主人公に引っ越し業者の若者と中年の男性コンビを据え、行く先々の「ご当地グルメ」を堪能させる。会社で待つ事務の女性や子どもに、スイーツなどのお土産を買って帰るのが基本の流れだ。連載のスタートは2009年12月。グルメ漫画には料理人が作る過程や、対決をメーンにした作品が多かった中で、実在する施設を題材とした「消費行動」を楽しませてくれるのは新鮮な切り口だった。
SAは、もはやトイレ休憩だけの施設ではない。2012年4月に静岡県で開通した新東名高速では、7カ所あるSAの年間立ち寄り人数が3700万人で、利用者の4割が40分以上滞在したという(NEXCO 中日本公表)。集客数日本一の東京ディズニーランドの入場者数は2750万人(『月刊レジャー産業資料』13年8月公表)だから、商業規模は侮れない。
本作の特徴としては他に、料理やお土産を紹介するコマの大きさが挙げられる。1つの商品がページの半分以上を占め、材料や特色をしっかり書き込んでおり、グルメ漫画としては重要な「シズル感」が満載だ。
ただ、ガイドブックとは違い、商品の「値段」がほとんど記されていない。そこには、SAグルメは商品の入れ替えが激しいことに加え、通りかかった時に季節や流行を味わう「一期一会」の面白さがあると訴えている思いが感じられる。
この作品、初めてまとまったのは12年9月発売のコンビニコミック(ペーパーバック)だ。単行本1巻の発売は13年5月と、非常に間が空いている。作者自身も1巻の巻末で「ココまで長かったですね」と主人公に語らせている。なぜそんな経緯をたどったのだろう。
SAは普通、通過点であり、旅や移動のおまけだ。そのおまけを主題にした本作の立ち位置は、当初手探りだったのではないか。しかし、昨今の節約志向からプチ贅沢に消費動向が変わる中、非日常のSAでの消費行動は、一つの目的として定着してきた。本作は、そんなSAの価値向上とともに見直され、単行本化を果たしたのではないか。2巻の巻末でも「次が出るか分からない」となっているが、時代を彩る作品としてぜひとも続刊を残してほしい。
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