ―の視点で淡々と語られます。中学生の時に初めて読んで、たった16ページのマンガで、こんなにも深く人間の業について考えさせられたことに衝撃を受けました。マンガという表現の持つ力を実感した作品です。
鈴木先生
絶対的な正しさの存在をぼんやりと信じていた中学生の私に、物事にはグレーゾーンがあるということを教えてくれた作品。中学校教員の鈴木先生が生徒の悩みを解決していく…とだけいえばよくありそうな話ですが、『鈴木先生』のすごいのは問題の本質をひたすら考え抜くことから全てが始まること。「常識」に与せず徹底的に考え、その信念に基づいて行動する。自分の頭で考えるとはどういうことか、私は鈴木先生に教えてもらいました。
BASARA
20世紀の文明が滅んだあとの日本を舞台に、各地の独立状態から人々が革命軍と旧体制で国づくりをしてく作品。王が突然戦場で「王を辞める」と言う場面があります。兵士たちは困るじゃないですか。それで兵士が「どうすればいいですか?」と聞くと「そんなこと自分で考えろ」って言われるんですよ。超個人主義の世界観ですよね。「最終的に人生を決めるのは自分しかいない」というメッセージは、学生時代に友人が少なかった私に強く響きました。
NATURAL
マンガにハマるきっかけとなった『セーラームーン』、海外育ちのわたしに良い東京指南書となった『こち亀』など選びきれないが、帰国して高校にも日本の環境にも馴染めなかったわたしに大切なことを教えてくれたのがこの作品。主人公がペルーから日本の養子に入るところから始まる。育った環境も価値観も何もかも違う中で、沢山の人に出会い成長していく。とにかく作者の視線は繊細で優しく、しかし客観的な冷静さで登場人物たちを包み込む。「還る」場所を探していた自分に静かに染み渡り、今でも核になっている。
昴
曽田正人の作品はどれも好きだけど、大学生のときにタイムリーに読んでいたのが『昴』。ゴールが見えない中での天才の苦悩や葛藤を描いている作品です。自分も会社を興して人をひっぱっていく立場になったとき、自分一人の考えで進めていってしまうと、いつかは人が離れていって、自滅していってしまのではないか。たとえどれほどの天才でも、周りのサポートがないと社会でうまくやっていくのは難しいということを教えてくれます。
TRIGUN MAXIMUM
この作品の主人公は「絶対に人を殺さない」ことを信条に掲げている。相手が自分や誰かを殺そうとする悪人でもだ。漫画の舞台は地球ではない砂漠の国。生きていくのも困難な環境。偽善者だと人にののしられながらも、主人公はその困難な道を選びつづけている。誰も不幸にならないよう考えられる最善の道を、ボロボロになり苦しみながらも進んでいこうとする姿は、高校生のときに初めて読んで衝撃を受けた。自分もこうなりたいと憧れる永遠のヒーローです。
ねじ式
高校は男子校で、寮に住んでいて、寮の中で漫画が回ってくるのが日常でした。すごくたくさんの量があったけど、その中でも天久聖一の作品と『ねじ式』と『サルでも描けるまんが教室』は特に記憶に残っていて。『ねじ式』は、絵のきれいさとか、文芸的な間の取り方が、ほかにはなくて革新的でした。今の自分の趣味嗜好の形成は、その寮生活のなかで作られたと思います。
日々ロック
主人公のいじめられっ子高校生が、文化祭でライブする場面。不良にスコップで頭をぶっ叩かれて血みどろになりながらも、笑顔&パンツ一丁でロックンロールを歌い続ける。すると別のいじめられっ子がライブ会場の体育館を重機で破壊しに来る。常識を破るロックステージの連続で、就活期にコンビニで立ち読みした時、脳天に電流が走った。志望するメディア企業に落ちまくっていてほかの業界に就こうか悩んでいるところに、一時フリーターになってもいいから挑戦してみよう、というエネルギー、勇気を与えてくれた。
GIANT KILLING
「普通に考えたら出来なさそうなことをひっくり返して、ワクワク感を持ちながら過ごしていきたい」。そのスタンスを学べる作品。あきらめないでチャレンジすることを伝えてくれます。印象に残っているのは、主人公の監督から選手に言った「ピッチに立つ以上 誰一人手ぶらで帰ってくるんじゃねえぞ!」というセリフ。自分も何かをする以上、ちょっとずつ進んでいくんだ、と読むたびにモチベーションが上がります。
Spirit of Wonder
男の子のための本です。高校生の時に読んでから、もう何冊も購入しています。世界の不思議(wonder)に対する探究心(spirit)がテーマで。世界を構成する見えないエネルギーを信じている世界で、そういうエネルギーを使った世界をつくることなどを描いています。僕にもめでたく子供が生まれて、子育てをしていると、子供にはそういう見えない面白いものが見えているんだなと最近実感していて。大人になるとなくなっていく、そういう感覚を思い出させてくれる作品です。
日出処の天子
小学生の私は、物語というものは、誰かが幸せになったり、成長したりするキッパリとしたオチが必要だと思っていた。「火曜日にコンビニに行くと既にジャンプが無い!」というジャンプ黄金期に育てられた私は、オチがないと物語がある意味がないじゃない! ぐらいに感じていたのだ。努力、友情で勝利だぜ! でも『日出処の天子』は、本物の名作とは、そんなところとは別のところにあるんだ、と教えてくれた。誰も幸せにならない、誰も成長しない終わり方。でもこの物語は美しい! と初めて感じたマンガ。
モテない女は罪である
まず、刺激的なタイトルが好き。帯のコピーも秀逸。「あなたは、いつまで愛されないという罰を受け続けるのか」…だぜ? 女どもを煽る煽る。テーマは男が語る「女がモテるための秘密」らしいけど、そんなチープなノウハウ本じゃない。「洞察することのできる力」をどのようにして養うのか。ボロボロになりながら「山よ!銀河よ!俺の歌を聴け!!」と描きあげられた作品。マクロスの世界にこの本があったなら、戦争は起こらなかったかもしれない。超時空シンデレラを目指せる1冊です。結婚相談所のアドバイザーは全員読め!
ヘルタースケルター
高校生のときにヴィレッジヴァンガードで平積みにされていて、表紙のインパクトに思わず手に取った。それが初めての岡崎京子との出会い。
主人公のりりこはトップモデルで誰もが憧れる存在。でも本人は圧倒的な孤独を持て余し、自分でもくだらないと思う行動ばかりとってしまう。
美容整形の副作用や仕事のストレスで、心身ともに蝕まれていき……でも、全て自分の選んできた道であり「進むしかない」と突っ走る。
自分の好きなように生きていいんだ、と、読むたびに彼女の力強さに鼓舞されます。