マンガというのはフローコンテンツである。新刊書店に最新の雑誌や単行本がどんどん並べられ、話題になる作品が入れ替わる一方、旧作や読み切り作品を手にできる機会は少ない。この中で、特に未来の読者になりうる子どもたちが過去の名作と巡り会う場所を提供しようとしているのが、「立川まんがぱーく」だ。
幅広い年代の作品を、「畳に寝転んで」「押し入れの中」など、日本の住宅での「マンガ読み」を疑似体験しながらマンガを楽しめる空間になっている。
立川まんがぱーくは2013年3月、旧市役所跡地の改装した立川市子ども未来センターの一角にオープンした。立川まんがぱーくの福士真人館長は「近年のマンガのジャンルは多様で、子ども達そして大人にとっても娯楽という枠を超えて学びを得ることができ、交流もできる。子育て施設が近くにあるこの場所にまんがぱーくがあることは、子ども達の未来に良い影響を与えることができる」と話す。
立川まんがぱーくは3万冊の作品を所蔵。手塚治虫氏「BLACK JACK」から尾田栄一郎氏「ONE PIECE」まで幅広い出版社や年代の作品が棚に並ぶ。400円(子ども200円)の入館料を払った利用者は、自由にマンガを選び、部屋の中やバルコニーで読むことができる。
カフェ・コーナーでの軽食販売もあり、「ちょっとお菓子を食べながらマンガを読む」なんていうこともできてしまうのだ。
館内の作りもユニークだ。まんがぱーくは壁やドアなどの内装がほぼすべて木造、床は畳敷きだ。そして「ドラえもん」などに登場する「押し入れの中」が再現されている。福士館長は「畳敷きは昭和の民家をイメージしている。家族や友人と、家でリラックスしてマンガを読んでいるかのような環境を目指した」と話す。
この中で入館者は、畳に寝ころんだり押し入れの中に入ったりしてマンガを読むことができる。日本人が普段どのようにマンガを楽しんでいるのか(または読みたいと思っているのか)が再現されているのだ。
立川まんがぱーくが演出するのはマンガと人の出会いだけではない。人と人のつながりも生まれ始めている。7~8月には子どもたちを対象とした「まんがの描き方」教室も開かれ、参加した子どもたちはみごと作品を冊子の形にまとめた。ともすれば受け身になりがちなマンガ体験。あえて描き方教室を開催することで、子どもたちはマンガを描く側に回り、いつもと違った視点を持つことができる。
もちろん立川まんがぱーくを楽しめるのは子ども世代だけではない。 長年マンガを読んできた大人世代にとっては、子どもの頃楽しんだマンガと再会する場。同じ出版社の作品や少年向けの作品などで今の子どもが読んでいるマンガと比べてみるのもいいだろう。子供を持つ親世代なら、子育てマンガや料理マンガを手にしてみるのもいい。幅広い世代が、いろいろな楽しみ方のできるところなのだ。
立川まんがぱーくには今年の夏休み、多くの親子連れが訪れた。今後、立川まんがぱーくがどんなマンガと人の出会いを実現させるのか。期待は大きい。(bookish)