『外天楼』『ブラック・ジャック創作秘話』『花のズボラ飯』『I(アイ)』これらのマンガのうち2011年末~12年初めに発表されたランキングで「1位」になった作品はどれだかわかるだろうか。答えは全部。市場の拡大を受け、マンガのランキングは純粋な売り上げランキングから書店員による投票ランキングまで相次ぎ登場している。コンテンツを選ぶための手段が、コンテンツになるという、まさにループ状態。
どのランキングをどう読み解くかが、読者に問われている。
背景にあるのはマンガ市場に関わる人の増加だ。「右手にジャーナル左手にマガジン」世代が50代となり、今や組織の決定権を持つ。週刊少年ジャンプが600万部超の販売を達成した黄金時代にリアルタイムで読んでいた人は20~30代となり、書店員や編集者としてマンガ発行の最前線にいる。だからこそ、全国の書店員3,000人にアンケート用紙を配布する「オトナファミ」のランキングも可能になった。また夏目房之介氏など評論家が仕事として確立し始めることで、フリースタイル発行のムック本「フリースタイル」に掲載される「THE BEST MANGA2012」のように評論家の投票が多いランキングも成立。大人もマンガを読むことが当たり前になった結果、宝島社発行の『このマンガがすごい!』には芸能人ら各業界のマンガ好きがコメントを寄せる。
この現状に対してひとつの答えを示したのが、NPO法人ツブヤ大学が2月中旬に開催したManGa講座「マンガランキングを考える」。実際にマンガランキングに投票しているあゆみBOOKS早稲田店のコミックス担当太田和成氏、往来堂書店のコミックス担当の三木雄太氏、マンガを介したコミュニケーションを促すイベントを主催するユニット「マンガナイト」の代表、山内康裕氏らが登壇し、「使えるランキングの読み方」を解説した。講座の中で明らかになったのは、書店員や評論家の投票には、「今なぜこれを薦めるのか」という思いが大きいうえ、ランキングが掲載されるメディアから読者層を想定している。株式会社ファンクショナル・アプローチ研究所の代表を務める横田尚哉さんは問題解決において「誰のために、何のために」を重視している。同様に、マンガランキングでも、それぞれのランキングが、どのようなマンガ読みに対して何のために作られたのかを、選者などから読み取る必要がある。マンガは本来人によってとらえ方が違うため投票した人の感想なども読み応えがある。
最近はツイッターを使った一個人による投票、フェイスブックアプリ「MangafulDays(マンガフルデイズ)」を使った個人ランキングも簡単に作れるようになっている。マンガランキングの世界は一段の広がりが期待できそうだ。
ツブヤ大学ManGa講座「マンガランキングを考える」(2月10日にUstreamで行われた講義より)
Broadcast live streaming video on Ustream
MangafulDays
「MangafulDays」はマンガに特化したSNS。Facebookと連携、実社会の友人・知人とマンガを通じてコミュニケーションできる。「生涯最高傑作マンガMyBest5」「今注目しているマンガMyBest5」等の「MyBest5」を登録できるのが特徴。「あの場面のセリフが感動!」といったやりとりで、すでに多くのユーザーが参加している。