積んで繋がるコミュニケーション

「何かおもしろいマンガを教えてよ」――マンガナイトに関わっていると言うと、よく聞かれる質問です。誰もが知ってる人気作品を言うのも芸がないし、その人の趣味でないマンガを勧めても仕方ない。「最近読んでおもしろかったマンガは?」と訊くわけですが、そこで挙げられたマンガを自分が読んだことがない。「それってどんなストーリーなの? でてくるキャラクターは?」…と逆質問していき、その人が好きそうなタイプのマンガを想像していくのですが、気に入っているポイントは人それぞれで、う〜ん、難しい!
マンガナイトのメンバーは日々このような状況と真剣に向き合っています。

DSC_2609さて、2015年6月21日、マンガナイトではオリジナルマンガコミュニケーションゲーム「マンガつみつみ」を楽しむ読書会を開催しました。
「マンガつみつみ」は、マンガの単行本をカードにみたてて、作品の「ストーリー」「世界観」「キャラクター」などの要素を軸に、次々とマンガを積み重ねていく連想ゲームです。プレイすれば作品同士の意外な関係に気がつけると思います。つまり、前フリのような状況のトレーニングになるわけです。

会場は立川市子ども未来センター内にある「立川まんがぱーく」。1日400円の入館料で30,000冊以上のマンガが読み放題、というメンバーもおすすめの施設です。
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スタッフも含めて8人のプレイヤーで読書会を開始しました。最初の場札「らんま1/2 」が開示されてゲームスタート!

最初の方では「師との別れを経験した主人公の成長譚」として、「ONE PIECE」「かくかくしかじか」「路地恋花」「みそのひみつ」などが積み上げられました。なかなか美しい流れです。

そこから近い読者層として「ポケットモンスターSPECIAL」、名は残さずとも何かを残した生き様として「チェーザレ 破壊の創造者」「最強伝説黒沢」、ダメ人間つながりで「NANA」と続いていきました。

読んだことのないマンガが場に出ている時や、選択肢がない場合、無理やりにでも共通項を探して喋らなければいけないシーンがあります。うまく全員を納得させれば良いですが、明らかにおかしい場合、他のプレイヤーは「異議」を唱えることができます。

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自分の好きなマンガだと、思わず詳細に語り過ぎてしまい、墓穴を掘ってしまうことも…

中盤戦では、「星は歌う」からの「ドラえもん」、少し不思議なオムニバスつながりで「ニッケルオデオン」と積み上げられました。

DSC_2482終盤になり、「堀居姉妹の五月」から、「あなたのことはそれほど」へは、互いの欠けた部分を補い合う関係性つながりで収まるかと思いましたが、「収まるべきところに収まる安心感」と「何が起こるかわからない不安感」の本質的な違いを軸に議論が白熱しました。
さらにそこから「鉄コン筋クリート」へは、男女間と男同士の友情の違いにまで話が発展し、今回のゲームでもっとも盛り上がりました。

その後、「エヴァンゲリオン」「キン肉マン」「海月姫」「君に届け」「なるたる」「闇金ウシジマくん」「ヒナまつり」と続いたところで優勝者が決定しました。
「闇金ウシジマくん」から「ヒナまつり」への、アウトローな登場人物繋がりは、鮮やかでした!

DSC_2621今回のゲームでは、初対面の人たちで議論が遠慮がちになるのは仕方ないと思っていたのですが、そのような心配は無用でした。好きなマンガを熱く語り、フェアなディベートが繰り広げられ、思った以上に盛り上がったので良かったです。

私もゲームの中で、知らなかったたくさんのマンガの魅力を知ることができました。参加者のみなさまにはありがとうございました。

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文=本多正徳
1980年、広島生まれ。専門出版社勤務。マンガナイトではすっかりイジラれ担当になってしまった最近(!?)。男子校の寮でマンガの面白さに目覚めました。好きなジャンルはガロ系とヘタウマ系。藤子不二雄やつげ義春、水木しげるなどの古典的ナンバーも得意。心のマンガは『ダンドリくん(泉昌之)』『サルでも描けるまんが教室(相原コージ、竹熊健太郎)』でしょうか… ほかの趣味は読書、囲碁・将棋と悲しいほどのインドア派。ウェブサイト/グッズ制作を担当。