父の形見として「ポルシェ911(964型)カレラRS」を譲り受け、ポルシェ・オーナーとなった主人公の轟麗菜(とどろき れいな)。だがその車体は彼女にとって熾烈なものだった。リアシート、エアコン、オーディオが外され、軽量化されたレーシングバージョン。マイナートラブルが頻繁に起きる上、街中での操作性は想像を絶するほどの悪さ。マニュアル車を運転することすらなかった彼女にとって、その価値を理解できるわけはなかった。だが、ポルシェのオーナーズクラブの仲間たちに支えられツーリングやサーキットに参加するうち、高い趣味性をもつポルシェの魅力に惹かれていくのだった。
ある種の「合理性」の埒外にあるともいえる、ポルシェに流れるヨーロッパ車の芸術性や趣味性。それをいつくしみたのしむ「クルマファン」に許された贅沢を、この作品を通して堪能できることは間違いない。
投稿日: 2012年10月6日
文=凹田カズナリ
街の文化を支える書店チェーンで勤務。平和台→早稲田→五反田店でコミック担当を歴任。現場で仕入れた知識を広めるべくマンガナイトにも参画。2011年~「このマンガがすごい!」「このマンガを読め」にもアンケートを寄稿。日本橋ヨヲコ、鶴田謙二、長田悠幸、阿部共実、きくち正太、山田穣、谷川史子、堀井貴介、沙村広明、松本藍、篠房六郎(敬称略・順不同)を筆頭にオールジャンル好きな漫画多数。