2015年2月15日(日)、世田谷文学館で開催中の「岡崎京子展」(〜3月31日)関連イベントとして、ワークショップ「“90年代”ZINEをつくろう!」を開催しました。
岡崎京子の描くマンガには1980〜90年代の空気感が色濃く反映され、当時の若者たちのリアルが詰まっています。90年代「岡崎京子」はマンガを越えた「現象」として、様々なカルチャーのなかで輝いていました。その時代を皆で語り合い、共有することができないだろうか。それはとても楽しく、また岡崎京子さんやその作品をより深く知るためにも意義深いのではないか…そんな思いから、世田谷文学館とマンガナイトでこのイベントを企画しました。
3時間という長丁場のイベントにも関わらず、定員40名のところ、多くの方にご応募頂き、抽選でのご案内となりました。
当日の参加者は30代が多く、ほとんどが女性でしたが、10代〜50代まで幅広い年代の方々にお集り頂きました。中には17才の高校生も!それでも「90年代」という共通キーワードから、皆さんあっという間に打ち解けていました。
さて、90年代の雑誌・マンガ・CDなど、自分のお気に入りグッズを持ち寄ってZINE(小冊子)をつくろうというこの企画。
まず始めに4人1組にチーム分けを行います。そして、各チームごとに自己紹介をしつつ、持参した90年代グッズを紹介する「ワークシート(A6サイズ)」を書いてもらいました。
チームの机には、マニアックで超レアな一品、懐かしい漫画、岡崎京子の連載や対談が載っている雑誌など…思い入れいっぱいの90年代グッズがずらり。なかでもCDとファッション雑誌(『Olive』,『CUTiE』,『mc Sister』など)が多かったようです。やはり岡崎京子ファンにとって、音楽とファッションは欠かせない要素なのでしょう。そしてカルチャー雑誌『STUDIO VOICE』も外せません。
ワークシート貼付け用に、チェキでグッズの撮影も行いましたが、たくさんのグッズをご用意頂いた方はひとつに絞るのが難しかったようで、真剣に悩んでいらっしゃいました。とにかく皆さんの熱量がすごい! グッズにまつわる思い出のエピソードも熱くしたためてもらいます。
このワークシートには「一番好きな岡崎京子作品」の記入欄もあり、一番人気はやはり!? 『リバーズ・エッジ』。今回の展覧会でも『リバーズ・エッジ』の世界観に浸れる展示空間があります。この空間の、しんとしたヒリヒリする空気は、是非実際に足を運んで体験してもらいたいところ。
個人での記入が終わったら、チームごとに「チーム名」を決め「自由編集(A5サイズ)」ページの作成に取りかかります。内容もデザインも、各チームごとに自由に話し合って決めてもらいました。
チーム名は岡崎作品から決めたり、参加者の世代や共通の話題から考えたりと様々です。
自由編集用には、大人気の岡崎京子展関連グッズ「マスキングテープ」(現在完売。3月下旬再入荷予定)など、自由にデコレーションできる素材もご用意。
最終的に、岡崎作品の台詞をコラージュしたり、90年代の思い出を書き込んだりと、各チーム個性的で素敵な編集ページに仕上げて頂きました!
そして休憩を挟み、後半は各チームごとのプレゼンタイム。参加者全員で、持参したお気に入りグッズや90年代の思い出を共有しようという狙いです。このプレゼンが、とても濃い時間となりました。
各チーム3分ずつという持ち時間を越え、参加者一人ひとりが熱く語る!語る!!
プロジェクターでグッズを紹介する度に「うわぁ!」という、懐かしさと喜びの歓声が上がります。岡村靖幸が表紙の『月刊カドカワ』、ヒロミックス特集号の『STUDIO VOICE』など、90年代を体言する人たちの写真に感嘆が漏れたり、特集が「ドラッグ」という現在では考えられないアングラ雑誌『危ない1号』には、どよめきの声も…
お話の全てがおもしろく、参加者の皆さんはもちろん、世田谷文学館とマンガナイトのスタッフ一同も引き込まれてしまいました。
カルチャーについて、90年代に培ったものが今でも自分の根底にあるという人がいる一方、10代の最も多感なときに90年代をすごしたはずが、当時はそのカルチャーに触れず、大人になってから「再発見」した、という方も少なからずいたようです。
また当時と現在のカルチャーを比べたとき、10代の参加者が「90年代は<懐かしい>より、むしろ<新しい>」と話していたことと、現在の閉塞感についてコメントされた方は、どこか繋がる部分があるように感じられました。
そして、岡崎京子愛も惜しみなく聞かせて頂きました! ここで興味深かったのは、岡崎作品はマンガという枠を超え、カルチャー雑誌のような役割があったということ。
作品で描かれた街やエピソードに憧れ、実際にライブハウスを巡って音楽を聴いたり、渋谷で買い物をしたり、遠出をしたという人も多数。岡崎京子が、今でいうファッションリーダー以上に、ライフスタイルにまで絶大な影響力をもっていたことを実感しました。
というわけで、プレゼンは予定時間をはるかにオーバー。濃密な時間はあっというまにすぎてしまいます。
いよいよ最後に刷り上がったページを製本し、ZINEが完成した方から自由解散となりました。
黒い表紙には「BE REVIVED ’90S」という白抜きのタイトルと、岡崎作品のカット。遊びの紙はもちろんpink!世界に40部、シリアルナンバー入りです。
イベント終了後も、連絡先を交換したり、持ち寄ったグッズを見せ合ったりと、解散が名残惜しい雰囲気…
参加者全員での集合写真を撮る時間がなくなってしまったのは残念でしたが、皆さんの満足そうな笑顔を見ることができました。
このレポートの締めくくりに、今回のイベントに寄せた世田谷文学館のメッセージの一部をご紹介したいと思います。
――「ただ、私は『あの頃』をピンでとめてみたいだけ。」と岡崎京子は『東京ガールズブラボー』の連載中に語っています。このZINEもまた、“ピンでとめ”られた90年代の“あの頃”として読んでみてください。
バブル崩壊後「失われた10年」とも呼ばれる90年代。それでも、この日の皆さんの熱量に触れ、私たちは「あの頃」を岡崎京子作品と共に、逞しく歩んできたのではないかと感じることができました。
今回のイベントで作成したZINE「BE REVIVED ’90S」は、世田谷文学館の1Fロビーでご覧頂けます。「岡崎京子展」にお越しの際は、どうぞお手に取ってご覧ください。
ご参加頂いた皆さま、そしてご応募頂いた皆さま、本当にありがとうございました!
関連リンク:
2014年11月1日に行われた本展のプレトークイベントの様子もこちらからご覧いただけます。
親友・愛弟子・ファンが語る岡崎京子 桜沢エリカ×安野モヨコ×しまおまほ「岡崎京子展」プレトークイベント